アタシはアタシ
一方、残されたリルとカナンは・・・・・・。
どうして気づいてくれないの?
どんだけ近くに居ると思ってるの?
どれだけアタシを傷つければ気が済むの?
アーク、なんでアタシじゃダメなの・・・・・・。
「あんた、馬鹿じゃないの?」
子供の声が聞こえて顔を上げた。
「何が?それ言うならあんたも同じでしょ。」
カナン。
もう見ただけでわかる。
アークのことを好きなマセガキ。
「別に?うちはいいけどさ、あんたばっかり不幸面してるのってなんかむかつくなーって。アークが鈍いこと知ってんでしょ?ならそんなことしたって無駄じゃない?あんたはあんたのお姉さんにはなれないし、うちだってあんたのお姉さんにはなれない。ならあんたはアンタらしくしてんのが一番なんじゃないの?そんでうちはうちとしてアンタはアンタとしてアークに認めてもらったほうがいいじゃん。あんまあんたのお姉さんとアンタを比べないほうがいいと思うよ。そんなことしたって無駄なんだから。」
こいつ、性格豹変しすぎだろ!って突っ込みたいけど、でも、言われたことがあまりにも正しすぎて何も言えなくなってしまった。
ううん、言い返せなくなってしまった。
「そ、そーゆーあんたはなんでアークが好きなの?」
「うち?それは、偽りで塗り固められたうちの呪縛を解いてくれたから。それまでのうちは親の人形でしかなかった。誰にでも好かれて、誰にも嫌われないように笑って、振舞って、そんな世界が嫌いだった・・・・・・って、何あんたなんかに語っちゃってんだろ、じゃね、うちはアークがいなきゃ意味ないし、帰る。」
そういうとカナンはタンっと飛んで、靴から羽が生えて、そのまま飛んで帰っていった。
途中まですごい可愛かったのに・・・・・・やっぱ可愛くない・・・・・・。
あ、そんなことより、ここはどんな世界だって思うよね?
ここは魔法の世界。
飛ぶ方法はさまざま。
さっきみたいに靴に羽が生えたり、背中に生えたり、ほうきだったり・・・・・・その人がつかさどる魔法の種類によって使える魔法も変わってくるの。
一人ひとりに個性があるのと同じくらい沢山の魔法があって、似ているけど微妙に違うって魔法もある。
そんな中で珍しいことに、アタシの姉、ラルとアークは同じ種類の魔法をつかさどっていたの。
アタシは二人と似てるけど微妙に違う魔法。
何がどうなって同じとか違うとか別けられるのか分からないんだけど、どうしてアタシとアークが同じじゃなくて、お姉ちゃんとアークなの?
確かにお姉ちゃんは優しいし、魔法も良くできるよ?天然だけど・・・・・・。
でもアタシだってお姉ちゃんに劣らないようにこなしてたはずなのに・・・・・・っは。
いけないいけない。カナンに言われたばっかりだった。
アタシはアタシらしく・・・・・・でも・・・・・・カナンってあの子、いったい何者なのよ?
アタシに説教なんかしちゃってさ?
ここで立ち止まってても仕方ないか・・・・・・アタシも帰って練習しよう。
パンッと手を叩いてアタシはその場を去った。
ちなみにアタシがつかさどっている魔はカナンとの違いがすでに現れている。
アタシは飛ぶわけではなく、このように行きたいところに一瞬で移動するワープが使える。
でも、ワープには行きたいところがはっきり描けてないといけなくて、空を飛ぶのはワープよりも到着地点まで着くのに時間がかかる。
結局どれもどっちもどっちなんだよね。
武器を適当に引っつかんでモンスター狩りに行く。
モンスターって言ったってここらに強いのはいないわけだけど・・・・・・。
田舎だし・・・・・・もっと都会とか巣窟とか行かないとね?