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不意打の雪ん子登場に脳みそが冬の王国までぶっとんてしまったテオジェンナだが、「ルクリュスを助けなければ」という思いがギリギリで意識を引き止め気絶をせずに済んだ。
「ぐふぅ……耐えろ、私! 小石ちゃんと雪ん子を無事に逃すまでは倒れるわけにはっ」
テオジェンナはふらつきながらも立ち上がった。
「はあはあ……待っていろルクリュス! 敵は強大だが、私が必ず救い出してみせる!!」
力強く宣言するテオジェンナ。だが、告げられたルクリュスは「ふん!」とそっぽを向いた。
「ルクリュス?」
「テオなんかもう知らない! 僕が目の前にいるのに、他の可愛い子にうつつを抜かすだなんて!」
ザックは「何いってんだ、こいつ」と思った。
「テオなんて、可愛い子なら誰でもいいんだ! 僕じゃなくてもいいんだ!」
「何を言っているんだ、ルクリュス! 確かに雪ん子は空から舞い降りてきたひとひらの雪の華の化身のごとき可愛さだが、私の幼馴染であるルクリュスと比べられるはずがないだろう」
「テオの言うことなんて信じられない! どうせ誰にでも同じこと言ってるんだろう?」
ザックは「面倒くさい女みたいなこと言い出したな、こいつ」と思った。
「何言ってるんだ! たとえどんなに可愛い子がいたとしても、ルクリュスは特別だ! この世で一番可愛い小石ちゃんなんだから!」
「嘘ばっかり! 口では調子いいこと言っておいて、「一番」なんて言われて浮かれている僕を馬鹿にしていたんだろう!?」
「そんなわけがないだろう!」
ザックは「なんで痴話喧嘩みたいになってんだ、こいつら」と思った。
「だって! 僕が一番なんて言いながら、僕と婚約するのは嫌がってるじゃないか! テオの気持ちなんて結局その程度なんだ!」
「おい」
「その程度とはなんだ! 私が幼き日から何度死にかけてきたと思っている!」
「おい、お前ら」
「でもどうせ、僕以外の可愛い子の前でも死にかけてるんだろう!? そうやって誰の前でも節操なく死にかけて……僕の心を弄んでたんだ!」
「ちょっと待て」
「節操なくとは何事だ! そんなに簡単な想いで死にかけるわけがないだろう! 私はルクリュスを誰よりも可愛くて大切に思うからこそ、ルクリュスが幸せになるための最善の道を選びたいだけだ!」
「いい加減に黙れ」
言い争いの合間にザックが口を挟むが、二人ともお互いの声しか聞こえていない。
悪人に捕まり人質にされた少年と、その少年を救いにきた少女は、悪人の存在を無視して睨み合った。




