王宮でついに悪魔の三つ子が揃ってしまいました
それからが大変だった。
私達の部屋は王妃様のお部屋の近くの大きなお部屋を賜ったのだ。寝室が4部屋に、リビング、ダイニングにキッチンまでついているんだけど。
「まあ、元々あなた達が来る時のために準備しておいたんだけど」
王妃様の言葉に母は固まっていた。なんか母に対する執着がすごいんですけど。
結局その日は王宮の部屋に引っ越すため取り敢えず生活するための荷物を取りに帰ったりで1日経ってしまった。
その夜、私達4人は部屋に集まって呆然としていた。
「何でこうなっちゃうかな。こっちはめちゃくちゃ迷惑しているんだけど。明日から王宮の馬車で送り迎えで中等部に通うって、皆になんて説明すればいいのさ」
弟が文句を言いだした。
「あなたなんてまだ、良いじゃない。私は王子様と一緒に通学することになったのよ」
私がぶすっとして言った。
「えっ」
驚いた顔で父と弟が見てくる。
「ね、姉さん。ひょっとして本当に殿下と付き合っているの?」
「そんなわけないでしょ。アル様とは単なる友達よ」
私が否定した。
「ええええ! でも、中等部の友だちに聞いたんだけど、いつもお昼に殿下と食事しているって」
「えっ、シルフィ、本当なの」
エリアンの言葉に驚いて母が聞いてきた。
「タチアナとクンラート様も一緒よ」
私が言い返すが、
「ちょっと、待ってよ! 公爵家のご令嬢と王弟殿下のご令息と一緒ってどういうことなのよ!」
母が突っ込んで来たけど、
「それ母さんが言う? 元々母さんが王妃様と公爵夫人と親友だったんでしょ。それを盾に言われたら断れないじゃない。それに元々アル様が王太子殿下なんて知らなかったし」
「ふうん。でも、王太子殿下が王立学園に在籍しているのは僕でも知っているよ。普通絵姿とか見ていたらすぐ判るよね」
「だって興味なかったもの」
そうなのだ。平民だから王太子殿下なんて雲の上だと思っていたのだ。
「アル、こんなところで何突っ立っているのよ」
その時だ。大きな声が廊下に響いたのだ。
「お邪魔させていただくわよ」
ノックの音と共にそう仰って王妃様がアル様を伴って入ってこられた。
「これは、妃殿下に王太子殿下、この度は家族までこのような所に置いて頂き、感謝の言葉もございません」
私達が慌てて立ち上がって、父が一同を代表してお礼を言った。
「もう、そんな堅苦しいところは良いのよ。私としては、ティナをお借りできたら、何も言うことはないんだけど」
王妃様は明け透けに、自分の希望を言われた。
「まあ、妃殿下。そのような。私のような者が妃殿下のお心を惑わせるなど、とんでもございませんわ」
母が断ろうとするけれど、
「ティナ、もうそのしょうもない言い訳は良いわ。だってあなたの子育てが忙しいからって、今まで我慢していけれど、もう、下のお子様もここまで大きくなっているじゃない。もう子育てに時間はかからないわよね」
「え! いえ、私のような者が王妃様のお傍にいたらお邪魔でしょう」
「何言っているのよ。あなたがそんなの気にするわけ無いでしょ。そらあ、弱みを握られている殿方は困るかもしれないけれど、ねえ、陛下」
「いや、ルイーセ、そんなことはないぞ」
なんと廊下から驚いたことに国王陛下までいらっしゃったのだ。
国王陛下の顔が少し青いような気がするんだけど気のせいだろうか?さすがに私でもその顔は覚えていた。ベルンハルト陛下だ。英明な主君としても内外にその名前が通っているはずだ。でも、その陛下がなんかとても居づらそうなんだけど、何故だろう?
上座に座られた陛下ご家族と対面することになったんだけど、何故こうなった?まあ、全て母のせいだと思うけど。
自己紹介が済んだ後に
「で、この子、入り口で呆然と突っ立っていたのだけど、何のお話をしていたの?」
王妃様の声に私は青くなった。アル様に、興味無いとか言っていたような気がする。
「シルフィに、あんまり殿下のお邪魔をしてはいけないと諭していたところですわ」
青くなった私に代わって母が応えてくれた。
「まあ、必死にアプローチしているアルにしてみればそう言われたらたまったものではないわね」
なんか王妃様がとんでもないことを言われるんだけど。アプローチって、友達に対するそれだよね?
「はい? 妃殿下、何を仰っていらっしゃるのですか。そんな恐れ多い」
母が反論する。
「何言っているのよ。ティナ! 元々シルフィちゃんが、小さい時に私の家にお嫁に来てくれるって約束してくれたじゃない」
「はい?」
私は絶句した。そんなの覚えていない。
「妃殿下。それは子供の戯言ですわ」
母が言うのに私も頷く。
でもなんか殿下が悲しそうにするのは何故?
そこへ廊下が煩くなった。
「ちょっとお母様。待って」
「公爵夫人、ここは」
「良いからどきなさい。私だけ仲間外れにするなんて許さないんだから」
騎士をどかしてなんとテレシア様が入ってこられたのだ。
「ちょっと、ルイーセ、ティナ、酷いじゃない! 私だけ仲間外れにするなんてどういうことよ」
「別に仲間外れにしたわけではないわよ」
「そうよ。私は強引に連れてこられただけで」
「ああん、もう、学園の時みたいに楽しい事始めるなら言いなさいよね」
なんかもう室内はカオスな状態になっていた。
陛下と父が頭を抱えているんだけど・・・・
なんか、とんでもないことが始まりそうなことだけは私にも判ったのだ。
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