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鍛えられた大きな体。見掛け倒しではなく少女とはいえ四人の人間を一度に運べる腕力。迷わず行動に移せる大胆さ。純粋な笑顔。
そして何より、こんなにも可愛いセシリアよりも火傷したと訴える少女達を優先する優しさ。
セシリアは可愛い。
それはもう、その辺の女子など比べ物にならないレベルで可愛い。
同年代の子供達が集まる場に出れば、男の子はこぞってセシリアをちやほやし、気を引こうと懸命になった。
仲良しの女の子と遊んでいた男の子でさえ、セシリアと目が合っただけでそれまで仲良くしていた女の子を振り払ってセシリアにまとわりついてきた。
それなのに、ロミオはセシリアの可愛さにいささかも興味を示さなかったのだ。
(なんて……なんて男らしい方でしょう!)
セシリアは自分がちょっと目が合ったり微笑んだりしただけで、でれでれとまとわりついてくるような男は嫌いだった。
セシリアの気を引くために他の女の子をないがしろにするような男など論外だ。
ロミオは今までに出会った男の子達とはまったく違っていた。
セシリアは初めて感じる胸の高鳴りに戸惑った。
(どうしましょう……体があつくて、なんだか頭もぼーっとするわ。胸のどきどきも止まらないし……私、どうなってしまったのかしら)
帰りの馬車の中でも、セシリアはロミオの背中を忘れることができなかった。
「セシリア」
家に帰ると、母はセシリアを一目見るなり静かな声音で言った。
「目覚めたわね」
「え……っ?」
戸惑うセシリアに、すべてを見透かすように母は目を細めた。
「今のあなたは、熱く煮え立つ血潮を持っている。その熱に怯えているのね」
「お母様……っ」
「いいこと、セシリア。あなたにその熱を宿させた相手を決して逃しては駄目よ。一度ともってしまった恋の熱は、己の身を焼くか、相手を焦がすか、もろともに燃え尽きるしか消す方法がないのよ」
「恋の熱……」
母の言葉に、セシリアは胸元できゅっと拳を握った。
「……わかったわ、お母様。私、必ずあの方を手に入れてみせる……!」




