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魔術授業でノーコン火の玉で隣国王子を怒らせました。

アル様は私に何か言いたそうだったが、クンラートに促されてすぐに授業に向かって行った。


「うーん、アル様もなんかヘタレよね」

ぼそっとタチアナが言ったけど何を言ったか聞こえなかった。




次の授業は魔術実技だった。


前回までは理論だったので、初めての実践だ。魔術を使うってどんな感じなんだろうって、私はワクワクしていた。


今日は訓練場を使うのでタチアナのA組と同じだった。そのまま更衣室でタチアナと着替える。A組は基本的に子爵家以上、私のB組は残りの大半の貴族の子弟と一部の平民だ。


その中で女共の視線が怖いんだけど。私に色々言いたそうな面々も多そうだ。でも、タチアナがいるから何も言えないみたいみたいだった。まあ、私にはまだと言うか、将来的にもアル様の恋人になるなんて無理だけど。


と言うか、そんな事したら母に叱られること確実だ。


でも、アル様の優しい視線が何故か思い出されるんだけど、何でだろう?



ダメダメダメ、これからの魔術実技に集中しないと。魔術の向上はこれからの就職活動に大きく関係するんだから。まあ、国の文官になるのならば、そんなに必要ないかもしれないが、出来るに越したことはない。



「シルフィ、大丈夫?」

タチアナが聞いてきてくれた。


「うん、大丈夫」

何に対しての大丈夫かは判らなかったが、私は握りこぶしを作っていた。


そうだ集中しないと。



私達B組の魔術担当はアールト・バルテリンク先生で頭は少し禿げていた。だからだいぶ年配の先生だと思っていたのだが、タチアナによると両親と同じくらいの年齢らしい。何か色々苦労したんだな、と私は他人事だと思っていた。


