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そして、放課後がやってきた。
「テオ! お待たせ」
「ぐふっ! ああ、じゃあ行こうか」
待ち合わせ場所に駆け寄ってきた姿を見て軽くダメージを受けつつ、テオジェンナはルクリュスを伴って生徒会室に向かった。
「失礼します。ルクリュス・ゴッドホーンを連れて参りました」
一声かけてから扉を開け、ルクリュスを招き入れる。
「失礼いたします」
入室したルクリュスがぴょこりと礼をとった。
「よく来てくれたな、ゴッドホーン侯爵令息。私は王太子、レイクリード・ケルツェントだ。大しておもしろい場所ではないが、好きなだけ見ていってくれ」
レイクリードが歓迎の意を示す。
「このたびはお忙しいところを、無理を聞いていただきありがとうございます。ゴッドホーン家八男ルクリュスと申します」
ジュリアン、ケイン、ニコラスとも挨拶を交わし、少し緊張気味だったルクリュスもほっと肩の力を抜いた。
その様子を見て、なるほど愛らしい容姿をしているとレイクリードは感心した。
小柄な体とあどけない顔立ちはもちろんのこと、明るく優しい色の髪と目がルクリュスの愛らしさを強調していた。
(ふむ……)
レイクリードはせっかくなのでこの機会にルクリュスがテオジェンナのことをどう思っているのか探りを入れてみようと考えていた。
ルクリュスがテオジェンナのことを憎からず思っているのであれば、テオジェンナとの仲が深まるように協力してやるのも吝かではない。
テオジェンナはあの通り暴走しがちなので、ルクリュス一人では手綱を握るのに苦労するだろう。
レイクリードはユージェニーに目線で合図を送った。
すぐに気づいたユージェニーはさりげなくテオジェンナを生徒会室から連れ出そうとした。
「テオジェンナ、一年生の女子の帰宅の様子を見に行きたいの。一緒に来てくれる?」
「あ、ああ。えっと、ルクリュス……」
「僕なら大丈夫。行ってきて」
ルクリュスに笑顔で送り出され、テオジェンナは少し心配そうにしながらもユージェニーと共に出ていった。
さて、では男同士腹を割って話そうかと、レイクリードが口を開こうとした時、テオジェンナを見送っていたルクリュスがくるりと振り向いた。
その琥珀色の瞳が、ぎゅっと細められて、鋭いまなざしがレイクリードを貫いた。
「え……」
「さて」
冷たい声が静かに響いた。
「お楽しみの時間だぜ」
愛らしい顔をニヤリと歪ませて、ルクリュスが言った。