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ノルンとふしぎなものがたりたち

ノルンとふしぎなお友だち

 ノルンは、学校がすきな女の子。

 学校のクラスのみんながすきです。

 学校のスミス先生がすきです。

 知らないことを知ることができるからすきです。

 

 でも、分からないことがあるのです。



 ある晴れた日のことです。

 スミス先生が、クラスのみんなに聞きました。


「みなさんには、かなえたいことがありますか?」


 人気もののサッチはこう答えます。


「お花やさんになりたいです」


 くいしんぼうのマイルは。


「いっぱいおかしをたべたいから、おかしやさんになりたい!」


 学ぶことがすきなターニャ。


「テストで一番になりたいわ!」


 うでっぷしのつよいアーロンは大きな声で言います。


「ぼくは、パパみたいにカッコいい大工になるんだ!」


 ノルンは考えました。


 わたしが、かなえたいことってなんだろう?


「ノルンさんは?」


 ついに、ノルンの番です。

 スミス先生が、にこやかに聞きました。

 ノルンは、答えます。


「わたしは、お気に入りのクマさんのぬいぐるみとお話ししたいです」


 ノルンのその答えに、少しだけみんなはしずかになって、それから。


「はははっ!」

「それはムリだよ、ノルン!」

「もう、ノルンちゃんったらぁ」

「やっぱりノルンはふしぎな子だなぁ」


 みんなのわらう声に、ノルンは首をかしげていました。

 こまったようにわらったスミス先生がいいます。


「ノルンさん、かなえられることにしましょうね」


 ノルンは、やっぱりよく分かりませんでした。



 お家に帰ったノルンは、お気に入りのクマさんのぬいぐるみといっしょに、(まち)(はず)れにある小川に出かけました。

 川のながれがキラキラと光り、とてもきれいです。

 ほとりにすわったノルンは、クマさんをおひざにのせました。

 クマさんの手を自分で上げて、ノルンはクマさんになった気もちで言います。


『やあ、ノルン。きょうはどんなお話しをしよう?』

「きょうは、かなえたいことをお話ししたいわ」

『ほぉ? かなえたいこと?』


 クマさんが言います。


『ノルンは、どんなことをかなえたいのかな?』

「わたしはね!」


 そこまで言って、ノルンはうつむきました。

 みんなのわらう声が、聞こえた気がしたからです。


『ノルン? かなえたいことがあるんだろう?』


 クマさんがノルンに聞きました。


「クマさんと、いつかお話ししてみたいなぁ」


 ノルンは、クマさんの頭をなでました。

 それは、ぬいぐるみ。

 ノルンもそれは分かっています。

 ノルンは、スミス先生の言葉を思い出します。


「かなえられること……」

『それならかなえてるじゃないか? ボクのことは、キミが一番分かっているし、キミのことは、ボクが一番分かっているよ』

「うん! そうだよね!」


 それからまた、ノルンはクマさんとおしゃべりをしました。

 サッチのお花やさんは、きっときれいなお花がいっぱい。

 マイルがおかしやさんになったら、すきなおかしを作ってもらおう。

 ターニャがテストで一番になりたいと言っていてから、自分もがんばろう。

 アーロンがカッコいいだいくさんになったら、おしろを作ってもらいたい。

 クマさんにみんなのお話しをしていたら、あたりはすっかり暗くなっていました。


「いけない! マイヤーおばさんが心配(しんぱい)しちゃう!」


 あわててノルンは立ち上がりますが、町への道に出るには森をぬけなければなりません。

 森の入り口は、まるで大きなおばけのお口のようで、ノルンはこわくなってしまいました。


「ど、どうしよう……」


 その時、ぬいぐるみが光りました。


「えっ⁉」


 びっくりしたノルンは、目をつぶります。

 すると。


『ノルン!』


 だれかによばれて、ノルンは目をあけました。


『いっしょに帰ろう!』


 ノルンは、うでにだいているクマさんを見ました。


