青髪の山姥は礼儀作法の先生を激怒させました
いたずら防止ペンは元々母らが持っていたものだったみたいだった。
再生動画を見る限り、本当に母らは悪ガキだったらしい。
悪ガキって普通は男がなるんじゃないのと思わないでもなかったのだが、悪魔の三つ子って同級生だったバルテリンク先生が言うのもよく判った。本当にどうしようもない母親連中だったのだろう。
あの、厳しくて有名な礼儀作法のファネッサ先生をしても匙を投げ出したんだとか。その酷さが良く判る。未だにバルテリンク先生はトラウマがあるみたいで、その娘の私とタチアナがいることに恐れをなしているみたいだ。私は母とは違うんだけど・・・・。
これで王太子殿下が揃えば新悪魔の三つ子って呼ばれるんだろうか?
「下らないこと考えていないで掃除に行くわよ」
タチアナに言われて私は職員室のトイレに向かった。
この女子用トイレを私達3人が放課後に掃除するらしい。
しばらく経っても青髪の山姥はやってこなかった。
「どうする?」
私が聞くと
「あんなの待っていても仕方がないからさっさと始めようか?」
タチアナが言ってきた。
「そうだよね」
私たちはブラシでトイレの便器を洗い出した。
「でも、遅くない?」
「本当よね。あの山姥、忘れているんじゃない?」
私の言葉にタチアナも認めてきた。
「ついでだから今日習った水魔術使えるかどうかやってみようか」
私が言った。今日授業で水魔術の練習をしたのだ。相変わらず、私はまともに前には飛ばなかったけれど。王子の的を破壊してまた怒られてしまった。
「えっ、ちゃんとできるの」
不安そうにタチアナが聞いてきた。
「大丈夫だって」
私は脳天気に言うと
「ウォーター」
言って便器に向かって放った。しかし、前に飛ぶわけもなく、何故かタチアナにもろにかかってしまったのだ。
ええええ! ヤバい。タチアナをずぶ濡れにしてしまった。このままでは私も絞められるのでは・・・・私は恐怖を感じた。
「ちょっと、シルフィ、酷くない」
「ごめん、やっぱりノーコンみたいで」
私は慌ててウィンドウでタチアナを乾かそうとした。
でも、ウインドウはぜんぜん違うとこに当たっていて全くタチアナを乾かしていなかった。
「あんた何やっているのよ」
怒ったタチアナは自分で乾かした。
「本当にノーコンよね。こうするのよウォーター」
今度は細い水の流れが私を直撃した。
私がずぶ濡れになる。
「酷い、タチアナ、わざとやった」
「何言っているのよ。元々あなたが私をずぶ濡れにしたんでしょ」
私がムッとして言うが、タチアナは言い返してきた。
「もともとノーコンなのを知っているくせに」
私が嘘泣きをする。
「えっ、シルフィ大丈夫? そんなにかかっていないでしょ」
驚いてタチアナは私に近寄ってきた。
「ウォーター」
左30度で正面をねらってウォータを放ってみた。
水の塊はもろにタチアナを直撃していた。
「やった」
ノーコンの私でも初めて狙って当てられたのだ。
「見てみて初めて狙って当てられたわ」
私が飛び上がって喜んでいると
「シルフィ」
タチアナの地獄の底からかくやと言う低い声が聞こえた。
「えっ?」
そういえばまたタチアナをずぶ濡れにしてしまったのだ。
それも、今度はわざとやったのだ。これは流石にやばいかも・・・・
「ウォーター」
タチアナの水魔術がまともに私に当たったのだ。
私は完全にずぶ濡れになってしまった。
「くそーーー、よくも、ウォーター」
「ちょっとシルフィ、ウォーター」
お互いに魔術の撃ち合いになってしまった。
もう私たちはびしょ濡れだった。
その時に扉が開いて人が入ってきたのだ。
私もタチアナも水魔術を放った後だった。
それは両面から入ってきた人物を直撃したのだ・・・・
そこにはずぶ濡れになったファネッサ先生が立っていたのだ。
「ブールセマさん、バースさん、あなた達は何をやっているのです! 罰としてトイレ掃除しているという自覚があるのですか」
ファネッサ先生の怒りが私達を直撃した。
私たちはその後延々とファネッサ先生のお怒りを買うことになってしまったのだ。
「でも、先生。ソーメルスさんがいつまで待っても来ないんですけど」
30分くらいして流石にファネッサ先生も疲れてきた頃を見計らって私は聞いた。
「あなたは来ないからと言って遊んでいいことにはなりません」
「それはそうですけど、何故来ないんですか?」
私は不思議そうに思った。もう終業から1時間位が経っている。いくら授業が終わるのが遅くても来ているはずだ。
「流石におかしいですね」
先生も不審そうにされた。
「帰ったんじゃないんですか」
タチアナが言った。
「流石にそれは無いでしょう」
ファネッサ先生は首を振っていった。
「ああ、先生こんなところにいらっしゃいましたか」
トイレの前で延々怒られていた私達の所に学園長がやってきた。
「どうされたのですか。学園長」
「私の所に先程、ソーメルス侯爵家の使者が来ての。娘は用があるので連れ帰るとあったのだが」
「何ですって、あのハゲ親父、罰則をサボって娘を帰したというのですか」
ビキっとファネッサ先生の持っているペンが2つに折れた。
私もタチアナも思わず息を止めた。
学園長も固まってしまった。
「ここは学園です。いくら侯爵家と言えども私に逆らうなど許しません」
ファネッサ先生は両手を震わせて歯ぎしりをしていた。
なんか山姥は絶対に怒らせてはいけない人を怒らせたみたいなんだけど。
まあ、自業自得だけど。
私は山姥が少しだけかわいそうになった。
ここまで読んで頂いてありがとうございます。




