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知ることがなければ……

作者: 荒ぶる猫

大人の発達障害の生き辛さ

私は30歳まで普通に暮らしていた一般的な社会人でした。

しかし、職場の人間関係の悪化から適応障害と診断され休職をすることになってしまった。

休職中通院買い物以外で外出する事はほぼ無く始めて得た孤独という時間を過ごす事も出来た。

通っている精神科のDr.から精神テストをしてみないかと言われ少し興味もあったので二つ返事でやってみますと答えてしまった。

これが私の人生の狂い始めだった。

テストは2時間近く専門家と2人きりで進めて行き終わるとどっと脳に疲労感が残った。

そしてくだされたのは大人の発達障害ASD、高次脳機能障害通称アスペルガー症候群と自閉症スペクトラム障害が今ではASDと診断をまとめられているとの事だった。

私はその診断を聞いたその日からASDの事を知ろうと調べ始めると、私の性格だと思っていたことに尽くが発達障害で症状として羅列してあり、私は脳髄を揺さぶられるかのようなショックをうけた。

生き辛さを感じた事は無かった訳では無いが一般人だと思って生活しているので他の多数の健常者も同じ辛さを感じている物だと考えていた。

診断後はすべての行動に気になってしまう様にもなった。

この行動は発達障害の影響なのか?それとも健常者と同じ行動なのか?

自分のことを知ってしまったが為に行動へ移す前に考え込んで話題の咄嗟の切り返しや、他の人と会話が正しく出来ているか? 私だけが話していないか、周りはついてきてくれているか、それとも聞き流されてるだけなのではと余計な考えに脳の処理を持っていかれているのが実感出来た。

知る前の私ならこの位は出来ていたはず無のにと、過去の自分の幻想にも囚われ結局会社は退職してしまった。

退職後ゆっくり考えてみると発達障害の影響は子供の頃から出ていたんだなと改めて自己認識することが出来たが、社会人になってからは知りたくない情報ではあった。

今までの思考の選択肢の中に発達障害だからこれは苦手、やりたくない、不得意だから出来なくても仕方ない、という逃げの選択肢が診断結果を知ることで増えてしまったのだから……

再就職も発達障害特性を加味して考えないといけないと思い込んでしまい狭まってしまっていたし、ある種自分も診断に甘えるようになってしまった。

仕事に必要なところに発達特性が合致すればとても働きやすくなるとは思えても、自分にはそこまでしっかりと仕事に使える能力は備わっておらず、知る事で選択肢の幅が狭くなってしまったような気持ちになり、診断した医師を選んだりもした。

履歴書をパソコンで書きながら、メモのプログラムを立ち上げとりとめもなく自分の感情、状態を書いていくと履歴書そっちのけでメモをかいて自分が出来る事、苦手な事を書き出して長所は更に、短所は無理のない範囲で改善を意識し、新しい職場で働き始めることになった。

しかし、一回増えてしまった選択肢が私の心を乱す。

何をするのにもその増えた選択肢も考慮に入れないといけない、私はこの選択肢を消す方法が解らない……健常者の方よりも明らかに同じ時間内での反応が一歩遅くなってしまう。

しかし、私は主治医に選択肢が多い事は良い事だと思います。

他人と違う考え方、こだわり方、それは貴方の立派な才能です。

人類が行きてきて数百万年、この特性が消えないのは生存競争に有利であるから残ってきた事です。

熟考して答えを出すことも、人の顔色を窺わずに即断即決出来るような事も私は人類に必要な物だと考えています。

今は苦しいかもしれませんが、スプリングだって限界まで力を溜め込んでものすごい勢いになりますでしょ?

貴方は人類のスプリングなんです。溜まった力で他の方をびっくりさせてみては如何ですか?と指先に乗る程度の小さなスプリングを私にわたしてくれました。

お守りですとニコッと主治医が笑って送り出してくれて、帰路スプリングをポケットの中で圧をかけたり抜いたりしてゆっくりと不得意な事のときは圧力を溜める。

得意な部分の時は圧力を解放する。

よくよく考えてみればプラスマイナスゼロ。

以前から感じていた知らなければよかった!という思いが私の長所や短所をはっきりと自認できるようになって良かったと言う考えに上書きされていくのを感じた。

人間皆同じじゃつまらない!少しは俺みたいのが居た方が楽しくなるってもんだ!

ポケットの中からスプリングを取り出して親指と人差指とで一番縮むまで圧をかけたらそのまま力を解放、小さなスプリングは青空の中に消えていった。

得意を伸ばせ

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