「クマさん⁉」

『ノルン、何をおどろいているんだい?』


 クマさんが、自分で手をパタパタとうごかしました。


「だって、クマさんがおしゃべりしてるから……」

『ボクはいつだってノルンとおしゃべりしているよ』


 やさしいクマさんの声に、ノルンのこわさはどこかにふっとびました。


『さあ、行こう!』

「うん!」


 クマさんといっしょなら、だいじょうぶ。

 ノルンは、お家にむかって、歩き出しました。



 マイヤーおばさんは、ノルンが帰って来ないことを心配して、お家の前でまっていました。


「あの子ったら……どこへ行ったのかしら?」


 お友だちのお家をたずねても、ノルンはいませんでした。

 ひとりならば、くらくなる前に帰ってくるはず。


「あの子がおちこんでいたこと、気づいていたのに……」


 マイヤーおばさんは、ノルンが学校から帰ってきた時、少しだけ元気がなかったことに気づいていました。

 お店がいそがしくて、ノルンのお話を後回しにしてしまっていたのです。


「あぁ、ノルン、どこへ……?」


 マイヤーおばさんは、不安(ふあん)になり、さがしに行こうと歩き出した時です。


「マイヤーさん」

「スミス先生!」


 マイヤーおばさんをよんだのは、スミス先生でした。


「ノルンさんはわたしがさがしにいきます。マイヤーさんは、ここでまっていてください」

「でも……」

「ノルンさんが帰ってきた時、だれもお家にいなかったら、さみしいですわ」


 スミス先生の言葉に、マイヤーおばさんがしぶしぶうなずいた時です。


「マイヤーさん!」

「スミス先生もいる!」


 ノルンのお家にむかって、クラスの子どもたちが走ってきました。


「みんな⁉」

「どうしたのですか⁉」


 マイヤーおばさんとスミス先生がおどろいていると、一番に走ってきたジャックが言いました。


「ぼくたちもノルンをさがすよ!」


 サッチとマイルも大きくうなずきます。

 しかし、スミス先生は言います。


「みんなも、ここでまっていて」

「えぇ⁉」

「先生、なんでだよ?」


 ターニャとアーロンが、スミス先生のうでにしがみつきました。

 スミス先生は、そんなふたりに目せんを合わせて、答えました。


「マイヤーさんのそばにいてくあげてください」


 ターニャとアーロンは、いつもやさしいマイヤーおばさんが、くらい顔をしていることに気づきました。


「わかりました、先生」

「まかせて」


 子どもたちがたのもしくうなずくのを見て、スミス先生は安心(あんしん)しました。


「では、いってきます」

「スミス先生、ノルンをよろしくおねがいします」


 マイヤーおばさんに見おくられ、スミス先生はノルンをさがしに出かけて行きました。



 ノルンは、クマさんと森に入ります。

 すると、何かのかげが、ノルンの目の前にとびだしました。


「キャッ⁉」


 ノルンがおどろいて立ち止まると、いっぴきのキツネがノルンを見ていました。


「これはこれは、かわいいおじょうさん。こんな時間にどうしたんだい?」

『キツネさん、何かごよう?』

「おや? ぬいぐるみがお話しするとは、びっくりしましたぜ」

『ボクはこの子の友だちさ』


 キツネさんが、ノルンたちのまわりをゆっくりうごきました。


「あたくしは、森のぬけ道を知っているんですがね?」

「ぼんと⁉」


 ノルンがよろこべば、クマさんは首をよこにふります。


『まっすぐ行けば、ここをぬけられることをボクたちだって知っている』

「あたくしが知っている道は、それよりも早い道ですぜ?」

『ボクたちは、まっすぐ行く道の方がいいんだ』


 キツネさんは、イライラしたようすです。


「いいんですか? お家に帰りたいんでしょう?」

「そう……だけど……」

『帰れるさ。まっすぐ行けばね』

「近道があるって言ってるでしょうが!」


 きゅうに、キツネさんがさけびました。

 ノルンはおどろきましたが、クマさんはいつもどおり。


『だからこそ、ボクたちはまっすぐ行くんだ』


 クマさんのことばに、キツネさんはノルンをにらみます。


