第15話
今回は一人称がかなり入れ替わります
今から24年前ある家で双子の女の子が生まれた。
その家は家柄から女の子しか生まれない一族だった。ただしその長女はこの王都を背負う程の能力を持ち。毎回王国の上級階級の人を婿入りさせる程の力のある家だった。
そんな家で双子が生まれてしまったのだ。他が現実はいつも冷たく事実だけを突きつけてくる。彼女たちは長女が生まれた20分後に生まれた次女はただの20分で運命が変わってしまった。
全て記憶することから天才であったり、国の宝と言われる長女。長女と比較され続け何も評価をされずむしろ生まれてこなければよかったとの声すらもあった。
でも彼女は腐ることはなかった。彼女は代々の能力の保持者が残した記録を頭に叩き込ませていった。だが覚えることは得意ではなく、努力しても無駄だった。
家族皆から批判され罵倒されていた。でも長女だけは見捨てることはなかった。ずっと私を励ましてくれていたし、彼女は私を励ましてくれていた。そう今でも確信している。
でも昔の私にはその判断は困難だった。そんな彼女に私は強くあったってしまった。結果は家を出される結果となった。
「さよならお姉ちゃん……」
姉は黙ったままただ呆然としていた。何か遠くを見つめるように……
そうして私は里親に出されそこでパンを作ることの楽しさを知った。自分の居場所を知った。嬉しかった。自分を姉という物差しと比べようとしてくれない世界はこんなにも生きやすいのかと。
だが姉は私を見捨てることなく、毎日のように買いに来ていた。躊躇いつつも。今の私なら分かる彼女は私を愛してくれた。不甲斐ない妹にこうして毎日会いに来てくれているのだから。
成人したあともう一度家に呼ばれた。身代わりとして姉に成り代わってくれないかと。姉からは止められた。人生を棒に振るからって。
私には無理だった。はいと言うしか無かった。こうやって私はパン屋の傍ら彼女の身代わりとして働くことになった。
* * *
「お姉ちゃん」
俺がアリスの安否を確認しようとした時、パン屋の女性の声がした。今までなぜ気づかなかったのか。このモヤモヤのわけはなんなのか。今気づいた。このふたりは双子だったとも。
アリスは即死かと思った。だが女性を見た時にそれは違うと悟った。アリスから声がきこえたからだ。
「アリア、貴方には何もしてあげれなかった。貴方は私に縛られることなく今後は自分の道で……」
そこでアリスの声は途切れた。アリアは泣きじゃくっていた。愛を知りながらもお互いに愛し合うことが出来なかったから。気づいてもすれ違ってしまったから。
「俺は彼女を守ることが出来なかった……」
アリアは泣きながらも答えた。
「ルークさんの努力は見ていました。それより今は闘技場の方をお願いします。このままではお姉ちゃんのように救えても救えない命が増えるだけです。」
その言葉を聞いて俺は重い重い足を踏み出した。
残ったアリアはアリスに呟いた。
「私は貴方に恨まれようと、あなたの代わりを続けます。それが私の宿命で、私なりの愛です。この身勝手な私を許してアリス。」
俺は闘技場に戻るとそこには観客を守りながら、戦っているラインとリリアの姿があった。
客は声を上げて盛り上がっている。多分演出の1つでも思っているのだろう。
俺はまだあいつらには気づかれていない……俺も詠唱破棄が出来たら奥義でも一撃入れるのにな。ただでさえ実力の半分しか出ないのにこいつらを救える一手になるのだろうか。俺は力を込めて。
「絢爛流 百花繚乱」
彼の首めがけて切りかかった。完全にとはいかないがかすりはした。
「くっ……お前はルークじゃねぇか。 実力も運も誰よりも恵まれてるくせに、こんな俺にも勝てない雑魚なんてよ。」
ちょっとやってやるしかないか。
「リリア俺倒れるかもやけどあとはよろしく」
「ちょっと待ってください。師匠」
俺は覚悟を決めた。
「淵舞」