アル様と学園に登校して突然告白されてしまいました
翌日、アル様と一緒に学園に登校した。
朝食が終わって私は逃げようとしたのだ。
でも、あっさりと制服姿のアル様が迎えに来てしまったのだ。
弟にも一緒に行こうと言っていたのに、周りを見ると弟はあっさりと逃げてしまったあとだった。
「皇太子殿下、わざわざ娘を迎えに来て頂かなくても」
母が慌てていってくれたが、
「これはティナ様。ご機嫌麗しう」
アル様が一平民の母に対して礼をしたのだ。
「お止め下さい。平民の私に礼など」
母がギョッとして言うが、
「何をおっしゃるのですか、ティナ様は我が母の親友とお伺いしております。それに母からはくれぐれも粗相の無いようにと釘を刺されておりますので」
「あのあばずれ、息子に何を言ってくれているのよ」
母が何かとんでもない独り言を言っているんだけど・・・・
「何かおっしゃいましたか?」
「いえいえ、何でもございません。妃殿下にはそのような気遣いは無用にしていただきたいと、お伝えいただきますか」
「それは、ティナ様から直接お伝えしていただければと」
「判りました。直接お伝えさせていただきます」
そう言うと、怒った母は早速部屋を出て行ったのだ。
「なんか、あっちも気になるんですけど」
私は母の去った方角を見て言った。
「それは俺もだけど、取り敢えず学校に行こうか」
「あのう、本当に一緒にいくんですか?」
「当然」
逃げようとする私に、アル様はそう言うと、当然のように腕を差し出してくれたんだけど・・・・
私は逃げ出すわけにも行かず、馬車までアル様に拉致されてしまったんだけど。
馬車は当然二人きりだった。
「いやあ、昨日の母上らの活躍すごかったんだって」
何を話題にしようかと思っていた私にあっさりとアル様は聞いてきたのだ。
「本当にもう、すごかったです」
気づいたら私は昨日のことをペラペラと話しさせられていたのだ。
思ったよりも会話は楽しかった。と言うか、アル様とはアル様が王太子と知る前はさんざん色んなことを話ししていたし、別にアル様が王太子であると改めて思わなかったら、普通に話できるのだ。
でも、馬車を降りたら、違った。さすが王太子殿下だ。
一斉に皆、私達を注目してきたのだ。
「どうした? シルフィ」
アル様が聞いてこられた。
「いやあ、王太子殿下って皆に注目されて凄いなって思いまして」
私が言うと、
「あのう、シルフィ、それは昔からだぞ。お前が俺が王太子だと知らないだけで、二人でいる時は散々見られていたけど、全っく大丈夫だったじゃないか?」
アル様が意地悪な事言われるんだけど。
「それはアル様が王太子殿下だとは知らなかっただけで」
「まあ、そうだとは思っていたけど、俺はおんなじ人間だから。王太子だとシルフィが判っても何も変わるものではないよ」
アル様が言われるんだけど。
「それはそうですけれど」
「それに今日はシルフィも注目されているよ」
「それは変な平民がアル様の横にいるからでしょ」
「でも、それ最近ずうーっとだよね」
そう言われると私は何も言えなかった。
「すみません。アル様。私はこちらなので」
私はできるだけ早く、アル様から離れようとした。一緒にいたらろくなことはないと思ったのだ。でも、それは間違いだった事にすぐに気付いた。
少しアル様から離れた途端だ。
「シルフィ様。私、カンプス子爵家のミナと申します」
「ちょっと待ちなさいよ。私こそクノフローク伯爵家のシャンタルと申します」
私はたちまち令嬢たちに囲まれてしまったのだ。今まで彼女たちはアル様ではなくて、私を見ていたのだ。でも、何故に?
「ぜひとも私をお見知り置きを」
「ぜひとも私とお友達になっていただきたく」
「ぜひとも我が家に遊びにいらして下さい」
そして一斉に皆が私にアプローチしてきたのだ。
私はあっという間に身動きが取れなくなってしまったのだ。
何でこうなった?
私は唖然として立ち尽くしていた。
「ちょっと皆通してくれるかな」
その私に殺到する皆を押し退けて、アル様がその集団の中から助け出してくれた。
「な、何なのですか? あれは」
私が驚いてアル様に聞くと
「母上が、昨日婦人たちの前で、シルフィを気に入っていると言い放っただろう」
そういえば王妃様がみんなにそんな事を言っていた。
それがもう、こんな形でみんなが私に押し寄せる原因になったのか。
私は頭が痛くなってきた。
でも、待って、それって、続きがあって、何でもアル様も私を気に入っていて、私を王太子妃に推薦しろとかなんとかそんなことだったような気が・・・・。
ええええ! あれって冗談じゃなかったの?
私は唖然としてしまった。
いやいや、でも違うだろう。
「絶対に平民の娘が、王太子妃になるなんて無理ですって」
私が独り言を言うと。
「そんなことないよ。母がそう言っているんだから」
「でも、そんな、アル様のお気持ちもあるでしょう」
私が聞くと
「俺はシルフィをとても気に入っているよ」
「それは後輩としてですよね」
「何言っているんだよ。後輩として気に入っているだけで、恋人の泉のコイン投げとか、茶色い帽子屋のパフェをわけわけして食べたりしないよ」
「えっ」
「当然、君には王太子妃になってほしいと思っている」
ええええ!
私はアル様の突然の告白に固まってしまったのだった。




