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天の虫  作者: 藪犬
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タイトル未定2025/03/05 11:18

 

 私が子供だった頃、空には大きな大きな虫が居ました。

 私はその頃、病弱で床に伏せていると、その虫は窓外に小さくうようよと漂っていました。

 見た目は何だか黒っぽくて、甲虫みたいにがっしりしていました。

 私は毎日毎日それを見ていました。ゆらゆらと蠢き続けるそれを。

 ある日私は母に尋ねました。あの虫の名前を。

 母は私の指差した方を向くと、ゆっくりと微笑み、あれは幸せの虫よ見ることのできた人は幸福になるの。

 なら、私は毎日幸福になれるの? 

 ええ、きっと幸福になれるわ。


 やがて私は手術を受け、リハビリの為に病床から立ち上がりました。

 虫だと思っていたのは、窓の汚れでした。

 私はその時裏切られた怒りを感じました。

 でも、今なら分かるのです。母の優しさを。


 母の仏壇に纏わり付く線香の煙があの時の虫の形を作りました。

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