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 テオジェンナがいなくなった途端に本性を露わにしたルクリュスだが、牽制のためとはいえテオジェンナが毎日身近に接する自分達に正体を明かしても構わないのだろうかとレイクリードは疑問に思った。


 そのことを指摘しても、ルクリュスはふてぶてしい態度を崩さなかった。


「僕は別に、周りの人間に「可愛い」と思われたいわけじゃないんだよ」


 どこからどう見ても可愛らしさの塊のような男の子はそう言ってのけた。


「外見がこんなだからって、中身まで砂糖菓子みたいに育つと思ったら大間違いだからな」


 憮然とした面持ちは、それでもやっぱり穢れのない天使のように可愛らしかった。


「そんなら、なんであんなに可愛い子ぶってんだよ?」


 ジュリアンが尋ねた。

 たった今、テオジェンナに対してがらりと態度を変える場面を見せられたばかりだ。可愛い子ぶりたいわけじゃないなんて、説得力がない。


 だが、ルクリュスはきっぱりと言った。


「そんなの、テオが好きなのが「可愛い小石ちゃん」だからだよ!」

「「「「……は?」」」」


 目を丸くするレイクリードらの前で、ルクリュスは拳を握りしめて吐き捨てた。


「僕の家族とテオは、僕の可愛いところが大好きなんだよ! だから、他の有象無象はどうでもいいけど、家族とテオの前では「可愛い小石ちゃん」でいないといけないんだよ!」


 身内と幼馴染以外はどうでもいいと切り捨てたルクリュスは、机に座ったまま苛立たしげに足を組み変えた。


「お前らだって、家族や好きな相手には「カッコいい」って思ってもらいたくてカッコつけるだろ! 僕の場合は、求められているのが「カッコよさ」じゃなくて「可愛さ」なんだよ!」

「……いや。可愛い子ぶるのが不本意なら、別に無理することないんじゃあ」

「だって! テオは僕の可愛さに一目惚れしたんだぞ? 可愛い仕草には過剰に反応してくれるけど、その反面、可愛さ以外の要素にはまったく興味を持たれないんだよ! 僕の可愛さにしか興味がないんだよテオは! お前らには僕の苦労はわかんないよ!」

「おー……」

「なるほど……」


 可愛い系男子の思わぬ本音を吐露されて、カッコイイ系男子達はぼりぼりと頭を掻いた。


 恋人が自分の容姿にしか興味がない、というと一見よくある悩みであるが、好きな女の子から可愛さしか求められない男の子という構図は滅多にない。


 ルクリュスの最大の懸念は、可愛い子ぶるのをやめた途端にテオジェンナの関心を失うのではないかということだ。


 そのために、テオジェンナの前では「可愛い小石ちゃん」を演じ続けているのだ。





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