学園で舞踏会が開かれることになり、アル様にエスコートされることになりました
また、アル様に告白されてしまった。うーん、アル様は本気なんだろうか?
いやいやいやいや、絶対に平民の私がアル様の隣に立つなんて無理だから。
なのに、連れて行かれた教室ではクラスメートに囲まれてしまい、戸惑いしかなかった。
「シルフィさん、凄いわね」
「本当にお聞きしましたわよ。王妃様のお気に入りなんですって」
「いえ、私ではなくて母が」
私が慌てて否定するが、
「それもお伺いしましたわ。タチアナ様のお母様とお二人で、王妃様のお隣にいつもいらっしゃるとか」
「何でも、毎日お茶会をしていらっしゃって、うちの母も呼ばれてご挨拶をさせてもらったとか」
「王妃様からはもうじき親戚になるから宜しくねって言われているそうですわ」
「???」
みんなの言うことは私にはよくわからないのだけど。
本当にそんなのがあり得るわけはない。
いくら王妃様とは言え、平民の私を王太子妃にするなんて出来るわけないのだ。
王妃様がそのつもりでも、陛下らが反対されるだろう。
それに大臣の方々も。
私は思っていたのだ。
「それで、今度の学園舞踏会ではシルフィ様はアル様のエスコートを受けられるのですか?」
「えっ、学園舞踏会?」
そんなものあったっけ?
「何でも今年から、大人の世界に慣れる練習をするために、設けられるそうですわ」
「平民の皆様も知っておいたほうが良いからと」
パウラ様達が教えてくれたけど、そんなの本当にやるのだろうか。
「ああ、聞いているよ。母上が企画したんだって」
お昼時に私がタチアナに聞いたら、アル様が応えてくれた。
「なんでも、シルフィの存在を皆に知らしめるためだそうだよ」
アル様がとんでもないことを言ってくれるんだけど。
「なんかもう、王妃様もいろいろと画策していて、周りが大変みたいよ」
タチアナも笑って言った。
「全てはシルフィ嬢を自分の義娘にするためなんだろう?」
クンラートまでとんでもないことを言うんだけど。
「でも、そんな、平民の私を王太子妃にするなんて無謀ですって」
私が必死に言うが、
「シルフィは何言っているの? 君のところはもう子爵家で、王太子妃を出すのには問題ないよ」
「そんなわけないでしょ。今まで平民だったんだから、お貴族様の反発も大変だと」
「でも、貴族からはシルフィを王太子妃にという話が持ち上がっているんでしょ」
タチアナが言ってくるんだけど。
「聞いた聞いた、この前、王妃様がシルフィを王太子妃にするように請願者を10人連れて来いって命じたんだろう。その者たちが連日、陛下のところに来て陛下が参っているそうだよ」
何かクンラート様がとんでもないこと言うんだけど。
「それに、我が家の母と王妃様が毎日、貴族のご婦人方をお茶会に呼んでいるそうよ」
「それも聞いたよ。毎日何十人と」
「うちの母と王妃様とシルフィのお母様はその当時、学園では無敵というか一大勢力のボスって感じだったから、呼び出しに応じない訳にはいかないみたいで、すごく盛況だそうよ」
何かタチアナたちがとんでもないことを言ってくれるんだけど。
「父も、せっかく結婚して静かになったと思ったのに、この3人が揃うと碌なことか無いって頭を抱えていたみたいだけど」
アル様が言われるんだけど。確かにこの前の3人は貴族夫人らに本当に怖れられているみたいだったけど。学園の先生方も怖れていたし・・・・バルテリンク先生は同級生で3人に落書きされたりして大変だったみたいだし。
「で、アルはその舞踏会、シルフィをエスコートするんだろう」
クンラートがとんでもないことを言ってくれるんだけど。
「それは当然そうしたいと思っているよ」
アル様はそう言われると真面目な顔して立ち上がられた。
そしていきなり私の前に跪かれたのだ。
皆の前で。
ちょっと止めてよ! 私はぎょっとした。
「シルフィ嬢。ぜひとも学園舞踏会に私と一緒に参加してほしい」
そう言うと手を差し出されたのだ。
ええええ! 周りの黄色い声も聞こえるし、私はこの手を取りたくはなかった。
でも、そんなのいつまでも王太子殿下に跪かせている訳にはいかないじゃない。
やむを得ず私は手を取ってしまったのだ。
「よしっ」
王太子殿下は何故かガッツポーズしているし、本当に私でいいのか?
もう私は真っ赤になっていた。
でも、その私に山姥らの魔の手が伸びてくるなんて想像していなかったのだ。




