表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

43/103




 世界で一番可愛い小石ちゃんの幸せのために、世界で二番目に可愛い女の子をみつける。

 未練を断ち切るためにも、それを目標として全力を尽くすべきだとテオジェンナは心に決めた。


「というわけでユージェニー。親戚か知人に可愛い子はいないか?」

「貴女には紹介できないわ」

「何故だろう。殿下にもそう言われた」


 不思議そうに首を捻るテオジェンナに、ユージェニーは呆れて肩をすくめた。


 ちなみここは朝の生徒会であり、テオジェンナの発言が聞こえていたレイクリードは頭を抱えている。

 この調子では顔見知り全員に「可愛い子はいないか?」と尋ねて回る残念な侯爵令嬢が誕生してしまう。いや、すでに残念ではあるのだが、なんていうか。


「スフィノーラ侯爵家の令嬢が可愛い子を狩り集めようとしているなんて噂が立ったらどうするの。侯爵ご夫妻やトラヴィス様にも迷惑がかかるわよ」


 ユージェニーに厳しい口調でたしなめられて、テオジェンナはしょんぼりと肩を落とした。


「う……でも、可愛い子探しにでも集中していないと、この胸を焦がす情熱が溢れて爆発しそうなんだ。小石ちゃんが可愛いすぎて、何か他のもので気を紛らわせないと私は理性を失ったジャイアントゴーリランと成り下がって勇者に退治されるかもしれない」


 相変わらずありえない想像に怯えるテオジェンナに、生徒会の面々は溜め息を吐いた。心配しなくても、勇者だってそんなに暇じゃないだろう。


「勇者が存在するなら、侯爵令嬢を倒す前に犯罪者を退治してほしいよ」

「まったくだ。今朝は近頃犯罪率が上がっているため、生徒への注意喚起を行うという話し合いだろうが」


 ジュリアンの呟きにレイクリードが同意して、一同は頭を切り替えて生徒会の業務に戻った。


「平民街では相変わらず窃盗が多いってな」

「最近は誘拐も増えているらしいぞ」

「うちの学校の生徒でも、悪ガキは怖いもの見たさで危ない場所に足を踏み入れたりしているからな。危険な目に遭わないうちに平民街や貧民地区に行かないように指導しないと」

「上流階級の子女も誘拐されているらしい」

「最近の犯罪組織はなかなか知恵つけてきてるって親父がぼやいていたな。文書偽造とかも増えてきてるそうだ」

「零落した貴族や元上流階級出身者が悪の道に走っているという噂ですわ」


 噂や目撃情報などを報告しあって、生徒達へ行う注意喚起の内容を決める。テオジェンナも一旦ルクリュスのことは忘れて会議に加わった。

 王都の中にも治安の悪い場所はある。学園に入学したばかりの一年生が二、三年生にそそのかされたりちょっとした冒険心でそういった場所に足を踏み入れないように指導するのがこの時期の生徒会の一番大事な仕事なのだ。


「家では良い子だったのに、学園に入って仲間とつるむと気が大きくなって馬鹿をやらかす奴っているからなあ」

「付き合う相手に染まっちゃう子は要注意だな」


 会議が終わった後、テオジェンナはジュリアンとケインが話していた会話を思い出して思案した。


 付き合う相手に染まる。


 確かに、優等生に悪い友人が出来て人が変わったように不真面目になってしまうような例もある。仲良くなればなるほど相手の影響を受けるものなのだろう。


(しかし、岩石に囲まれて育った小石ちゃんはいつまでも愛らしいままだ。小石ちゃんの愛らしさは誰にも変えることができないということか!)


 小石ちゃんが絶対不変の可愛さを有していると確信して、テオジェンナは深く頷いた。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