表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

悪の幹部たるもの、ヒーローの推し活になんか負けません

薄れゆく意識の中、過去の映像が脳内に浮かんで来た。

これは…走馬灯と言うやつか?縁起でもない


青い花が咲く花畑で、僕達は遊んでいる。

一緒にいる「ミリア」は、とても楽しそうに花冠を編んでいた。


「ねえ、見て下さい」


「ん?」


彼女が指差した先で、一人の少年がじっとこちらを見つめて立っている。


「…地球人だ…」


僕の表情を見て何かを察したのか、ミリアが

「…私!あの子にこのお花の冠をあげてきますわ!」

と言って走り出す。


「あっ!駄目だよミリア!」


「あなた、これあげますわ!だから一緒に遊びましょ!」


僕の制止も聞かず、彼女は少年に花冠を渡して無邪気に笑った。


「…!」


しかし、少年は何も言わず僕らを見て逃げてしまう。


「…ほら、やっぱり…駄目だったろ?」


この後、彼女はなんて言ったんだっけ?

そうだ、確か…

ーーーーーー


渋矢の交差点に、美しい高笑いが響く。

ヘリの音が耳を打ち、カメラマンらしき人物が空から街の様子を撮影している。


街に人はおらず、いるのは傷だらけのヒーロー5人と一見中学生ぐらいにも見える可憐な少女のみだった。


「おーっほっほっほ!お労しいですわあ、コズミック5の皆さん!

 正義はいつも勝つ等言っておきながら

 このザマですものお!」


私は泣く子も黙る悪の組織の女幹部「悪の令嬢ミリア」

名家の出であり頭脳明晰、眉目秀麗の天才で、

「植物を操る」というエレガントな能力の持ち主!


異星人で構成される「ブラックホール団」において

私よりも若く幹部にまで上り詰めた者はいない。


きっと華麗なる私の華麗なる活躍によって、ブラックホール団に歯向かう生意気なヒーローをバッタバッタとなぎ倒して行くんだと

そう思っていたのに!


ヒーロー…いいえ、

コズミック5が…あまりにも強すぎる!

今まで挑んで来たヒーローや魔法少女は全て返り討ちにして来た筈なのに、

こいつらだけはレベルが違う!


私が出て行って高笑いをした頃には鼻唄交じりに蹂躙され、

最後にはレッドに毎回

「ゼリーあげるから気を付けて帰るんだよ」

と言われる始末!あいつの中身老人なんじゃないの!?


でも今日は!何故か!ヒーロー達が劣勢に立っている!

やるしかないわ、今ここで!

全世界に私がヒーローに勝利するとこを見せつけてやるんだから!


「これでとどめよ!」


私が巨大な蔦で彼らを薙ぎ払おうとしたその時、

凄まじい轟音が耳に入り、土煙を上げて何者かが私の頬を剣でかすめた。


「だ、誰ですの!?」


「君の悪事はそこまでだ!『悪の令嬢ミリア』」


煙が晴れると、そこには今まで見たことの無い、黒いヒーロースーツを着た男と白いヒーロースーツを着た男が傷ついたヒーロー達を守る様に立っていた。


「宇宙より大きな愛!コズミックホワイト!」

「何者にも染められない正義!コズミックブラック!」


「コズミックホワイトにブラック…?

 あー!まさか…新加入ヒーローですの!?

 もしかして今日コズミック5が弱かったのは…このプロモーションの為!?」


「何を言っているか分からないな!変な事を言うのはやめなさい!」


「くっ…今日こそは勝てると思ってましたのに…!」


「コズミックホワイト」は私ににじり寄ると、剣を持って振りかぶる。


「まって…!タンマ…!に゛ゃあああああああああああ!」


渋矢の交差点に、爆発音と私の華麗なる断末魔が響き、その日の戦闘もまた

ヒーロー側の勝利で終わったのであった…


ーーーーーー


「ずるい、ずるいですわ!

 『コズミック5』の癖にヒーローが7人になるなんて!

 こっちは毎回一人ずつ相手してますのに!むきー!」


「ブラックホール団」基地の医務室にて、私は奇声を上げる。


「まあまあ、ミリア…また無事で良かったじゃないか

 あれ、今日はゼリーじゃなくってどら焼き貰ったの?」


彼はブラックホール団幹部であり兄のような存在でもある「ナギ」様。

彼の能力は治癒なのでよく傷だらけで帰ってくる私の手当をしてくれる。

優しくて優秀で美しい私の憧れの存在だ。


「『今日はめでたい日だからいいお店のどら焼きあげるね』って

 レッドに押し付けられたんですの…むぐ…美味しいですわ…!」


「ちょっとは食べるのに躊躇して欲しかったなあ」


「でもあの…ヒーロー達って何を目的に私たちをしばきに来るんですの?

