#11:光の余韻
高校生編の短編連作の最終話です。
2026/1/27 19:54
案内状がスマホの画面に滲む。
『2026年 霞ノ浦高校 同窓会のご案内』
数日前に届いたまま。
開いては閉じ、閉じては開いている。
今日もまた、同じように画面を見つめていた。
胸の奥が、かすかに動いた。
あの頃の音が、まだどこかに薄く残っている。
触れれば揺れるような、遠い残り香。
痛みではない。拒絶でもない。
ただ、静かに波紋のように広がるだけ。
……行くべきなのかな。
そう思った瞬間、指先がわずかに止まった。その止まり方が、昔と少し違う。
あの頃は、その小さな変化に引っ張られていた。
今は、落ち着いて眺めていられる。
行かなくてもいい。
誰も困らないし、私も困らない。
行けば、懐かしい顔があるだろう。
笑って話すこともできる。
適切な距離感も、もう分かっている。
どちらでも大丈夫。
スマホを伏せると、部屋の空気がゆっくりと落ち着いた。
深く息を吸った。
胸の奥で、昔の音の名残がかすかに沈んでいく。
……もう少しだけ考えよう。
出欠回答は、もう少し先だ。
カーテンを少し開けると、外の光が薄く部屋に差し込む。
その光が、胸の奥の残り香をそっと撫でていく。
通知音が短く部屋に響く。
友人:陽子、すっごい久しぶり。
同窓会、今度は来れるかな。
窓の外では、街灯がひとつずつ灯り始めている。
その明かりが、静かに揺らいでいた。
返信欄を開いたまま、陽子は窓の外の街灯を数えてから画面を閉じた。




