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涙目でへたり込んでいた令嬢達だったが、衝撃が過ぎ去ると怒りが芽生えたのかロミオを鋭く睨んで罵り出した。
「なんて事するのよ!」
「信じられないっ!」
「なんて野蛮なのっ!」
「火傷しちゃったじゃない!」
キーキーと責め立てられたロミオは笑顔を消して引き締まった顔つきになった。
「火傷? お茶をかぶったのか? なら、水ぶっかけて冷やさねえとな!」
言うが早いが、ロミオは「おっしゃあ!」と勇ましい掛け声とともに四人の令嬢を担ぎ上げた。
両脇に一人ずつ荷物を担ぐような形で挟み、両手で一人ずつ腰布を持ち上げてぶら下げた。
「「「「は?」」」」
挟まれた少女も持ち上げられた少女も、何が起きたかわからないように口を開けてぽかんとした。
ロミオは同年代の少年と比べると遥かに体格がいい。
だがしかし、いくら細身な少女であっても四人同時に運べるわけがない。
わけがないのだが。
「よーし。暴れずじっとしてろよ。落としちまうからな」
少女四人分の体重を抱えて、ロミオは涼しい顔をしていた。「落とされる」ことを想像したのか、少女達は青ざめた顔で硬直した。
「おう、お前は大丈夫か?」
ロミオは一人だけ椅子に座ったままだったセシリアに向かって尋ねてきた。
「は……はい」
セシリアが答えると、ロミオはニカッと爽やかに笑った。
「そっか! よかった。さすがに五人は無理だからな! ……いや、背中に乗せればいけるか……?」
不穏な呟きを残して、ロミオは庭のガセボから四人の少女を運び出していった。
少女達を荷物のように運ぶその背中を見送って、取り残されたセシリアはしばしの間唖然としてた。
「……な」
やがて、セシリアの胸には一つの想いが湧き上がってきた。
「なんて……素敵な方なの!?」
荷物を持って颯爽と去っていた凛々しい少年の姿に、セシリアの胸は高鳴った。
「あんな大荷物を軽々と……なんてたくましくて力強いのかしら……あの荷物ども、あの方に運ばれるだなんて身の程知らずなっ。私も運ばれたかったっ!」
その日、セシリア・ヴェノミンは運命の恋に落ちたのだった。




