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泣き叫ぶルクリュスを力づくで奪い去ろうとするスゴイーケンリョーク王国(注:架空の国)の王女モッテルーナ(注:実在しない人物)。
その非道ぶりにテオジェンナの胸にはメラメラと怒りの炎が燃え盛った。
「おのれモッテルーナ(注:実在しない人物)……! 貴様の好きなようにはさせない!」
「約一名、妄想に取り憑かれてしまった生徒がいるようだが、二次被害を防ぐために手を出さずに好きなようにさせておこうと思う。それでは、他の者は授業の続きを始めるぞー」
とうとう教師から見放されつつ、それでもテオジェンナの心はいかにしてスゴイーケンリョーク(注:実在しない王家)の悪逆非道からルクリュスを守るかでいっぱいだった。
「私がもっと強くなれば……いや、駄目だ。スゴイーケンリョークのすごい権力ですごい武力をもってこちらを叩き潰してくるに違いない……。スゴイーケンリョークのすごい権力の前では私の力など何の役に立たないのか……っ」
「では、帝国と南方部族が衝突したトライザルノの戦いの結果、結ばれた条約の名前は? コードウェル君」
「はい。スゴイ……じゃなくて、スフォリテンリュース条約です」
「正解だ。少し引きずられそうになったが、合っているので自信を持って答えるように。では、その条約を結んだ結果帝国で起きた暴動をなんと呼ぶ? メノア嬢」
「モッテルーナ(注:実在しない人物)は甘やかされているから注意しても人の話を聞かないな。だが、モッテルーナ(注:実在以下略)の魔の手から小石ちゃんを守るためには私がきちんと小石ちゃんがいかに尊い存在なのか、神聖不可侵名な存在なのかを説かなければ!」
「えっと……モッテルー……じゃなくて、モッヘレナーの乱です」
「よろしい。モッテルー……モッヘレナーの乱については帝国史のテストで頻出されるのでよく覚えておくように。くれぐれも、解答欄にモッテルーナの乱と書かないように」
生徒達に注意を与えたところで本日の授業は終了となった。