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(なんてことだ……!)


 テオジェンナは立ったまま頭を抱えた。


 頭の中にはこれまで考えたことのなかった可能性が次々と浮かんで脳内をぐるぐる駆け巡る。


 小石ちゃんは可愛い。誰よりも、それを理解していたはずなのに。


(どこかに存在する可愛いもの好きの権力者が小石ちゃんと出会ってしまったら、小石ちゃんを欲さないわけないだろうが! その中には汚い手段を使って小石ちゃんを悲しませる輩もいるに違いない! 誰もが私のように「イエス小石ちゃん!ノータッチ!」を貫けるわけじゃないんだ!)


「スフィノーラ嬢……どうした?」


 担任が声をかけるがテオジェンナは気づかない。


(例えば、他国のすごい権力持ってる王女が留学に来たりして……)



『今日からこのクラスで勉強するスゴイーケンリョーク王国からの留学生だ』

『ほほほほ! わたくしはスゴイーケンリョーク王国の王女、モッテルーナ・スゴイーケンリョークよ! このわたくしと同じ学園に通えることにひれ伏して感謝するといいわ!』

『ざわざわ』

『あら? そこの貴方、宇宙で一番可愛い顔をしているじゃない! 気に入ったわ! わたくしの国に連れ帰ってペットにしてあげる! 爺! あの可愛い少年を捕まえなさい!』

『はっ』

『わあ! 何するんだ、離せ!』

『ほほほほほ! 無駄な抵抗よ!』

『ふええ……助けて、テオ!』

『待つんだ! 小石ちゃんを離せ!』

『まあ! 侯爵令嬢風情がスゴイーケンリョーク王国の姫であるわたくしに楯突くだなんて!』

『やめるんだテオジェンナ!』

『ロミオ!? どうして止めるんだ!』

『スゴイーケンリョークに逆らったら、俺達だけじゃなく、この国が滅ぼされてしまう……!』

『そんな!』

『ほほほほほほ!』

『テオーっ!』

『小石ちゃーんっ!!』



「おのれスゴイーケンリョークめ!! 絶対に許さん!!」


「スフィノーラ嬢……何らかの妄想が捗っているようだが、せめてあと三十分待ってくれないか? そうしたら今日の授業が終わるから」


 担任の声はスゴイーケンリョーク王国(注:架空の国)への怒りに拳を握りしめるテオジェンナには届かなかった。





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