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「今日の放課後、小石ちゃんが生徒会の見学にくるぞ」
朝の打ち合わせの締めくくりにレイクリードが伝えると、まだ小石ちゃんに会ったことのない男性陣が色めきたった。
「おお! 噂の小石ちゃんに会えるんだな」
「実物を見たことがないからなあ」
「至急、テオジェンナ嬢の暴走対策を考えませんか?」
ジュリアン、ケイン、ニコラスも、まだ見ぬルクリュス・ゴッドホーンに会えるのが楽しみのようだ。
とにかく可愛い少年だということはテオジェンナのせいで嫌というほど知っているが、恋に狂っている乙女の評価は全面的には信用できないので、実物を一目見てみたいとは思っていたのだ。
「小石ちゃんの可愛さの波動で書類が吹っ飛んだり窓が割れたりするかもしれないので、大事なものは移動しておいた方がいいですよ」
テオジェンナは緊張しているのか、いつも以上に言っていることがおかしい。
「ゴッドホーン様は生徒会に入りたいとおっしゃっているの? テオジェンナ」
ユージェニーが尋ねる。
生徒会室に入りたいからテオジェンナに紹介を頼むのはわかるが、ルクリュスはまだ入学したばかりの新入生だ。学園生活に慣れるまでは待った方がいいのではないかと思ったのだ。
「いや、ただ私の交友関係が気になるだけのようだ……くぅっ! 幼馴染というだけで私のような岩石の友人を気にするだなんてっ! なんていじらしいんだ! あまりの可愛さに肋骨折れそう!」
「なんでだよ」
何故か胸の下あたりを押さえて苦しみ始めるテオジェンナ。
人智を超えた可愛さは骨に沁みるらしい。
「まあ、私達は普通に接すればいい。ただ、スフィノーラ嬢が壁を突き破ったり窓をぶち破って飛び降りたりしないようにだけ気をつけよう」
「かしこまりました」
「窓の前に障害物を置いておきましょうか」
「壁に衝撃を吸収する緩衝材を貼っておくのはどうだろう?」
「奇声対策の耳栓の在庫、まだ残ってたか?」
ルクリュス・ゴッドホーンが見学に来るにあたり、ルクリュスを迎える準備ではなくテオジェンナへの対策を考え始める生徒会の面々であった。