「おじょうさんは、どうします?」

「え?」


 近道を行きたい気もちもあります。


「わたしは」


 考えたところで、本当のことは分かりません。

 でも。


「クマさんと、まっすぐ行くわ」


 ノルンの答えに、キツネさんは小さくためいきをつきました。


「どうやら、キミたちをだますことはできないようだ」


 そう言ったキツネさんは、夜の森にきえて行きました。

 ノルンは大きく息をはきました。


「あぁこわかった。でも、クマさんがいてくれたから、だまされずにすんだわ。ありがとう」


 クマさんはニッコリとわらいました。


『ボクも、ノルンがいたから、ゆうきが出せたよ』


 ノルンは少しはずかしかったけれど、うれしくなりました。


『さあ、先にすすもう』

「うん!」


 ふたりはまた歩き出しました。



 ノルンがしばらく歩くと、まっ白なオオカミさんに出会いました。


「おいしそうな子どもがいるぞ」


 オオカミさんは、ひくい声で言いました。


「ひぃ!」


 ノルンは、またこわくなってしりもちをついてしまいました。


「ハハハッ! すまんすまん。こわがらせてしまったな」


 ごうかいなオオカミさんのわらい声に、ノルンは目をぱちくりさせました。


『こら! オオカミさん! ノルンをこわがらせるなんて、ゆるさないぞ!』


 クマさんがおこると、オオカミさんはおどろきました。


「これはまためずらしいことだ」


 スンスンとはなをクマさんに近づけるとオオカミさんに、ノルンはあわてて言います。


「オオカミさん、やめて! クマさんは食べられないわ」

「ぬいぐるみを食べようなんて思わないさ」

「クマさんがぬいぐるみって分かるの?」

「わしは目がわるくなってるんだが、においでね」


 ノルンがオオカミさんの目を見ると、ちょっとだけ白くなっていました。


「オオカミさん、だいじょうぶ?」

「ああ、だいじょうぶさ。さっきも言ったとおり、はながいいもんでな」


 オオカミさんはこわい顔でわらいました。

 でも、それはさっきみたいなこわさはありません。

 ノルンは、少しだけ安心しました。


「むすめさん、どこへ行くんだい?」

「お家に帰るとちゅうよ」


 ノルンが言えば、オオカミさんは白いしっぽをふさりとゆらしました。


「お家は、森の中かい?」

「いいえ。森を出たところにあるわ」

「なら、ここをまっすぐ行けば、森の出口さ」

「あっ、ありがとう!」


 見た目はこわいけれど、オオカミさんはやさしいようです。


「あともうちょっとね、クマさん」

『うん!』


 ノルンとクマさんがよろこんでいると、オオカミさんは何もいない森のおくへと目をやって、言いました。


「いそいだほうがいい。ここにはよくないものがあらわれる」

「よくないもの?」

『さっき、いじわるなキツネさんには会ったよ』


 クマさんはまだキツネさんにおこっているようです。

 しかし、オオカミさんは首をよこにふります。


「キツネにはよく言っておくよ。だがね、キツネじゃない」

「何が、いるの?」

「何かは分からないのさ」

「えっ?」


 オオカミさんの答えに、ノルンとクマさんは顔を見合わせました。


『よく分からないものって……』


 クマさんも、さすがにこわくなったようです。

 ノルンは、オオカミさんに言います。


「オオカミさんがついて来てくれると、心強いのだけれど……」


 オオカミさんは、ノルンの言葉におどろきました。


「わしがこわいんじゃないのかい?」

「さっきはこわかったけれど、今はぜんぜんこわくないわ」

『うん、オオカミさんがいてくれたら、安心だね』


 クマさんも言いました。

 ノルンとクマさんにたのまれて、オオカミさんはちょっとてれていました。


「ありがとうな、ふたりとも」

「わたしは、ノルン。クマさんは、わたしのお友だちよ」

「ノルンと、お友だちのクマさんか。では、森の出口までおともしよう」

「ありがとう! オオカミさん!」


 白いオオカミさんが、まるで道をてらす光のようでした。

