OH MY GOD
大統領が次の議題を促そうとしたとき、
NASA長官がタブレットを胸に抱えたまま、席を立った。
「……大統領、追加の重大報告があります」
スクリーンに投影されたのは、先ほどよりさらに精密な天体データ。
「星図を解析し続けた結果、今いる宇宙には根本的な異常があります」
国防長官が身を乗り出す。
「根本的、とは?」
「まず――恒星の直径が、不自然です。
距離が地球基準の計算と一致しない。
本来の大きさより異様に巨大に映ります」
国務長官が戸惑った声を漏らす。
「天体が近いのではなく……巨大、なのか?」
「いいえ。重力レンズ効果も恒星風の増加も確認されていません。
巨大なのに周囲への影響が少なすぎるのです」
NASA長官は次のスライドを表示した。
――月の代わりに浮かぶ巨大な衛星。
その直径は明らかに地球のものを超えていた。
「周回軌道上の衛星は、少なくとも地球の1.7倍の直径があります。
しかし――地表の重力は地球と同じ 9.8m/s² のままです」
科学技術政策局(OSTP)長官が思わず声を上げた。
「惑星規模が大きいのに重力が同じだと?
では質量は?
内部は空洞のように密度が低いのか?」
NASA長官は、ここで初めて苦い表情を見せた。
「そこが問題です。
内部構造は空洞ではありません。」
全員が一瞬、息を呑んだ。
「地震波、重力異常、磁場線の走行を可能な限り解析しました。
もし地球の質量より軽ければ、内部構造には空洞が必要になる。
しかし――
地震波は地球と同じように均質な層構造を示しています」
国防長官が低く問う。
「……では、この惑星はどうやって重力を保っている?」
NASA長官は、小さく首を振った。
「分かりません。
内部密度は地球と同等以上に見えるのに、
外形は明らかに地球より大きい。
通常の万有引力の計算では成立しない構造です。」
商務長官が乾いた声を吐く。
「……つまり、物理法則が違う?」
NASA長官は静かに告げた。
「簡潔に言えば――
私たちは物理法則が地球と異なる宇宙にいます。」
会議室が凍りついた。
NASA長官は続ける。
「この宇宙では、重力、質量、距離、光の振る舞いが
地球の常識とは異なる数式で決まっている可能性が高い。
つまり
地球の物理学では説明不能な「別体系の宇宙」です。」
国務長官が震える声で呟いた。
「……そんな宇宙で、文明が発達していたら?」
NASA長官は画面に浮かぶ空中都市の影を指す。
「――あれがその答えです。
この宇宙では浮遊都市も、
物理的に不可能ではないのかもしれません。」