 あれだけ強ければもう渋矢を奪還できそうですのに」


「うちの基地は強大なバリアで守られていて、

 現状ヒーローはおろか地球人で破れた人はいないんだよ

 だからわざわざ外にいる幹部や戦闘員を狙って戦闘力をじわじわ削るのさ」


「ぐぎぎ…陰湿です事!」


「うちの大幹部達が戦えば

 あのコズミック5だか7だかも楽勝で殲滅できるんだろうけど…

 うちはなるべく地球人と戦わない方針で

 防衛特化だから役職が下の方の幹部が割を食うんだよねえ」


「そう!そうなのです!何故かいっつも私の防衛ラインばかり狙われるせいで

 地球人から『雑魚』とか『わからせ担当』とか呼ばれる始末!

 私、こうなりたくて幹部になったんじゃありませんのよ…!」


「地球人と異星人は絶対に解り合える事は無い…

 君の部下の戦闘員達は、

 君がいつも一人でヒーローに向かって行くのを讃えていたし

 渋矢に住む異星人達もきっと君に感謝してるはずだよ

 地球人にどう言われているかなんて気にしちゃ駄目だ、

 ミリアは頑張ってるんだから」


そう言ってナギ様が私の頭を撫でる。

はあ…この爽やかな笑顔!優しい声…!ナギさまはいつも素敵だわ!

彼に頑張ってるなんて言われてしまってはストレスなんてすべて吹き飛んでしまう…

よし!私も負けてばかりではいられない、ヒーロー達に一矢報いる策を考えなければ!


「ありがとうございますナギ様!私、頑張りますわ!」


私はナギ様に会釈すると意気揚々と寮の自室へと戻って行った。


ーーーーーー


しかし今回は派手に爆風に巻き込まれたものの

殆どかすり傷程度で済んで良かったわ。

私は自室に戻るなりデスクに向かうと、自分のもやもやとした気持ちをノートに書き連ねた。


あーむかつく…!あいつら何なの!?

まずレッド!能力を使わないで倒すのやめて欲しいわ!あの体力おばけ…!

イエローはいつもイヤホンで音楽聞いてるし、ピンクはセクハラがすごいしブルーは無愛想だし

グリーンはサボってるしー!


あいつらが強すぎるだけですのに私ばかり雑魚扱い!

…雑魚…かあ…

私は「最年少で幹部になった」等と言っている物の

その実優秀な幹部だった姉が失踪した為、後釜に座らされただけに過ぎない。


「情けない存在ね」


私が呟くと同時に、基地の警報がけたたましく響く。


「な、なんですの!?」


これってまさか…「侵入者」が出たって事なんじゃ…!

でもナギ様は「今までバリアが破られた事は無い」って言っていたし

長い事基地に住んでいますがこんな事一度も…!


私が急いで自室を出ようとすると、

玄関先にいた人影にぶつかり阻まれる。


「わぶっ…な、何ですのあなた!そんな所に突っ立って…!」


玄関先に立っていた人間は、見たくもない真っ白なヒーロースーツを身に纏い

片手に何かを持って隠している様だった。


「ひっ…むぐ」


彼は私の口を塞ぎ部屋に押し入り、私をひょいと担いでソファに下ろす。


私は震えながらその様子を見つめていると、

彼は私に跪き、

後ろ手に持っていた物を思い切りこちらに向けた。


殺される…!

思わず目を瞑るが、何も起こらずしばしの静寂が部屋を包む。

…あれ?


恐る恐る目を開けると、青い花の束が私の視界を覆った。


「…ネモフィラ」


私は動揺しながら彼の顔に視線を移す。

ヘルメットに隠れていたその顔は、ネモフィラのような青い目を際立たせる端正な顔立ちだった。


「ミリア様!急に押しかけてごめんなさい!

 でも聞いてほしい…!

 俺は…あなたが好きです!」


「えぇ!?」


「ミリア様…あの…あの…!」


思わず赤面する私を見て

彼はもじもじしながら口ごもると


「サイン下さい!」


そう元気よく言い放ったのだった。


「…は?」


何故…何故私はこいつの私物にサインを書いているんですの?

こいつ敵よね!?

一体何がどうなっているのかしら!?


「ありがとうございます!家宝にします!」


出した覚えの無い私の写真集にサインを貰った彼は、満面の笑みでそれを握りしめる。


「あの…あなた何もかも説明不足だわ

まず…えっと、コズミックホワイトよね?」


「はいそうです!よく分かりましたね!」


分かるわい!貴方が着てるのどう見てもヒーロースーツじゃない!


「…えっと…私のサインを貰ってどうするつもりかしら」


「?飾ったり、保管したり?」


「ま、まあそうよね…あー…」


困った…目的が分からな過ぎて言葉が出て来ない…


「そ、そうよ!あなた私が好きって言ってましたわよね!

 何故ヒーローなんてやっているの!?敵じゃない!

