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旅立ちのとき

 僕は今日旅に出る。静かな森の片隅で。

 1人時の音色を奏でているじいちゃんに会いに行くんだ。

 じいちゃんの家ははるか遠く、3つも国を超えたところにある。

 僕が持っているのは、わずかばかりのお金とばあちゃんの形見のブローチ。

 幼少の頃から待っていたんだ。ずっと待っていたんだ。誰かから、求められることを。

 だから、僕はひとりになった。ひとりの世界になった。


 そこから始まっていくんだと思う。僕は街の雑貨屋に向かう。旅の支度をしなければならない。

 雑貨屋のトマスおじさんは、大酒飲みで有名だが、普段は気前の良いおじさんだ。

 「おじさん。僕は旅に出るんだ。旅のために必要なものを買いたいんだ。教えてくれるかい」

 トマスおじさんは、びっくりした顔をする。

 「おいおい。ほんとうかい。でも、君ももう成人か。そんな年になったんだろうね。まさか、君も今流行りの探索師になるために王都にいくのかい?あんなのは成功するのは、一握りの人だけだ。やめておきな」

 トマスおじさんは何度か僕を止めようとするが、僕はじいちゃんに会いに行くことが目的であること。父さんの許しを得ていることを伝えると、トマスおじさんも、それ以上何も言わずに一緒に旅に必要なものを考えながら、売ってくれた。

 夜僕は家で父さんと二人きりで食事をしている。母さんはずっと昔に流行り病で亡くなっている。なんでも父さんは、ばあちゃんと約束をしたらしい。15才の成人になったら、僕がじいちゃんの住む”3つの門のある国”に行くってことを。

 父さんはいつものように何も言わずにスプーンで口にスープを運んでいる。約肉もフォークで何度か突き刺した後に、口にほおばる。

「準備はできたのか?」

 父さんが言った。僕は「できたよ」と短く答えた。「そうか」と父さんは言って、それきり黙ってしまった。それから、父さんは、僕が小さかった頃の話や母さんの話、ばあちゃんの話をした。そして、最後はじいちゃんの住む場所まで行く道のりを知っている範囲で教えてくれた。僕はわくわくしながら、旅にい出るのは今日であるかのように体が動いた。

 翌日、僕は熱を出して、寝こんでしまった。看病のために雑貨屋のトマスおじさんの妻であるモーラおばさんが来てくれた。おばさんは僕の体をふいてくれて、冷たいタオルを額においてくれた。着替えも準備してくれた。僕はおばさんがいなくなった部屋で、ゆっくりした動きで、着替える。

 約束の日は今日だ。今日は僕の誕生日なのだから、行かなければならない。

 僕は荷物をバックにいれて、背負ってから、歩き出す。

 父さんとは昨日お別れはすませている。そう。今日から僕の冒険が始まるのだ。

 

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