そうだ、俺、何考えてたんだろう
そんな時、アークはラルと合流していた。
「あ、ラルさーん!」
「あら、アーク君。」
「すんません、遅かったですかね?」
「そんなことないわよ?ただ私も少し迷ってしまって・・・・・・危うく遅れるところだったわ・・・・・・間に合ってよかった。」
あははっと軽く笑うラルさん。
ラルさん・・・・・・今日も笑顔が素敵だー!!
「それより、俺に話ってなんですか?」
「え?話?あら?なんだったかしら・・・・・・?」
うおーい?
本当に考え込んでしまったラルさん・・・・・・ああでも、ラルさん・・・・・・可愛い・・・・・・にやけそうになる顔を押し殺して平常心を保つ・・・・・・が、これがまた辛い。
「しばらく迷ってるうちにいろんなモンスターにあってね?もう少しで思い出せそうなんだけど・・・・・・。」
そういいながら俺をチラリと上目遣いで見るラルさんにハートを討ち取られた気分だった。
「グハッ!」といいそうになってまたこらえる。
「ねぇ、アーク君?」
「な、なんでしょう?」
「もしかして、私といるの・・・・・・イヤ?」
首をかしげる姿にまた心の中で「グハッ!」とか「鼻血ブー!!」とか叫んでから頭を思いっきり横に振った。
「まさか!全然イヤじゃないっすよ!むしろ嬉しい・・・・・・ゴニョゴニョ・・・・・・ゴホン。」
「大丈夫?風邪?」
そう言って俺のおでこに触れるラルさんにドキッとして身を固める。
「ああ、少し熱いし・・・・・・顔赤いね?向こうで少し休む?」
「い、いえ!全然大丈夫なんで!」
「そう?うん・・・・・・でね、私というのがイヤじゃないならいいんだけど・・・・・・アーク君、常に仏頂面だから・・・・・・いやなのかなぁって。」
そういいながら笑うラルさんに思わず気絶しそうな思考を無理やり正常に戻して「まさか!」と言い切った。
「あ!そうだ、あのね?思い出したんだけど・・・・・・今日はモンスター狩りに行こうかなって思うの。アーク君もモンスターに興味あるでしょ?」
頷く。
ラルさんはこんなに可愛くて天然で頼りなくて弱そうに見えてもかなりの実力の持ち主だ。
俺なんかよりはるかに強い。
モンスターを前にしたラルさんは人が変わったようにかっこよくなる。
だからこそ俺の憧れの人であり、そのギャップにやられれる・・・・・・。
俺は相変わらず下の下のほうでモンスターに関しては無知に近い。
ああ、そういや、リルもラルさん同様強かったっけなぁ?
まぁ、リルだからな。
そしてモンスター狩りに出かけた。
そして出かけた先でリルに出会った。
「あら、リル。あなたもここにいたの?」
「アーク・・・・・・お姉ちゃん・・・・・・そうよ!ここはアタシが先に押さえたの!」
「何怒ってんだよ。」
「うるさいな!アークは黙っててよ!」
そういいながらモンスターを自ら呼び寄せ、そのモンスターを次々狩っていく。
「勇ましいな・・・・・・。」
「聞こえてる・・・・・・。」
リルはそう言ってこっちに向かい、弓を引き絞ると矢を放った。
リルの放つ技はすべて早い。
俺がよけられるわけが無い。
だから、矢は俺の髪をかすっていった。
「うわぁぁああ!!何すんだよ!あぶねぇな!」
「・・・・・・フン。」
「二人は仲いいわね~。」
「どこがっ!!」
思わず突っ込んだらリルにでこピンされて、リルは去り際にこういい残していった。
「アタシはアタシ。お姉ちゃんはお姉ちゃん。」
まるで自分に言い聞かせるようだったけど、でも、よくわかんねー。
会話として成り立ってないぞ?
「本当に仲いいのね・・・・・・あんなリル、見たこと無いもの。」
しばらく無言で歩き出して、モンスターが現れたって・・・・・・ええええええええええ!!!?
こんなん、いくらラルさんでも一人じゃ倒せねぇだろう!