 わ、解ったわ…油断させようとしてますのね!?」


「そんなことありません!本当に好きです!」


私の言葉を真っ直ぐな瞳で否定するコズミックホワイト。


「ひゅぇ…」


こんなに真剣な顔で殿方に好きって言われたの…初めてだわ!


「あの、俺…中学生時代何回か潜入を試みたんですけど

 渋矢の敷地に一般人が入ると大人の人に信じられないくらい怒られるんです

 それでよいよ警察に突き出されるって時に

 『ヒーローになったら合法でブラックホール団の基地に入れるよ』

 ってレッドさんに言われて…!」


「多分騙されてますわよあなた!」


「手段は強引だったかもしれないですけど

 どうしても俺の愛をあなたに伝えたかった…!

 最近負け続けで疲れてるみたいだったし」


「そ、それじゃあ…この騒ぎを起こしたのは我々と戦う為ではなく…」


「あ、はい!推し活の一環です!」


推し…活…?

何か頭痛くなってきましたわ。


「わ、悪いのですけれど…!私は華麗なる異星人!あなたはただの地球人

 住む世界が違いますの!あなたとはお付き合いできませんわ!

 帰って下さいまし」


「?お付き合い?」


「…え?違うのですか?だ、だって好きなんでしょ?」


「いやそういうのは…別に大丈夫です」


「どういう事ですの!?」


くっ…!何だかわからないけどすごく恥ずかしいわ…帰って欲しい!


「もうサインも貰ったし満足でしょ!早く帰って下さる!?

 あとこんな事がしたかっただけならもうヒーローもお辞めになるのね!」


「それはできません」


さっきまでヘラヘラと笑っていた彼が急に真剣な表情になる。


「ミリア様、今日は気持ちを伝えるのもそうですけど

大事な話をしに来たんです!俺と一緒に…」


彼が言い切る前に、「ピンポン」と部屋のインターホンが鳴る。


「!」


「ミリア?ちょっと話が…」


ノックの音と一緒に聞こえてきたのはナギ様の声だった。

ま、まずい…一緒にいる所を見られたら変な勘違いをされてしまうかもしれない!


「い、今行きますわ!ほら!早く出て行って!」


私が押し出すと、ホワイトは裏の窓から静かに出て行った。


「ど、どうしましたの?」


恐る恐るドアを開けると、優しい笑顔のナギ様がそこに立っている。

しかし服には黒い煤の様な物が付着していて、微かに火薬のような匂いを漂わせていた。

いつも清潔な彼がこんな状態で外に出るのだから、それだけの事があったに違い無い。


「ああ、良かった!無事だったか

外のバリアが何者かによって傷つけられたんだって

人1人通れるくらいの穴が空いていたらしくて…侵入者がいる可能性が高いから警戒して欲しいってボスから通達があったんだ

君も気を付けて」


「その…万が一ですが侵入者を見つけた場合どうすればいいのですか?」


「生け捕りにして僕に渡すか…最悪殺していいってさ」


「ころっ!?」


そんな!極力争いを避ける「ブラックホール団」が殺しだなんて!

お上は相当お怒りなのね…!


「…ちょっとごめんね」


ナギ様は何かを見つけたかのように目を細めると、私の部屋に勝手に入って行く。


「ちょちょ…!ナギ様!乙女の部屋にズカズカ上がり込むなんて無礼でしてよ!」


部屋には大きく開いた窓とソファの上に置かれたネモフィラの花束が置いてある、これだけ見てもホワイトが来たとは思われないだろうけど

怪しまれてしまうかしら…?


「ネモフィラだ、懐かしいな…昔花畑で一緒に遊んだよね」


彼はネモフィラの花束を手に取るとそう言って微笑んだ。


「誰から貰ったの?」


「あー…私の部下の戦闘員からですわ!な、名前は忘れましたけれどっ!」


「そっか

 …告白でもされたのかい?」


「こ、個人的な事ですから!返答は控えさせて頂きます」


正直あれは告白だったのか何なのか私が知りたいくらいだし…


「そう、ごめんね」


彼はそう言って私に花束を渡すと「失礼するよ」とだけ言って部屋を出てしまった。


「…あいつ…ちゃんと逃げられたかしら…」


青いネモフィラを見つめながら、私はホワイトの綺麗な瞳を思い出す。

笑い者同然の私を好きな男…

あの言葉が本当なら、何処を好きになってくれたんだろう?見た目?

それとも滲み出るこの気高さ?


最後、何て言おうしていたのかしら…

俺と一緒に…暮らしましょう…とか!?


私はブンブンと頭を振る。

そもそもあいつの言っていたことも私を惑わせるための嘘かもしれないのよ!

今日あった事は…そう!見なかったし聞かなかったことに致しましょう!


