王妃様がと仲良くなった私は王妃様を家に連れて行くしかなくなりました
私はとんでもないことをしてしまった。
王宮の女官だと思っていた相手がまさか王妃様だったなんて。
知らなかったでは済まされないのでは。私は蒼白になってしまった。
「妃殿下どういうつもりなのですか。生徒と水遊びなんかして、お立場が無くなるでしょう」
ファネッサ先生は王妃と言えども容赦がない。
「何言っているのよ。水をいきなりこの子がかけてきたんじゃない」
王妃様は悪魔の笑みを浮かべて言われた。
「す、すいません。でも、最初に王妃様がわざと水をかけてこられて」
私が思わず言い訳すると
「最初にゴミを私の顔に張り付けたのはあなたでしょ」
「いえ、最初にわざとゴミを落とされたのは王妃様です」
私はもう必死だった。もう、王妃様だろうが、私のせいにされると処刑一直線だ。
「何ですって!」
「だって事実です。王妃様は青髪の山姥さんにもきつく当たっておられましたし」
「青髪の山姥って」
それを聞いて王妃様は吹き出された。
「あっ、いえ、すいません」
私はまた失言したのに気付いたが後の祭りだった。ステファニーが睨んでくるが王妃様の手前何も言えない。
それをファネッサ先生は頭を押さえて聞いていた。
「妃殿下。生徒を虐めるのはいい加減におやめください」
「何言っているのよ。これくらい耐えられないで、王宮でやっていけるわけ無いでしょ」
王妃様もさも当然というふうに言われる。
そうなんだ。やっぱり王宮で生きて行くのは大変なんだ。私は完全に他人事だった。
「あなた、何、他人事みたいな顔して喜んでいるのよ」
王妃様は関係ないみたいな顔をした私に詰め寄られた。
「えええ、だって平民の私には関係ありませんし」
私が言い訳すると
「えっ、あなたは今、アルにお近づきになろうと一生懸命しているんでしょ?」
「いえ、アル様は大切な先輩ですが、それだけです」
「えっ?」
王妃様はもとより、何故、青髪の山姥まで驚いているのよ。
「いやちょっと待って、元々あなたの方からアルに近づいていたと報告はあるわよ」
「いえ、元々、アル様はたまたま、ブルーセマ様を陰から見るのに都合の良い場所にいらっしゃっただけで」
アル様は王妃様の親戚か何かなのか。何故聞かれるかわからないまま私は答えていた。
「えっ、あなたから近付いたのではなくて」
王妃様が咎めるように言われるが、
「はい。高位貴族の方に私から近づくなんてとんでもありません。母にも絶対に近づくなって言われていますし」
「えっ、だってあなた、図書館の必ず恋人になる席にあるを自ら連れて行ったって聞いたけど」
「申し訳ありません。わたし、そのジンクスを知らなくて。ブルーセマ様を陰から見るのにカムフラージュでアル様を連れて行っただけで」
「えっ、貴方、テレシアの娘に近づくためだけに、アルをカムフラージュで連れて行ったの?」
「すみません」
私は素直に頭を下げる。
「だって、恋人の泉のコイン投げもしたって聞いたわよ」
「ブルーセマ様を待つ間の暇つぶしで、アル様に言われてやっただけで。それもジンクス知らなくて」
私は赤くなって言った。
「でも、茶色い帽子屋のジャンボパフェを二人で食べたんでしょ」
「ブルーセマ様とクンラート様が二人で中々頼まないから仕方なく」
「あなた、仕方なく、アルとジャンボパフェ食べあったの」
呆れたように王妃様がおっしゃった。
「はい」
私は仕方無しに頷いた。
「貴方本当に面白いのね。あのアルの顔を間近に見てもなんとも思わないの?」
「そらあ、おきれいだとは思いますが、所詮住む世界が違いますので」
私は思っている通りのことを答えた。
「あはははは」
王妃様が大声で笑いだされた。
「本当に貴方、変な子ね。気に入ったわ」
そう言うと、しげしげと私の顔を見られるんだけど。王妃様に気に入られても。
「貴方何か良く見た顔に似ているんだけど、どこかでお会いしたことがあったかしら?」
「いえ、私はおそらくお会いしたことがないかと」
「ティナの娘ですわ」
横からファネッサ先生が仕方無しに言われた。
「ええええ! 貴方ティナの娘なの。そんな報告どこからも来ていないんだけど」
王妃様はまじまじと私を見られた。
「まあ、それは後でいいわ。それよりも、ちょっと、テレシアがこの前貴方の家に伺って、ティナと親しく話したって本当のことなの?」
更に距離を王妃様が詰められた。
「は、はい」
「な、何でテレシアが良くて、私は駄目なわけ。それから何度かティナには逢いたいって連絡したのに、無視するのよ。酷いと思わない?」
私に詰めないで!
「そ、それを私に言われても」
「いいわ。今ならティナは家にいるわよね」
「おそらく」
「じゃあ、今から行きましょう」
王妃様はなんかとんでもないことを言われたのだ。
「えっ、行くってどこにですか」
「貴方の家に決まっているでしょ」
そう言うと王妃様は私の手を引いて歩きだされた。
「ちょっと妃殿下、ここはどうするんですか」
「先生、後はおまかせします」
そう叫ぶや、王妃様はずんずん歩かれた。
「妃殿下、いきなり平民の家を訪れられるというのは」
どこにいたのか護衛隊長らしき騎士が飛んできた。
「何言っているのよ。王宮の重臣、バースの家に、たまたま王妃が近くを通りかかって寄るだけよ。何の問題があるの?」
王妃様がさも当然のように言われるんだけど、いつから我が父は重臣になったのよ?
「いえ、しかし、警備の問題が」
「大丈夫よ。バースが私を害するわけ無いでしょ。あなたそれとも陛下に何か言い含められているの」
ずいっと王妃様が護衛隊長に詰め寄られた。
「いえ、そんな」
護衛隊長は慌てだした。
「はっきりおっしゃい」
「陛下は妃殿下がいきなり平民の家を訪問すると言い出されたらなんとしてもお止めするようにと」
王妃様に凄まれて諦めて護衛隊長は報告した。
「そうか。あなた達ね。この子がティナの娘だって隠していたのは」
「えっ、いえ、その」
護衛隊長はしどろもどろになった。
「これ以上愚痴愚痴言うとあなたをクビにするわよ。いや、それよりもあなたの奥さんに昔あなたがティナにいい寄っていたことをバラすわ」
「えっ、いえ、そのことは」
護衛隊長は真っ青になった。
「判ったわね。すぐに付いてきなさい」
「は、はい」
もう護衛隊長はコクコクと頷くしか出来なかった。
護衛騎士20騎に守られた王宮の馬車が我が家に着いたのはそれから20分後だった。
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