クラスごとに固まって練習が始まる。


「よし、今日は攻撃魔術のファイアーボールの練習だ。やり方は前回教えたはずだ」

と先生はクラス全員を見る。


「まず、標的に正対する。そして、手を標的に向ける」

先生が例を示してくれた。


「出でよ、火の玉」

先生が詠唱すると、掌くらいの大きさの火の玉が飛び出して、そのまま正面の標的に激突、消滅させていた。


「凄い」

皆はそれを食い入る様に見ていた。


「よし、ではクロンメリン、やってみろ」

「判りました」

子爵令嬢のクロメロンが前に出た。


「出でよ、火の玉」

そう唱えると先生よりも少し小さな火の玉が出て、正面の的の傍を通過していった。


「惜しい、10番で練習しろ」

先生は一人ずつ、取り敢えず見て、出来るものは練習場に振り当てていく。


結構、皆、火の玉を作れていた。


「次はバース、うーん、なんか嫌な名前だな」

私の番になった。先生の言葉が最後の方は聞こえなかったけれど。


前に出る。


果たして私なんかに出来るんだろうか。前世では当然そんなの出来なかったし・・・・。

まあ、でも、やるのみだ。コイン投げも一応女神様の頭には乗ったし。


「出でよ、火の玉」

私が叫ぶと火の玉が少し顔をだしたが、引っ込んでしまった。


「惜しい、もう一度。もっと思い切って」

先生が指示をくれる。


ようし、ここは思い切って


「出でよ! 火の玉」

恥を捨てて私は大きな声で叫んだ。


今度はちゃんと火の玉が出たのだ。


「やったあああ」

喜びのあまり私は叫んでいた。


「おい、バース、天井に命中しているぞ」

先生が注意してきた。


「えっ?」

私は初めて火の玉の行方を追った。


標的はどこも傷ついておらず、天井が少し焦げていたのだ。

まあ、障壁が完璧に張られているので、問題はないそうだが。


皆呆れて私を見ていた。


隣のクラスのタチアナは呆れていたし、なんか銀髪のきざそうな男は馬鹿にしたように私を見ていた。クロメロンとかは所詮平民ね、と顔が物語っていた。


「もう一度、今度は的を気にして詠唱してみろ」

そうだ、先生の言うように、的目掛けてやれば良いんだ。


私は深呼吸すると

「出でよ、火の玉」

今度は火の玉は少なくとも前に飛んだ。でも、大きく右にそれたのだ。


「まあ、良いだろう6番で練習しろ」

先生が諦めたように言った。




私は真ん中の方の6番に行った。


順番に5発ずつ撃って交代するらしい。


「素晴らしいですわ。殿下」

「まあ、こんなの簡単だけどね。まあ、的を目掛けて天井に命中するなんてとんでもない女もいるけれど」

私の隣にはあのきざったらしい銀髪の男が来て自慢して言っていた。

その褒める声を聞いて私は驚いた。えっ、王族がこんなところにいたの?

いや、確か、我が国の王子様は3年生のはずだ。そういえば確かA組には隣国の王子が留学しているはずだった。天井に当てたとんでもない女って私のことか。私はムッとした。

気障な王子はムカつくと私は思った。



私の番が来た。


前に出ると、


「地界におられる妖精よ。その子孫たる我に力を貸してくれたまえ」

なんか皆の省略する詠唱を1から唱えている馬鹿がいる。本当に気障な嫌味王子だ。


「出でよ、火の玉」

私の方が少し早かったのだ。


そして、私の放った火の玉は私の的ではなくて、隣の王子の的に直撃していた。


「出でよ、えっ?」

王子は目の前の的が消滅して唖然とした。


「おい、そこの平民の女、いくら下手でも俺の的に当てるなんてどういう事だ」

プッツン切れた王子は言った。


「すみません。上手く当てられなくて」

私は仕方がなくて謝る。


「まあまあ、殿下。あいつはさっきは天井に当てていたくらいですから」

「そうだな。まあ、下手なやつは仕方がないか」

王子はそう言うと気障ったらしく前髪に手をかけて払う。

本当に気障王子だ。


「出でよ、火の玉」

「出でよ、火の玉」

今度も私のほうが少し早かった。


何故か私の火の玉は隣に向かっていって、王子の標的を弾き飛ばしていたのだ。王子の火の玉が虚しく通過していった。


「き、貴様、一度ならずニ度までも」

王子はいきり立って私に叫んできた。王子は地団駄踏んで悔しがっている。

そんな事言っても私は私の的を狙ったんだけど。


「すみません」

私は仕方なしに頭を下げた。


「まあまあ、殿下。たまたまですよ。この女が狙った所に撃てるわけ無いでしょう」

取り巻き達が言う。まあその通りなんだけど。


「まあ、そうだな。的を狙って天井にぶち当てるようなノーコン女だからな」

王子は笑って言った。完全に馬鹿にしていやがる。私はムッとしたが、まあ、悪いのは王子の標的を破壊した私だ。


「女、今度は俺が先に撃つからな。お前はそれから撃てよ」

王子が念押ししてきた。仕方無しに頷いてあげた。


「地界におられる妖精よ。その子孫たる我に力を貸してくれたまえ」

格好つけるためか、王子はまた、一から始めたのだ。


長いんだって。待つ身にもなってほしい。


「出でよ、火の玉」

やっと、王子の詠唱が終わってから、

「出でよ、火の玉」

私が少し遅めに言ったのだ。本当に。


しかし、私の火の玉は王子の火の玉に向かって飛んでいった。


そして、王子の火の玉にぶち当たってそれを弾き飛ばしたのだ。


ええええ! これって凄いことじゃない。私は何故そんな事ができたか判らなかった。


そして、私の火の玉は王子の標的を破壊。王子の火の玉はなんと、天井にぶち当たったのだった・・・・。


ふんっ、人のことを馬鹿にするからだ。

私は心の中で思ったのだった。


何故かノーコンなのに、他人の的に当てるシルフィはある意味天才です。

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ここまで読んで頂いてありがとうございます。
私の

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[良い点] 火の玉ちゃんわかってますね!
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