第10話
「単刀直入に言います。騎士団の中に裏切っているものがいるかを知りたいのです。」
話を切り出していったのはリリアだった。まさかリリアが相談したい話は騎士団の中の話だったとは。俺のパット見ではそんな人はいなさそうに見えたが、まだ一日しか見てないからなんとも言えない。
「そのような人は存在しません」
アリスは即答した。言葉を続けて、
「今までの騎士団の歴史の中でも裏切った人は一人もいません。疑問なのですがなぜこの質問をしたのですか? 貴方が一番わかっているでしょ。」
リリアはあっけに取られて
「実は最近私が騎士団の保存庫においているプリンがいつもの食べられているんです。」
「それはラインさんのしわざですよ」
アリスはため息を付くながらこう答えた。彼女の顔は見えないがきっと笑っていたに違いない。今日は彼女の存在を知るためで特別な案件ではないらしい。その後は彼女に質問をしたがうまい具合にはぐらかされてしまった。俺達はこのまま帰ろうとしたら城前ではパン屋のおねえさんがいた。
「奇遇ですねなぜここにいらしたのでしょうか?」
「私はここにパンを届けに来たんですよ。警備の人の分もありますからほらこんなにドッサリ。」
この人は声がどこかしらアリスと似ている感じもするが確証もないからとりあえずあとにすることにした。
騎士団本部に戻ろうとした最中グラスが元気そうにこちらに手を振っていた。
「グラス何をしてたんだここ最近?」
「俺は王都を探検したり、犬と戯れていたんすよ。あとは騎士団選抜試験で優勝するためにトレーニングしてたんで。」
グラスもグラスなりにやってたんだなと関心しつつ、グラスは言葉を続けて
「俺は優勝しますから」
楽しみにはしているが俺も審査員だからあんまり肩入れはできないけどな。
このあとは本部での選抜試験の話し合いを受けた。負けたら終わりのトーナメント制で勝ち上がれば上がるほど評価はされるが一回戦負けでも騎士団に採用されたことがあるため殆どは審査員の独断で決められるものだ。リリアはこれで優勝したのかしかも無傷で、
今回の選抜は今後の騎士団の栄誉のためにもそのため全力で取り組むように
シルバの号令から俺達は明日の準備を進めたどうやら俺は、特別審査員なのでその場を離れる事はできないらしい。俺はフラフラと眺めてヤジろうと思っていたのに。このままの雰囲気で俺の今日は終わった。
その頃城では
「またそのパンを持ってきたの? 私もう食べたんだけど」
「あんたの分もあるけど側近に渡して上げるためなのよ」
「ふーん 別にあなたの好きなようにやれば良いんじゃない。」
「あと、もしかしたら感づかれるかもよ、騎士団の剣術指南役にね。あなたも隠居生活するのがおすすめよ、どうしても無理ならここに来るのを控えたほうがいい。あなたが狙われるのは私としても嬉しいことじゃない。」
「あんたは明日の騎士団選抜見に行くの? 」
「私は城にいないといけないから。あなたはどうせ出店でもするんでしょ。」
「そうね明日が楽しみだわ。」