ーーーー


次の日、朝一番に幹部会議が開かれた。

きっと議題はホワイトがバリアに開けた穴の件だろう。


「昨日の夜、謎の覆面を付けた男がバリアを破る瞬間を監視カメラが捉えている

 この後消息が掴めていないのでまだこの基地にいるものだと考えた方が良いだろう、厳重な注意をしてくれ給え」


結構な大事と捉えていたが、そう説明したボスの顔は想像以上に穏やかで、すぐに別の議題に移ってしまった。

今まで無かった事が起きたのに…そんなもの?

昨日は見つけたら最悪殺すとまで聞いていたものだから少し肩透かしを食らった気分だ。

ボスの気が変わったのかしら…?


会議が終わると、幹部の一人から

「ミリア、ちょっといい?」

と声を掛けられる。


彼女はサクヤ様…私の大先輩幹部で、

渋谷の北側を守りながら発明品等を定期的に作ってくれるとっても有能な人だ。


「あのね…昨日北の武器庫に誰かが侵入して

 弾薬や手榴弾を盗んだみたいなのよ…

 もしかしたら例の侵入者のせいなんじゃないかなって思うのよね」


「なんですって…!?」


ホワイトが盗難を…?

でもあいつ、私が見た時には花束しか持っていなかったし

あの後に持ち去ったって事…?


「ミリア?大丈夫?」


「あっ…!はい!

 そ、それでどうして私に?

 ボスに報告すべきことでは…」


「んー…それはそうなんだけど…実はこういう事

 前にもちょくちょく起きててね?」


「え…」


「私の防衛ラインが襲撃される日、武器庫からたまに物が無くなってて…

 ヒーローとの対戦に支障をきたしたのよ

 最初はただのうっかりかとも思ったんだけど、

 この前東の防衛ラインが襲撃された時も

 前日にオペレーター室のハッキングがあったんですって…」


「そ、それって」


ヒーロー側の内通者がこの基地にいるか…

ホワイトが昨日よりも前から襲撃しに来てたって事なんじゃ…!


「ボスには一応サラッと伝えてるのよ?でもほらあの人呑気だから…

 一応ミリアにも伝えておきたかったの」


「あ!あの!私も聞きたい事があったんです!

 昨日の侵入者の件…見つけたら最悪殺してもいいって

 今日の会議の雰囲気からして

 ボスがそんな事言った様に思えませんでしたの

 何故昨日はそのような指示が?」


「…?出てないわよ、そんな指示」


私の問いに、彼女はあまりにもあっさりと答える。


「え?出てない?」


「うちは殺しはしない方針でしょ、ボスはそんなこと言わないわ

 あ、ごめん…時間だ!そろそろ防衛ラインに戻るわね!」


彼女はそう言うといい香りを漂わせながら北の方角へ消えて行った。


「…?共有ミスかしら…?」


ーーー


私は自分の担当する南防衛ラインの武器庫をチェックしていた。

脚立の一番上に座り、普段見ない所まで一個一個目を通す。


減っている物は無さそう、弾薬も入ってる。

…あれ?この銃だけ弾薬が入ってないわね?


私が隣の棚の弾薬を取ろうとした時、バランスを崩して脚立ごと後ろに転倒してしまう。

まずい!頭から落ちる!


…来るはずの衝撃が頭に来ない事を不思議に思い、そっと目を開けると

私を抱えながら心配そうに見つめるホワイトの顔が目の前に飛び込んで来た。


「どぅわあああああ!何でいるんですのお馬鹿ッ!」


私はさっと彼から離れると、高鳴る心臓を落ち着ける。

お姫様抱っこ…!お姫様抱っこされた…!


「ずっと居ましたよ!なんか一人で危ない事してるなーと思って見てました!

 こういうのって普通部下にやらせませんか?

 防衛もいつも1人でやってるし…人望ないとか?」


違…!私の単独行動が多いのは教育がまだ間に合ってなくて危険だから…!

いや、反論しちゃだめよ、罠かもしれないわ。


「わ、私は完璧なので一人で出来ちゃうんですわ!」


「なるほど!流石ですね!」


…待ってよ…そうだ、襲撃前の盗難

こいつ、私を見守ってたみたいな事言っていたけど

ここにいる理由は、きっと…!


「動かないで!」


私は銃を彼に構え一喝する。

ホワイトはきょとんとしながら私を見ていた。


「バレていないとでも思ったのかしら?

 聞いたわよ!貴方が来た日に北の武器庫の弾薬が減ってたそうじゃない!

 おかしいと思いましたわ、雑魚だの解らせ担当だの

 散々馬鹿にされてる私なんて誰も好きになる筈なんか無い…

 所詮お姉様が凄かったから

 たまたま幹部の席に座れただけの哀れな女ですもの

 でも哀れなりに知恵はあります!貴方には騙されなくってよ!」


ああ…自分で言っていて虚しい…でも全て本当の事、

弱くて口ばかりの私を好きになる人間なんか居る筈無いのだ。


「…さい」


ホワイトは俯きながら、小さな声で何かを呟く。


「え?」


「やめてください!そんな風に自分を卑下するのは!」


今まで見た事も無い剣幕で彼が言う。

私は想像していなかった言葉に思わずたじろぐ。


「何よ…!さっきまでヘラヘラしてた癖に…怒ってますの…?」


「俺は褒められると敵相手でも照れてしまうあなたの純粋な所が好きだ!