 ノルンとクマさんは、こわくてもまっすぐすすみます。

 マイヤーおばさんのまつお家に帰るために。

 ゆうきは、きぼうとなって、ノルンとクマさんをてらしていました。



 スミス先生は、子どもたちがいつもあそんでいるところへと行ってみました。

 でも、ノルンはいませんでした。

 さいごに思いついたのは、小川。

 スミス先生も、子どものころ、よくあそんだところです。

 しかし、スミス先生は、小川までの森に、あるウワサがあることを知っていました。

 それは、こわいオバケがいるということです。

 すっかりくらくなってしまったあたりに、森は大きな黒いかげに見えました。

 おとなになっても、オバケはこわいものです。


「ゆうきを出さなくては。ノルンさんを見つけるのよ」


 きっとノルンもこわがっているにちがいありません。

 おとなの自分が、まもらなくては。


「ノルンさん! どこにいるの⁉」


 大きな声を出して、スミス先生は、大きな黒いかげのような森に一歩ふみ出しました。



 ノルンの前を歩く白いオオカミさんが、立ち止まりました。

 それから、オオカミさんはスンスンとはなをならします。


「においが、かわった」

「えっ? におい?」


 ノルンもはなをならしますが、さっきと同じ、木と夜のにおいしかしません。


「これは、森にながくすんでいるわしだから分かることかもしれん」

『よくないものが、来てる?』


 クマさんが言いました。

 オオカミさんが、うなずきます。


「ああ。ノルン、クマさん、わしからはなれちゃいかんよ?」

「分かったわ」


 ノルンがふるえながら答えると、オオカミさんは少しふり向きます。


「わしをしんじてくれて、ありがとう」

「オオカミさんは、やさしいもの。わたし、においで分かるんだよ」


 ノルンが笑顔(えがお)でいうと、オオカミさんは目を丸くした後、ゆっくりとほほえみました。


「ノルン。まっすぐ、前を向いて、クマさんとお家に帰ることを考えるんだ」


 オオカミさんの力強い言葉に、ノルンはクマさんをだきしめて、大きくうなずきました。


「よし、あいつの中に、入るぞ」


 オオカミさんについていくと、あたりがぼんやりとしてきました。

 まるで、シャボン玉の中にいるみたいです。


「なんだか、きれい」

「気をつけるんだ、ノルン。それが、あいつのワナなんだ」

「ワナ?」


 オオカミさんは少しノルンにむき、それからまた前をむきました。

「あいつは、だれかといっしょにいたいのだろうな」

 オオカミさんの言葉に、だれかの声がかさなりました。



『こっちにおいでよぉ』



 それは、さみしそうな子どもの声でした。

 ノルンはギュッとクマさんをだきしめました。


『だいじょうぶだよ、ノルン』


 クマさんが言いました。

 ノルンもうなずいて、オオカミさんの後ろを歩きます。

 シャボン玉のようにキラキラするまわりを見ることなく、まっすぐ。



『ほぉら、こっちのほうが、楽しいよぉ』



 キラキラとしていたあたりが、こんどはもわもわと白いけむりのようになりました。


「オオカミさん、どこ⁉」

『あたりもまっ白になっちゃって、オオカミさんが見えないよ!』


 ノルンとクマさんは、オロオロしてしまいました。



『オオカミさんなんかより、オイラといっしょにいようよぉ?」



 もわもわとした白いものが、まん丸いふうせんのようになります。

 そのまん中には、大きなお目目がひとつ。


「きゃあ!」

『うわぁ! オバケだぁ!』


 ノルンとクマさんがこわがると、ひとつ目の白いふうせんは、にんまりとわらいました。



『そうだぁ。オイラはオバケだぞぉ!』



 白いふうせんオバケは、ノルンに向かってとんできました。


『にげよう!』

「うっ、うん!」


 ノルンは、こわくてこわくて。



『まてぇ~!』



 うしろを見ずに走りました。

 あたりはどこまで行っても白いまま。

 ここがどこだか、ノルンにはもう分かりません。



『さぁ、つかまえ……』



 オバケの声がすぐ近くまで来た時。


 ワオオォン!


