いたずら防止ペンで復讐したら、昔の見てはいけないものを色々見せられました
私が苦労していたいじめは、タチアナが我がB組のお貴族様令嬢連中を断罪して終わった。もう本当に一瞬だった。
流石に悪役令嬢で公爵家令嬢のタチアナに次はないと言われてしまった貴族連中もタチアナに逆らえるはずもなく、クロメロンもデブアニカも静かになってしまったのだ。私への陰湿な虐めはパタリと無くなってしまった。
皆、流石に公爵令嬢のタチアナが怖いのだ。まあ、ゲームでの配役が悪役令嬢だし。
ゲームのレアルート通りに私は悪役令嬢に助けられていた。
「どう、シルフィ、いじめは収まった?」
お昼を食べながらタチアナが聞いてきた。
「ありがとう。これもタチアナのおかげよ。でもごめんね。私の代わりに水をかぶってくれて。大丈夫だった?」
「あんなの温風魔術ですぐ乾いたし、何でも無いわ」
タチアナは何でもないように言う。
「でも、大丈夫だったのか? 君がずぶ濡れになったって聞いて、本当に心配したんだからな」
横からクンラートが少し怒って言う。
「ありがとうございます。クンラート様。心配して頂いて。でも今話したように全く問題ありませんから」
少し赤くなってタチアナが言っていた。
「まあ、タチアナ嬢のお陰でシルフィへの虐めも無くなって良かったじゃないか」
アル様が言うけれど、そんな簡単に無くなるかな。私は不安だったのだ。元々アル様のせいだし。
そして、私の不安は的中したのだ。
帰ってきた私の机の上にボキボキに折られた魔導ペンが置かれていたのだ。
「・・・・」
私は驚いて立ち尽くしていた。
カバンは魔術で鍵を締めておいたのだが、机の中に筆箱を置いていたのだ。
その中の高価そうな魔導ペンをいたずらされていた。
周りの貴族令嬢たちは、驚く私を面白そうに見ていた。
ええええ、こいつらタチアナに最後通牒突きつけられていたよね。良いのか本当に?
私は貴族令嬢たちを見回した。
「どうしたの。バースさん」
クロメロンが余裕の発言をしてくれた。このペンいたずら防止用のペンなんだけど、こいつら大丈夫なんだろうか。私には敵を心配するほどのまだ余裕があったのだ。
「うーん、皆さん、ブールセマ様に次はないと言われていたと思いましたから、大丈夫なのかなと思いまして」
「何言っているのよ。私たちはやっていないわよ」
「そうよ、ペンが勝手に壊れたんでなくて」
テブアニカの発言に私はニヤリと笑った。
「そうですか。みなさんがこの件にかんでいらっしゃらないことを期待しますわ」
私の笑みに貴族令嬢たちはギョッとしたみたいだった。
「リペア」
私はタチアナに教えられたように詠唱を唱えた。
次の瞬間何事もなかったかのようにペンは元の形にもどっていた。
「えっ」
皆驚いた表情でペンを見ていた。そうだよね。私も驚いたわよ。でも本当に驚くのは次よ。
そう、次が肝心だった。
「リベンジ」
そう叫ぶとペンは震えて飛び上がると一目散に動きだしたのだ。でも、ペンは教室内の令嬢たちには一顧だにせず、教室から飛び出した。
「ギャーーーー」
そして、隣の教室からは凄まじい悲鳴が聞こえたのだ。
そちらに慌てていくと頭からペンのどす黒いインクをぶちまけられた青髪の山姥がいたのだ。
私と魔導ペンの持ち主のタチアナと、なんとかきれいにしたステファニーは相談室に呼び出されていた。
私達の前にはA組の担任で生活指導のファネッサ・ベイレフェルト先生と我がB組担任で魔術実技担当のアールト・バルテリンク先生と魔術研究の第一人者のブロック先生がいた。
ファネッサ先生はお怒りモードだし、バルテリンク先生は頭を抱えているし、ブロック先生は興味津々とペンを弄っていた。
「うーん、これは素晴らしい作りですね」
恍惚とした表情でブロック先生はペンを弄っている。
「ブロック先生」
ファネッサ先生が注意した。慌ててブロック先生は触るのを止める。流石に礼儀作法の先生は魔術の研究の第一人者をも一睨みで静かにさせられるのだ。
