教えられなくなっちゃった……。
「騒がないで・・・・・・アタシは大丈夫・・・・・・だから。」
そう言ってリルは俺の肩によりかかって眠ってしまった。
「リル・・・・・・紛らわしいことすんなよ・・・・・・。」
幸せそうな顔で眠り始めたリル。
俺はそのまま数日リルとラルさんの様子を見にたびたび家にお邪魔した。
リルはすっかりよくなって、ラルさんもそれなりに元気になった。
「ごめんね・・・・・・アーク君に迷惑かけちゃったみたいで・・・・・・それにリルも・・・・・・。」
弱々しく笑うラルさんは見ていて辛かった。
「いえ、元はと言えば何もできない俺のせいですから・・・・・・。」
「そーだよ、アークのせいだよ!」
リルはお茶を飲みながら不機嫌そうに言った。
じゃああの時、来なきゃ良かったのに・・・・・・と思うことは内緒だ。
だってリルが来なかったら確実に俺は死んでいただろうから。
「アークゥ?思ってることが顔に出てるんだけどぉ?」
「え!?」
そんな俺たちを見て、ラルさんがクスリと笑った。
「やっぱかわいい~!!」と叫びそうになるのをこらえてラルさんを見ていたら、いきなりぬるま湯が飛んできた。
「あっち!何これ!?お茶!?」
「あらあら、大変・・・・・・。」
ラルさんは立ち上がってどっかに言っちゃうし、リルは「ふん!」とかいいながら無視してくるし。
「おいコラ!リル!!」
沈黙・・・・・・。
「無視してんじゃねぇぞ!なにすんだよ!」
「あんた、むかつくのよ!!・・・・・・鼻の下伸ばしてでれでれと!言っとくけど、お姉ちゃんはアンタみたいな奴に任せられないから!!」
「なんだと~!?」
「何よ!」
そこにラルさんが帰ってきた。
「タオル持ってきたわよ~って、あら?どうしたの?二人とも、そっぽ向いちゃって。」
ラルさんは俺の前に座ると俺の頭を拭き始めた。
うぉ~ラルさん優しい~リルとは大違いだな!
「アーク!聞こえてるんだけど!!」
え?俺、口に出てた?
「さっきっからただもれし放題!あんた、なんのキャンペーン中なの!?」
「別に!?」
「ああ、ほら、動かないで・・・・・・風邪ひいちゃまずいでしょう?あら?これ、お茶ねぇ・・・・・・お風呂入る?」
思わず鼻血ブーになって貧血で倒れるところだった。
ら、ラルさん、その、タオルもってお風呂入る?反則過ぎます!!色々と!
それで、結局俺は今、風呂場にいる。
「お父さんのだけど、お洋服も持ってきたから、良かったら着てね~?」
「あ、はい。」
やべぇ!ここは・・・・・・ここはラルさんが普段体を洗っていらっしゃる場所!?
まぁ、リルもだけど・・・・・・その他もろもろはいいとして・・・・・・。
とか思った瞬間にリルが体を洗っている光景が目に浮かんだ。
って、うぉい!まずいだろ!
まぁ、性格はアレだけど、見た目はやっぱラルさんと姉妹だもんな~結構可愛いし・・・・・・。
って、おい!こら!俺、本当に大丈夫か!?
いざラルさんを想像するとなると途中でラルさんの性格が豹変し、おかしなことになって血が足りなくなりそうなのでやめた。(鼻血のことね?)
「すみませーん、シャワーお借りしましたー。」
そう言って借りた服を着た。
「あんた、うちに泊まりにきたみたいね。」
さっそくリルとであった。
思わず胸に目がいく。
やべぇ!風呂場で変なもん想像したから!
「ちょっと、聞いてんの!?」
顔を覗き込まれた。
ああ、やっぱなんとなくリルもラルさんも似てんなぁ・・・・・・。
「熱でもあるの?顔、赤いよ?」
「ねーよ。でも、ちょっとあちーかも。」
「大丈夫?のぼせた?」
リルはちゃっちゃと氷を持ってきて、俺に渡した。
「ん、そかも・・・・・・サンキュー。」
「あのさ、アーク?その・・・・・・お茶かけちゃってわるかったと思ってる・・・・・・だから、その、ごめん・・・・・・。」
「あ?何?聞こえねーよ?」
「だから、その・・・・・お茶・・・・・・かけちゃったじゃない・・・・・・わるかったなってお」
「あら、アーク君、もう出てきたの?ゆっくりしてても良かったのよ?」
きたぁ――――!!本物のラルさん―――――!!!