 何度負けてもへこたれずに渋矢を守る意志の強さも、

 か…可愛い笑顔…も…!

 全部全部好きなんです、たとえ貴方でも貶す事は僕が許さない!

 あなたを好きな人はここにいます!だから…!

 二度とそんな事言わないでください!」


彼は私の肩に手を置きながら真剣な面持ちで言う。

何…言ってるのよ…そんな…そんな事そんな顔で言われたら…!

嘘でも嬉しいじゃない…!


でも、こいつが悪い奴じゃなかったら

今度はブラックホール団の中に内通者がいることになる、

私にとってはそちらの方が信じたくない事実だ。


「…じゃあ…証明して見せて…!

 順番的に、3日後南の防衛ラインがヒーローに襲撃されますわ、

 あなたも知っているでしょう?」


「あー…そういうの言えない事になってて」


「じゃ、じゃあ襲われると仮定して!

 襲撃前日、つまり明後日の夜に南側のどこかの施設に工作が入る筈

 その時間南エリアの美術館前に来なさい

 そして南エリアで工作してる何者かを一緒に捕まえるの

 それが出来たらあなたを信用してあげてもいい」


「はい!解りました!明後日の夜、絶対ミリア様の所に行きます!」


彼は真っ直ぐな眼差しで即答した。

…どこかで、彼が敵であってほしくないと願ってしまっている私がいる。


でもそれは裏を返せば同胞の裏切りを望む事と同義だ。

私は淡い期待と自己嫌悪に心を乱しながら、

「待たせないで頂戴ね」とだけ言ってその場を去った。

ーーーーー


ヒーロー寮の前で、ホワイトは鼻唄交じりに部屋から出て来る。

「待ち合わせー♪ふんふん〜」


「あれ、どこ行くの?ホワイト」


(誰かと思ったら…ブラックだ)


「ん?ああ、君か

俺ちょっと人と待ち合わせしてるんだ、

それじゃ」


「待ちなよ」


急いだ様子のホワイトを不審に思ったのか、ブラックは彼の腕を掴んだ。


「…何?俺達プライベートに干渉出来る程仲良くないよね?」


「プライベートなら干渉しないよ

ただ…君の今から会おうとしてる人ってさ

ヒーローが会っても大丈夫な人?」


ブラックの羽織っていたジャージの下には、ヒーローの装備でもある拳銃の口が覗いていた。


「…!」


ーーーー


…もう3時間は待ってるけど来ないわね。

…やっぱりあの男は…敵だったのか。


いいえ、彼が敵だったなら内通者はいなかった事になる!

これでいい…これでいいのよ!


私が自分の胸に言い聞かせていると、

「ミリア!」と必死に声を上げながらサクヤ様が走って来る。


「サクヤ様…!?

どうしたんですのそんなに焦って…!」


「た、大変なの!」


彼女に言われるまま南エリアにある戦闘員の社宅に向かうと、

暗い顔をしたナギ様が入口の前に立っていた。


…嫌な予感がする。

恐れを必死に拭いながら社宅に入ると、そこには荒らされたラウンジに横たわる部下達の姿があった。


「一応治癒はしたんだけど…流石にこの人数じゃ間に合わなくって」


「ーっ!」


悲鳴にもならない声を上げながら、私は彼らに駆け寄った。

身体中に、蛇が這ったような不気味な痣がついている。


「酷い…」


これはホワイトが居ない中起きた事。

しかも、彼は私が美術館前でホワイトを待っていて

動けなかった事を知っている。

…騙されたんだ…!

私のせいで…私があんな奴の言葉に浮かれたせいで…部下がこんな目に…!


救護班が彼らを運んで行く中、私は「ごめんなさい」と呟きながら泣きじゃくる事しか出来なかった。


「…場所を変えよう

サクヤ、2人で場所を移しても?」


救護班の車を全て見送った後、ナギ様が私の肩を抱きながら言う。

サクヤ様はそれに頷くと「了解」と言って私達に手を振った。


ナギ様に手を引かれるまま歩いて行くと、

青いネモフィラの花畑に到着する。


「君の部屋で見かけてからまた来たくなっちゃって…夜に見るとまた綺麗だね」


「申し訳ありませんけど…私今それどころじゃありませんの

花を綺麗と思える気分では、とても」


「そう、相変わらず部下思いで彼等が羨ましいよ

でもミリア…君は悪くないさ、

あれはきっとホワイトがやった事だろう?

