舞踏会の衣装を作るために悪魔の三つ子に拉致されました
学園舞踏会に王太子のアル様と出るのが私でいいのか?
平民の私なんかがなって良いのか?
「まあ、学園の舞踏会だから問題ないんじゃない」
タチアナが言えば
「まあ、アルには婚約者がいないんだから良いんじゃない」
クンラートまで言うんだけど。
それは婚約している、あんたたちだったら問題ないと思うけど。王弟殿下のご子息と公爵家令嬢だし、身分上も問題はない。でも、アル様はこの国の王太子殿下だし、私は今はまだ、たかだか平民なんだけど。
良いのか?
でも、話はその日の放課後更に動くことになった。
その日の放課後も、教室からすぐに逃げようとしてアル様に捕まってしまったのだ。
強引にアル様に手を繋がれて、王宮への馬車に乗せられようとした時だ。
私の目の前に王宮のお忍び用の馬車が横付けられたのだ。
私はバラバラと降り立った侍女たちに囲まれてしまったのだ。
「な、何だ・・・えっ」
声をあげようとしたアル様が固まってしまった。
「アル。シルフィちゃんを借りるわよ」
「母上」
そう、そこには王宮の侍女のお仕着せを着た王妃様がおられたのだ。
「しっ!」
王妃様が口に人差し指を当てられて、アル様に注意される。
「あなた、シルフィちゃんを舞踏会に誘ったにも関わらず、まだ衣装を準備していないんでしょ」
「それはまだ・・・・」
「本当に準備がなっていないんだから、今からじゃ大急ぎで作らせなきゃ」
「ということでシルフィちゃんいらっしゃい」
もう一人はなんとテレシア様だった。何しているんですか。公爵夫人。私は心の中で叫んだ。
そして、なんともう一人恥ずかしそうにしているのは母だったのだ。
おいおい、おばちゃん達何しているのよ!
そう思うまもなく、私はあっという間に母ら悪魔の三つ子に馬車に拉致されてしまったのだ。
呆然とするアル様を残して。
いや、アル様、私も何か不安しかないんですけど。こういう時は守ってほしい!
でも、当然アル様が母たちに逆らえるわけもなかった。
「驚いた、シルフィちゃん」
「そらあ驚くわよね。王宮侍女がいきなり王妃だったら。本当にあんたは、そのまま王宮で働けるんじゃない」
「当たり前じゃない。これでも、羽目外すために結構この姿で王宮内を歩いているのよ」
テレシア様の言葉に王妃様が自慢げに言われた。
「そうなの?」
「そうよ。この格好で調理場に忍び込んで、『王妃様がデザートをご所望なの』とか、料理長に言ってもらったりしているのよ」
笑って王妃様が言われるんだけど。
「一度、私に内緒で鬼婆が前の王妃様のところに、私の悪口を言いに来たのを知ったのよ。で、鬼婆のケーキに思いっきり辛子まみれにしたのを出してやったこともあるわ。その時の鬼婆の顔と言ったら無かったんだから」
そう笑って王妃様が言われるんだけど。鬼婆って山姥の母親のトゥーナ様よね。
「あなた、王妃になっても、昔のままなのね」
呆れてテレシア様が言われるんだけど。
母も頭を抱えている。
「あなたたち、何、他人事宜しく言っているのよ」
ムッとして王妃様が二人を睨みつけられた。
「テレシア、あなたも、学園のころ、今の公爵様に塩入クッキー食べさせたじやない」
「あれは、間違えたのよ」
王妃様の暴露に慌ててテレシア様は言い訳された。
「ええ、そうだっけ?」
「違うわよ。テレシアの旦那様が他の女の子と仲良くしているからって、塩入のクッキー食べさせてやるって言って出したのよ」
王妃様の言葉に母が突っ込んだ。
「何言っているのよ。塩入のクッキーでも食べさせたらって、言ったのティナじゃない」
その母にテレシア様が突っ込む。
「そうよ。シルフィちゃん。あなたのお母様カマトトぶっているけど、昔は本当にひどかったのよ」
「止めてよ。ルイーセ。あなた自分を棚に上げてよく言うわね」
「そう言えば、隣国の王太子があまりにもしつこいからって卒業パーテイーに王子に唐辛子入の赤ワイン出したのティナだったじゃない」
「違うわよ。あれは唐辛子ジュースよ」
王妃様の言葉にテレシア様が修正なさるんだけど。唐辛子ジュースなんて飲んだらどうなるんだろう?
「あれはすごかったわよね。飲んだ王子が吹き出した先に鬼婆がいて」
「そうよ。殿下は苦しくて地面をのたうち回られるわ、鬼ババアは唐辛子ジュースまみれになるわ。最高だったわね」
皆大笑いなんだけど・・・・このおばさんたち何やっているんだろう?
それで息子の隣国の王子は私にそこまで絡んでくるのか? お母さん一体何やってくれているのよ・・・・。
そうこうしているうちに馬車は立派な工房の前についたのだ。
名前はマルティーナって書かれている。
ええええ! ここって注文しても出来上がるのが1年待ちがザラっていう超有名なデザイナー工房じゃない。ここの店主は王族でも言うことを聞かないって有名じゃなかったっけ?
そんなので10日後の舞踏会に間に合うんだろうか?




