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「ロミオは偽装婚約に反対か……いいアイディアだと思ったのだが……」


 思いついた提案を冷たく却下されたテオジェンナは、教室を出て廊下をとぼとぼと歩いていた。


「しかし、婚約をしていてもユージェニーのように横から割り込んでこられることもある。ああ、小石ちゃんを守るために私は何をすればいいんだ……」


 テオジェンナの頭の中をひとしきり「婚約」「結婚」という文字がぐるぐる飛び回る。


 そうして、はたと気づいた。


 テオジェンナ自身もいつかは誰かと結婚しなければいけないのだ、と。

 しかし、自分が結婚するイメージがまったく浮かばない。


「結婚……結婚したら相手を愛さないといけないのか?」


 果たして相手のことを小石ちゃん以上に愛せるのか? いいや、不可能だ。


 自分に向けた問いの答えはすぐに出て、テオジェンナは腕を組んで苦悩した。


「どんな男と結婚したいかといえば、私以上に小石ちゃんを大切にしてくれる相手じゃないと無理だ」


 そこは譲れない。絶対条件だ。


 たとえば、ルクリュスに何かがあった時、駆けつけようとするテオジェンナを止めるような男は論外だ。むしろ、テオジェンナより先にルクリュスの元へ駆けつけてくれるような男でなくては。


 そして、もしもテオジェンナとルクリュスが同時に崖から落ちそうになっていたら、迷いなくルクリュスに手を伸ばしてくれる男がいい。


 テオジェンナは本気でそう思っている。


「私と同じくらい小石ちゃんを愛し、私のことよりも小石ちゃんを優先して大切にしてくれる相手……ルクリュスの兄上達か」


 悩んだ末に、もしもルクリュスが聞いたらただでさえ黒い腹が暗黒に染まりそうな結論を叩き出したテオジェンナであった。


「ロミオはセシリア嬢がいるから駄目。岩石1と2は既婚。3と4は婚約者がいる。そうすると、狙いどころは五男ダミアン、六男ギリアムか……」


 ゴッドホーン家の岩石どもは皆揃いも揃ってルクリュスを溺愛しているし、性格もおおらかで豪放磊落な男ばかりだ。テオジェンナとは幼い頃からの付き合いなので、発作も見慣れている。


「求婚してみるか……」


 テオジェンナは真剣な顔つきで呟いた。

 ルクリュスはそろそろキレてもいい。


「しかし、「ルクリュスを守りたいから五男か六男のどっちか結婚してくれ」なんて言ったら、ロミオに叱られそうだ」


 ロミオが聞いたら「俺じゃなくても叱るわ!」と言うだろう。


 考えすぎて疲労した頭を休めようと、テオジェンナは眉間を揉んで溜め息を吐いた。


「そうだ。神父様に相談してみよう」


 テオジェンナはそう決めて踵を返した。


「愛する男を生涯守り続けるためにその男の兄に求婚しようと思う」などという相談をされる方の身にもなってほしいところだが、テオジェンナの暴走気味の訴えを怒らずに聞いてくれるだろう相手は他にいないのだった。




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