 君を裏切るなんて酷い奴だ」


「私のせいでもありますの、気休めは聞きたくありませんわ」


…あれ?何か今…


「…ミリア、君は覚えてる?昔この花畑で遊んでいたら地球人の子供が迷い込んで来たのを」


「え…ああ、ありましたわねそんな事も」


「僕は地球人とのハーフで孤児だったから…

 当時、異星人達から鼻つまみ物として扱われていた

そんな中あの地球人の子供を見かけた時

…この子となら…仲良くなれるかもしれないと、そう思ってしまってね」


「でも実際、話しかけたら逃げちゃいましたけれど」


「…そう、異星人と地球人は分かり合えない

改めてその時そう感じたんだ

そしてどちらの血も入ってる僕を認めてくれる人も、居ないのだと…

ミリア、君を除いてはね」


彼は私の顎をぐっと持ち上げると、そう言って寂しそうに笑った。


「今や幹部ですもの、実力さえあれば誰もナギ様に文句を言いませんわ」


「そうかな?未だに僕の幹部入りを快く思っていない人間はいるらしいから

…結局僕は中途半端だよ」


「ナギ様は立派な異星人ですわ

…地球人等とは違う

あの卑怯なヒーロー達とは…!」


後日、渋矢の南側で無惨にも大きな植物の幹に絡め取られたヒーロー達の姿があった。

やっと気付けたわ、今まで私は弱かった訳では無い…優しすぎたのだ。

想像以上に手も足も出ないヒーロー達を見て私は優越感を感じていた。


でもここにいるのは全員じゃない、ホワイトもいなければレッドも居ないわ…

まあいい、確実に今ここで4人潰してやる!


宇宙植物には人サイズの生物も食べてしまう巨大な肉食植物がいる。

彼らはゆっくりと植物の口の中に入ると、次第に動きが鈍くなって行った。


勝ちを確信した時、何処からともなく発生した炎が植物達を包むと、

ヒーロー達はポイと吐き出される。


「…レッド…!」


高いビルから降りて来た人影は、忌々しい赤いスーツを着た男だった。


こいつと私の能力は相性が悪い。

私は黙って銃を向け打ち込むが、レッドは難なく距離を詰めると、

地面に押し倒すように私を抑え込んだ。


くそ…!部下の無念を晴らす事も出来ないまま

また負けてしまうの…?

私は…こんな時まで…!


「落ち着いて」


レッドは優しい声で私に囁く。


「あなっ…!むぐ」


「静かに、他の隊員に聞かれたくない事なんだ」


彼はそう言って私の口を塞ぐ。

他の隊員に聞かれたくない…?あいつら、仲間なんじゃないの?


「君の事が大好きなホワイト…

 あいつ、昨日から行方不明どころか連絡も付かないんだ

…何か知らない?」


昨日の夜って…会う約束をした時間じゃない…!


「知らないですわ…!あんな詐欺師の事なんか…!」


そこまで言いかけて、私の脳にある考えが過る。

…もし…もし、彼が私を裏切ってないとしたら…?

何者かに襲われでもして、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()


「レッド…!私を倒しなさい!

 探さなきゃいけない奴がいるのよ!」


ーーーー

私は基地に帰ると南エリアの施設を片っ端から捜索する。

…いない!どこにいるのよホワイト!


まだホワイトが幹部に見つかって拷問を受けている可能性も残っているし、彼が無実だって確証はない。

けど…何故か、彼を疑いたくないという気持ちも私の中にあった。


何かヒントは無いの…?何でもいいから思い出して!


『あれはきっとホワイトがやった事だろう?』


…!あの時…ナギ様はどうして一言も話していないホワイトの存在を知っていたのだろう?


≪服には黒いすすの様な物が付着していて、微かに火薬のような匂いを漂わせていた≫


あの時もそう、何で救護班の彼が煤で汚れていた?

あれ…変だ…何で今ナギ様を思い出すの…?


私は嫌な予感を感じつつナギ様の部屋へと足を向ける。

扉から出て来たナギ様は、松葉杖を付いてよろけていた。


「やあミリア!ああ…これ?朝に階段から落ちたんだ」


「…部屋に入っても?」


「え?いや…今散らかってるし

 男の部屋にそんな躊躇無く入って行くなって!」


彼の制止を振り切り、私は彼の部屋に押し入ると


「ホワイト!ホワイトいるんでしょ!出てきなさい!」


私はそう言って叫ぶ。


「貴方、私との約束破って何こんなとこで油売ってるのよ…!

 推しとやらの私が探してやってますの、すぐ出てきなさい!

 じゃないと一生嫌ってやるんだから!」


私が言い切ると、「ドスン」と大きな音がして

音の方向に駆け寄ると粉々に砕かれたクローゼットとホワイトの姿があった。


「…!ホワイト!」


私は咄嗟に彼の足と腕に巻き付いた縄を切ると、口に貼ってあったガムテープを勢いよく剥がす。


「いたっ…!ミリア様ちょっとは手加減して下さいよ!

