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 お茶会の途中で眠ってしまったことに対して、テオジェンナは自分が可愛さに耐えかねて気絶したためだと思い込んでいるし、ロミオは「寝ちまってたか? 悪い悪い」とカラッと笑うだけで、二人とも薬を盛られたとは少しも気づいていなかった。


「いかん……このままでは」


 帰宅して使用人達から無事の生還を喜ばれたテオジェンナは、自室に戻るなり眉根を寄せて悩み出した。


 可愛さにいちいち死にかけたり気絶したりしてては、いざ「世界で二番目に可愛い子」を発見しても、捕獲できないかもしれない。


「どうしたらいいと思う? ユージェニー」

「そんなこと私にはわからないわ」


 いつもの生徒会室で「可愛さに耐えかねてお茶会の途中で気絶した話」を聞かされた公爵令嬢はそれ以外に答えを持たなかった。


 簡潔な答えはいつものことだが、ユージェニーの横顔が少し憂いを含んでいることに気づいてテオジェンナは首を傾げた。


「ユージェニー? 気分が優れないようだが」

「……いいえ。なんでもないわ。平気よ」


 ユージェニーが誤魔化すように目を伏せた。そこへ、ジュリアン、ケイン、ニコラスが入ってきて、先にきていた二人と朝の挨拶を交わした。


「早いね。お二人さん」

「ジュリアン様。殿下はまだ登園されていないのですか?」


 朝会が始まる時間だというのに姿を現さないレイクリードに、不思議に思ったテオジェンナが尋ねた。


「ああ。殿下は用事があって今日は遅れるから、朝会はナシだって」


 レイクシードは王太子だ。政務などで遅刻や早退は珍しくない。

 だから、テオジェンナもそれ以上は何も訊かなかった。

 ただ、ユージェニーが少し元気がない様子なのが気になった。




「ここのところ、私が小石ちゃんの件で醜態しか見せないから、見放されてしまったのでしょうか」

「そんなことはないと思いますよ」


 放課後、テオジェンナは神父の元を訪れて懺悔を聞いてもらっていた。


「可愛い子の家で可愛さに耐え切れずに気を失ってしまった」という懺悔を聞かされたハンネスは、それが罪なのかどうかわからなかった。

 が、とりあえずテオジェンナの気の済むまで話に付き合った。神の僕は迷える子羊を見捨てないのだ。


「しかし……ルクリュス・ゴッドホーン様とセシリア・ヴェノミン嬢は、大層愛らしい御容姿でいらっしゃるのですね」


 ハンネスがぽつりと言った。


「そうなんですぅぅ! 小石ちゃんは小石ちゃんだから可愛いのは当たり前なんですけど、妖精の可愛さも半端ないんです!! 本物の可愛さがこの学園に二つもある!! いつ何時この可愛さを支え切れずに建物が崩壊してもおかしくない!!」

「落ち着きましょう」


 興奮するテオジェンナを宥めて送り出し、ハンネスは「ふう」と息を吐いた。


「ルクリュス・ゴッドホーンとセシリア・ヴェノミン……確かに、滅多にない掘り出し物だな」


 ハンネスはそう呟くと、ニヤリと口元を歪めた。





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