 オオカミさんのとおぼえが、聞こえました。

 それはなんども、なんども。

 ノルンをよんでいるようでした。


『ノルン! あっちだ!』


 クマさんの声に、ノルンはまた走ります。


「ノルンさん!」


 べつの声が、聞こえてきました。

 それは、ノルンがよく知っている声です。


「スミス先生だわ!」



『それは、ほんとうに、先生の声かな?』



 オバケが、ぶきみに言いました。



『オイラは、声をまねることもできるんだ』



『オバケは、ウソをついているよ!』


 クマさんは、ひっしにノルンに言いました。


「でも、オバケさんの声だったら……!」


 不安になったノルンが、ついに立ち止まってしまった、その時です。

 ノルンの後ろに、オオカミさんがとび出してきました。


「ノルン、ふりむかずに、しんじる方へ行くんだ!」


 オオカミさんのことばに、ノルンはまた走り出しました。

 なんども、ころびそうになりました。

 でも、うしろにはオオカミさんがいると思うと、安心しました。

 それに、前からは。


「ノルンさん! どこにいるの⁉」


 まちがいなく、それはスミス先生の声です。


「クマさん、ごめんなさい」

『どうしたの? ノルン』

「さっき、クマさんの言葉をしんじられなかったわ」


 ノルンが正直(しょうじき)に言うと、クマさんはわらいました。


『気にすることないさ。オオカミさんのことをしんじたじゃないか』


 たとえ、自分の言葉でなくとも、ノルンがあぶない目に合いそうな時、たすけてくれるお友だちが、かならずいること。


『さあ、ノルン! もうちょっとだ!』

「うん!」


 白いもやもやが晴れて、だんだんと森へとかわっていきます。

 目の前が、くらい道となりました。

 ノルンをよんでいる人がいます。


「先生!」

「ノルンさん!」


 ノルンに気づいたスミス先生が、いそいでかけよってきて、だきしめてくれました。

 とてもうれしいのに、ノルンはなみだが止まりませんでした。


「せっ、……せん……ひっく……」


 なき出したノルンの頭を、スミス先生はゆっくりとなでてくれました。


「さあ、帰りましょう」


 ノルンがなき止むのをまって、スミス先生は言いました。

 うなずいたノルンは、少し森の方を見ました。

 すると、そこにはふたつの白い光。

 ノルンは、心の中でオオカミさんに「ありがとう」と、言ったのでした。



 家に帰ると、マイヤーおばさんだけでなく、たくさんのお友だちがいて、ノルンはビックリしてしまいました。


「ノルン!」

「ノルンちゃん!」


 ジャックとサッチが、ノルンの手をとりました。


「よかった!」


 みんながうれしそうに言いました。


「心配かけて、ごめんなさい」


 ノルンは、心からあやまりました。

 すると、クラスのみんなが、少しうつむきました。


「わたしたちの方こそ、ごめんね、ノルンちゃん」


 ターニャが言いました。


「今日、ノルンがかなえたいこと、わらったりして……」


 マイルも言いました。


「自分がかなえたいこと、わらわれたら、ぼくはいやだ」

「ノルンちゃんにいやな思いさせちゃった」


 アーロンとサッチが言った後、みんなはノルンにあやまりました。


「ごめんなさい」


 ノルンはほほえんで、首をよこにふります。

 それから、うでの中のクマさんを見ました。

 クマさんはもうおしゃべりしません。

 もしかすると、ずっとおしゃべりしていなかったのかもしれません。

 でも、ノルンには分かったことがありました。


 かなえたいことがあるなら、自分をしんじて。


 クマさんは、それを教えてくれたお友だちです。

 ノルンは、お友だちのたいせつさとやさしさを知りました。


「クマさん、わたしね、クマさんにみたいに、お友だちをたすけられる人になるわ」


 ノルンに新しくかなえたいことができたみたい。

 お友だちには、かなえたいことをふやしくれるふしぎな力があるのかもしれませんね。




 ~おわり~

お読みいただき、ありがとうございます。

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よろしくお願いします。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 「冬童話2023」から拝読させていただきました。 多感な時期、ノルンは傷ついたのですね。 でも、彼女には人でも、ぬいぐるみでも、動物でも本当に周りに恵まれていました。 彼女が優しい子である…
[良い点] 「冬の童話祭」から参りました。 今年もノルンのお話で参加されているのですね。 深い森を抜けなくてはならなくなったとき、クマさんが話しかけてくれて、白いオオカミさんが協力してくれて、ノルン…
[良い点] いつかまた、クマさんともういちど冒険する機会があるかもしれないですね。
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