 …推しにあんな事言われちゃったら死んでも死に切れないじゃないですか」


彼はそう言って屈託のない笑顔を向ける。

しかしその体は痣だらけで、見るも痛々しい状態だった。

…あれ、この傷…この蛇が這ったような痣、どこかで…


「ミリア、騙されちゃ駄目だよ

 昨日そいつが君の部下の社宅を襲撃してるのを見つけて捕獲したんだ

 彼は危険だからこっちにおいで」


「…この事、ボスには伝えましたの?」


「いいや、独断だけど…彼に話してもどうせ対策しないし

 個人的に拷問しちゃいけないってルールも特に無いだろ」


私は彼の部屋を見回すと、収納の扉を開ける。

そこにはスペースいっぱいに拳銃と手榴弾が積み込まれていた。


「それはホワイトから押収したんだ」


「こんな量を一人で抱えていたとでも?」


「ミリア…まさか僕を疑ってる?同胞なのに」


確かに、この状況で彼を疑うのは変だ。

だけど何か違和感がある。

この違和感の正体は…


「思い出した!この蛇が這ったような痣…!

 私の部下達にもあった傷だわ!

 ホワイトが襲撃したならホワイトにこの痣があるのはおかしい…

 そうでしょ!?」


「…あーあ…バレちゃった…」


彼は低い声でそう言うと、先ほどまでの穏やかな笑みが嘘のように無表情へと変わっていく。


「そもそもホワイトが見つかると思ってなかったもん、こんな咄嗟の嘘すぐばれちゃうよね…残念」


「どうして…こんな事を」


「裏切りだよ、ブラックホール団への」


彼はそう言うと袖を捲り、その下にあるリストバンドを私たちに見せた

このリストバンド、見覚えがある…確か


「変身バンドです、コズミック5の…こいつ、ブラックの中身なんですよ!」


とホワイトが言った。


「ナギ様が…ヒーロー…?」


だから松葉杖を付いてたのね…!今朝私がブラックを倒したから…!


「何故同胞を裏切るような真似をするのです!」


「はは、ヒーローとよろしくやってる君がそれを言うんだ?

 ミリア…君はどうせ知らないだろ

 僕の親はね…どちらも異星人に殺されたんだ

 しかもブラックホール団の団員に」


「…!」


孤児の出だとは聞いていたけど、同胞殺し…!?


「当時はまだボスも別の人で…

 地球人への当たりはそれはもう酷かった

 僕自身も幼い頃は迫害されたものさ」


「だから…ここを裏切るんですか…?」


「そう!僕はここを裏切って地球人になるんだ!

 異星人の血が入ってるって事は隠して、完全な地球人

 しかもヒーローとして生きるって決めた!

 地球人に仇成す者は全部殺す」


彼の言葉を聞いて、ホワイトが私の前に出る。


「ああ…ミリアは別だよ!君が純粋で悪い子じゃないのは良く知ってる

 だから君に寄り付く虫は全部避けて来たろ?花束を渡した害虫もね!僕は君の味方だ」


『誰から貰ったの?』


『あー…私の部下の戦闘員からですわ!な、名前は忘れましたけれどっ!』


私は何日か前のやり取りを思い出して青ざめる。


「だから…私の部下を狙って…!」


「ミリア、僕と一緒に地球人になろう!

 そしたらその男が周りをうろつくのも許すよ」


彼はそう言ってよろけながら私たちに少しずつ近づいて来る。

ナギ様が私の頬に触れようとした瞬間、


「駄目です!」


とホワイトが叫んだ。


「…?」


面を食らったのか手を引っ込めるナギ様。


「ミリア様も地球人になって異星人の敵に…?

それじゃミリア様は喜びません!

きっととっても悲しんで食事も楽しめなくなります、だから駄目です!」


ホワイトは真っ直ぐな目でナギ様にそう言い放つ。


「俺は…ミリア様が好きなので

 地球人と異星人が幸せに暮らせる世の中を作ります!

その為にヒーローになりましたから!」


「綺麗事を!そんな世が実現出来たら僕の親は死んでない!

やっぱり気に入らないなお前…

ここで消えろ!」


彼が叫ぶと、ホワイトの身体にあった痣が不気味にうねり出す。


「僕の能力は治癒じゃない…人の生命力を奪ったりそれを他人に与える能力なんだ

 ホワイト、君の生命力は素晴らしいね?

 沢山吸ったのにまだ動けるんだもの

 でもそろそろ底を付くんじゃない?限界近いだろ」


ホワイトは胸を押さえて苦しみ出す。

ナギ様の能力はまるで呪いの様だ、今までこんな負の面を隠し持っていたなんて…!

このままじゃホワイトは本当に死んでしまう。


「君の能力は確か爆破だっけ?そんなのでどうやって僕に対抗するつもり?」


「…はは」


ホワイトは力なく笑うと私の方を見て


「ミリア様!蔦で僕の事痛めつけて貰っていいですか!」


「急に何言いだすんですの!?」


「ちょっと()()()()んですよ…!いいから早く!」


私は何が何だかわからないままに巨大な蔦を狭い部屋に召還するとホワイトを思いっきり叩いた。

思わず目を閉じてしまったが…彼は何事も無かったかの様にその場に立っていた。


「ありがとうございました!()()()と思います!