「アーク君!逃げるわよ!!」
走り出しても巨大なモンスターにすぐ追いつかれて、襲い掛かられた。
「きゃぁあ!!」
ラルさんは背中に攻撃を受け、倒れこんでからそのままモンスターの方に向くと銃でモンスターを討ったが、意味がない。
ラルさんはそのまま意識を失い、俺は何もできなくて、ただ立ちすくみ、叫んだ。
「リル・・・・・・リル!リルゥゥゥウウウウウウ!!」
誰でもいい。
助けてくれ!このままじゃ、ラルさんが!
モンスターが俺に手をかけようとした瞬間、シュバッ!!と何かがモンスターの手を射抜き、モンスターはすさまじいうめき声を上げた。
「グォオオオオ!!」
何が起こったのか理解できなくて、何かが飛んできた方向を見ると、そこには息を切らしたリルがいた。
「よ・・・・・・んだ・・・・・・?」
どうして・・・・・・ここが。
「それより!ラルさんが!ラルさんが!リル!助けてくれ!」
「な、無理だよ!!お姉ちゃんでも倒せなかった敵がアタシに倒せるわけない!!」
そう言って、矢を連続で敵に打ちながら、慌てふためく俺をラルさんに近づけて、リルはワープをした。
そこはラルさんとリルの家があった。
「え?」
ああそうか、こうやってワープして逃げるって手もあったのに、俺は逃げろといわれて何をした?
走り出した・・・・・・。
馬鹿だ・・・・・・俺。
それよりラルさんが!背中から血が・・・・・・血が!!
「リル!ラルさんが!」
「わ・・・・・・かってる・・・・・・よ。」
その瞬間リルがフラッとして座り込んだ。
「リル!!」
そうだ、俺・・・・・・何考えてたんだろう。
三人分のワープも、呼ばれただけで来るワープも、戦術も、全部負担がかかりすぎてる。
なのに・・・・・・くそっ、俺はなんもできないのかよ!?
「大丈夫か!?」
「大丈夫・・・・・・・大丈夫だから、どいて!」
リルはやっと立ち上がってラルさんのところに行くと、治癒を始めた。
するとだんだんラルさんは落ち着いた顔に戻り、出血もなくなった。
「良かった・・・・・・。」
「アタシができるのはここまでだよ・・・・・・アタシは治癒系をあんまり・・・・・・得意としない・・・・・・から・・・・・・。」
そう言ってリルは倒れた。
「リル!リル!しっかりしろ!リル!!」
とにかくリルを抱きかかえてリルの家を叩く。
「すみません!すみません!開けて!開けてください!!」
ドンドンとドアを叩き続けたら両親が出てきてくれて、リルを見るなり驚いたけど、眠っているだけだと知ってほっとしたらしかった。
俺は次にラルさんを抱きかかえて、案内された部屋まで運ぶと、両親に事情を話した。
両親はしばらく考えこんでからこう言った。
「そうか・・・・・・もうあそこに行かせるのはやめよう。」
「そんな!確かにラルさんの安全が第一ですが、ラルさんからあそこをうばってしまったら、ラルさんの夢はどうなるんですか!?強いモンスター同士のバトルとか、そういったものに出場してみたいって言ってたじゃないですか!それに、俺の師匠でもあるのに・・・・・・。」
「だけどね・・・・・・。」
「それはさ・・・・・・お姉ちゃんに選ばせるのが一番なんじゃないの?」
そこには意識を失っていたはずのリルの姿があった。
「リル!」
まだフラフラしている。
思わず駆け寄った。
「大丈夫か?ごめんな・・・・・・起こしたか?」
「アタシなら、大丈夫だよ。話・・・・・・聞いてたらお互いに勝手なこと言ってるよ。選ぶのはおねえちゃんじゃない?この程度で夢あきらめるならその程度だったってことでしょ?それでもまだやりたいって言うならきっとお姉ちゃんはお母さんやお父さんに逆らってでも夢をかなえようとするだろうと思う。」
たしかにリルの言うとおりだ。
俺がどうこう言えるものじゃない。
するとリルは俺の手からすべり落ちるように座り込んだ。
「リル!?リル!!」