「いえ。」
ああ、ダメだ・・・・・・血が足りなくなるからラルさんの顔が見れね~!!
「あの・・・・・・あのね・・・・・・アーク君・・・・・・その、言いたいことがあってね・・・・・・?」
「はいっ!なんでしょう!?」
「その、よく話し合って決めたんだけど・・・・・・アーク君に教えることが・・・・・・できなくなっちゃった。」
もじもじするラルさんかわゆす!!お願いだからこれ以上俺の脳内に鼻血の海を作らせるのはやめて!!
「はい!?何がですか?」
「うん・・・・・・そのね、魔物について、教えてあげられなくなっちゃった・・・・・・ごめんね。」
うん?つまり、俺の師匠が居なくなったってことか?
「えぇ!?」
「ごめんね・・・・・・正直、まだ未熟なのにやっぱり弟子なんか持つべきじゃないって・・・・・・彼にも親にも怒られちゃって・・・・・・。」
「俺・・・・・・じゃあ、どうすれば・・・・・・。」
「うん、強くなりたいよね?だから・・・・・・その、まだ本人にも言ってないんだけど・・・・・・リルに教えてもらうっていうのはどうかなぁ?同じではないけど、同系魔法だし、お互いに対等な立場だったらきっと学ぶものも多いと思うの。」
ラルさんはニッコリ笑った。
「え?」
「はぁぁぁあああああ!!?」
どうやら驚いたのは俺だけではないらしい。
「お姉ちゃん!まって!それ、どういうこと!?そういうのはアークに言うより先にあたしに言うんじゃないの!?」
「リルは、アーク君と一緒に居るの、嫌なの?」
「う・・・・・・嫌じゃないけど・・・・・・じゃない!嫌だよ!だって、だってあたし、アークを教えるなんてそんな自信ないよ・・・・・・。」
首をうなだれたリル。
「おい、まて。それは俺がバカだと割と遠まわし気味に言ってるのか!?」
「あれ?違ったっけ?」
リルは俺を見て鼻で笑った。
くっそぉ~バカにしやがって!!
「おい!リル!」
「まぁまぁ落ち着いて・・・・・・ね?リルは大丈夫だよ。一緒にモンスターを倒していく相棒になるようなものだし~それに、アーク君もリルと仲いいでしょう?」
『良くない!!』
俺とリルの声が被った。
俺はとっさに口をふさいで、リルは俺を見た。
「いや、すみません。わかりました・・・・・・仕方ないですよね・・・・・・ラルさんが怪我したののも、俺が弱かったからですし・・・・・・。」
ラルさんに向かってさけんじまったぁ~・・・・・・リルのやろう・・・・・・なんでそこまで俺のこと嫌ってんだよ!?
確かに怪我させたのは俺だし、弱いのも実力がないのもわかってるけどさ・・・・・・ああくそ、考え出したらなんか落ち込んできた・・・・・・。
「ううん、あれは事故だよ。きっと私一人でも危なかったよ?だから気にしないで?むしろ、謝らなきゃいけないのはこっちのほう・・・・・・ごめんね、全然教えてあげられなくて。」
「いえ、じゃあ俺はこれで失礼しますね・・・・・・。」
俺は苦笑してラルさんに向かって一礼した。
「アーク、待って!送っていく。おねーちゃんのいないほうが話しやすいこともあるし。」
なんだよ・・・・・・ちょっと落ち込んでんだから一人にさせろよ。
「あっそ。」
「何むくれてんの?」
「別に?」
「ああそう、あんたおねえちゃんに送ってもらいたかったとか考えてるわけ?」
「別に!」
考えてねーよ!そりゃリルよりかラルさんのほうが断然いいけどな!
「いいから!ほら、飛ぶから。」
一瞬にして俺の家の前にたどり着いた。