 ミリア様はここに隠れてて」


ホワイトはそう言うと私を机の下に押し込む。


「ブラック…いえ、ナギさん!昨日は俺を殴ったり蹴ったりしてくれて

 どうもありがとうございます!…あ、嫌味じゃないですよ

 本当に思ってる事なので…!俺の能力は『爆発』じゃなくって…」


彼はそこまで言うと拳を振りかぶり、


「衝撃を吸収して、放出する『カウンター』の能力なんです!」


そう言いながら、ナギ様の立っていた側の壁に思いっきり拳を当てた。


「がっ…」


壁は物凄い轟音と共に爆散し、ナギ様は強い衝撃に巻き込まれ気を失ってしまう。


「これが俺の…愛です!」


…つよ…


ビスケットのように簡単に砕けた壁と床に倒れ込むナギ様を見て、私はこのホワイトと言う男が敵じゃなくて良かったと、心の底から思ったのだった。


ーーーーー


ー薄れゆく意識の中、ナギは過去の思い出を反芻する。


「…ほら、やっぱり…駄目だったろ?」


僕はミリアが彼に駆け寄った瞬間、あの地球人と友達になれると少しだけ期待してしまった。

だからこそ、僕のその一言は何より自分に刺さって

虚しさが押し寄せた。


でも君はあの後


「大丈夫ですよ、ナギ様

 私将来偉い人になって、

 地球人と異星人がこの花冠を被りながら楽しく遊べる

 そんな世界を作りますわ!」


そう言って笑ったんだ…

そんな事出来るはずない、解っている筈なのに

君が言ったあの言葉は、僕の暗い心の中でずっと残ってしまっていた。


ーーーー


「ミリアをヒーローにスカウト!?」


全ての一件が片付いた数日後、サクヤ様がそう言って目を丸くする。


「はい!敵から光落ちする枠で採用したいってレッドさんが!」


嬉しそうにホワイトが言うと


「で、でもその…ねえ?いるんでしょ…?」

と言ってサクヤ様は顔を顰める。


あの後、ナギ様はブラックホール団の医務室に一度運ばれたものの

病室からは忽然と姿を消しており、依然戻ってくる気配は無い。


「コズミック5も一枚岩じゃなくって…

 色んな目的でヒーローをやってる人がいるんですけど

 ブラックことナギは異星人を殲滅する目的でまだ籍を残してますね」


「よく異星人と地球人が仲良くする派閥と異星人を殲滅する派閥が同居できてますわね…?」


「え?出来て無いですよ?」


「…は?」


「俺たちが異星人と仲良くしたいって言うのは皆には内緒にしてますから!

 あはは!その内仲間を増やしてく予定でーす!」


計画がいくら何でも雑過ぎる…!

だからあの時レッドは他に聞こえない様に言ってたのね…!?


「改めてですが…ミリア様、ネモフィラって出せますか?」


私は彼にネモフィラを出してあげると、彼はそれを私に差し出して


「俺、昔…能力が強すぎて地球人の中でも浮いた子供だったんです

 いっつも一人で遊んでて…初めて俺を遊びに誘ってくれたのがあなたでした」


彼は青い真っ直ぐな目で私を見る。

遊びに誘った…?まさか!


「あなた!あの…!?」


ネモフィラ畑にいた地球人!?

あの子、すぐに走り去ってしまったから顔を覚えていなかったけど彼だったのね…!


「あの時はびっくりして逃げちゃいましたけど

 あれから俺はずっとあなたを推し続けて来たんです

 俺と一緒に…二つの種族が分かり合える未来を作りませんか?」


「それが目的で私の周りを彷徨いてましたのね?

 あれでしょ?地球人と異星人が分かり合えた折には

 私と結婚とか考えてたり…!」


「あ、そういうのは別に」


「だから何でなんですのそれぇ!?

 …コホン!でも駄目よ、すぐにヒーローにはなれない」


「え!?そんな何でですか!」


「昨日散々貴方達の仲間を痛めつけたもの、

 仲間にでもなったらホワイトとレッドが顰蹙を買うわ

 …まずは謝罪して…雑用から始めさせて頂戴」


「ミリア様…!」


ナギ様、そこにいるなら見ていて下さい

いつか地球人と異星人が共存できる社会を…私が実現して見せますわ!

私は決意を胸にしながら、1輪のネモフィラを見つめたのだった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
高飛車を演じる裏でコンプレックス抱えつつも、役割を全うしようと頑張ってるミリアは気高くも可愛い主人公でした ホワイトとブラックは名前の通り思想が真反対なキャラですね でも幼少期や、ミリアに対する感情…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