「で、バースさん。あなたのペンがいきなりソーメルスさんにインクを吹きかけたというのですが、本当ですか」
「私は現場を見ておりませんが」
「何言っているのよ。眼の前でこのペンがインクを吹きかけてきたのよ。私の特製の制服が台無しになったじゃない」
そう、山姥の制服は特注でいろんな飾りとかがついていたのだ。
「ソーメルスさん。学園の制服は皆同じのはずです。制服に何かしていたということは重大な校則違反ですが、何かしていたのですか」
「いえ、何も」
慌てて山姥は訂正した。ふんっ、校則破ってそんな物着ているからよ。
私は心の中で舌を突き出していた。
「バースさん。何故そのようなことをペンにさせたのですか」
ファネッサ先生が詰問してきた。
「このペンは魔導ペンでペンに悪さしたら、した者に対して復讐するようになっているんです。ソーメルス様が私を虐めようとしてペンをバラバラにされたのだと」
「私はそんなことはしていないわよ」
「してなかったらペンが攻撃するわけはないでしょ」
山姥にタチアナが反論していた。
「そんなの証拠はあるの」
馬鹿にしたように、山姥が言うんだけど、これがあるのよね。
「ふんっ、馬鹿ね。記録が取ってあるのよ」
「えっ」
タチアナの言葉に山姥が固まった。
「プレイ」
ペンから立体映像が投影された。
教室みたいだ。でも、なんか少し古いみたいだ。画像が色あせている。
そこには机で寝ている男子生徒が映っていた。寝顔が可愛い。
でも、それは誰かに似ていた。
「えっ、俺だ」
バルテリンク先生が声を上げられた。
「ルト完全に寝ちゃっているじゃない」
この声は聞いたことがある。と言うかピンク頭の女は絶対に若い頃の母だ。
「じゃあ、せっかくだからなんかお絵描きしましょうよ」
この人は見たことがない。きれいな人だ。
「妃殿下」
ファネッサ先生の呟きに私は目を見開いた。これが若かりし頃の王妃様なんだ。先生は慌てて口を塞がれる。
「任して」
そう言ってペンを取り出してひげを書いているのは絶対にテレシア様だ。
最後にはバカとかトンマとか書いている。
「やっぱり落書きしたのは悪魔の三つ子だったのか」
握りこぶしを握ってバルテリンク先生は怒っていた。そうか、母たちは悪魔の三つ子と言われていたのか。
「あの後どれだけ皆にバカにされたか」
独り言を言っているバルてリンク先生を無視して咳払いすると
「これは関係ないわね」
ファネッサ先生は必死に誤魔化している。今の王妃様もこんな酷いことしていたんだ。私たちは納得したんですけど。
「王妃様もこんな悪戯をしていらっしゃったのですね」
タチアナがあえて口に出して言う。
「今見たことは忘れなさい。宜しいですね」
ファネッサ先生は必死に言うけれど、見ちゃったものね。
私たちはお互いに顔を見合わせた。
結局10回再生してやってやっと山姥がこのペンを壊しているところが出てきたんだけど、その前がひどかった。
水を頭の上から被せられるバルテリンク先生や、ペンをひっくり返して頭からインクをかぶる生徒、これは陛下だったらしい、やら、色んな人が被害にあっていたのだ。
もう見ている私たちは口を押さえて笑うのを必死に堪えていた。
これだけ酷い画像を見せられたのだから、私たちはお咎めなしだろうと思ったのに、3人でトイレ掃除1週間の罰を与えられたのだ。
「えええ、先生酷くないですか。王妃様とかはもっと酷いことしていましたけど」
タチアナが文句を言ったが、
「ブルーセマさん、王妃様だけでなくて、あなたとバースさんのお母様もです。なんでしたらお二方のお母様も呼んでこの件でじっくりとお話ししてもいいですが」
そう言われれば頷くしか無かった。母たちの秘密をバラした・・・結果的にそうなった、元々これをタチアナに貸したテレシア様が悪いとは思うが、何を言われるか判ったものではなかったから。
母は怒らせると怖いのだ。
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