表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

22/103




 ***




 ケルツェント王国王太子レイクリード。


 フォックセル公爵家嫡男ジュリアン。


 ルードリーフ侯爵家嫡男ケイン。


 ヴェントーネ侯爵家嫡男ニコラス。


 いずれ劣らぬ家柄と容姿と才覚を兼ね備えた男子達である。


「王太子には婚約者がいるからいいとして……残りの三人にはきっちり釘を刺しておかないと……」


 テオジェンナに向かってさんざん愛想を振りまいてきたルクリュスは、自分の教室に戻るとすっと表情を消して席に着いた。


「あら? 何か悪巧みをなさっているご様子」


 おもしろそうな気配を嗅ぎつけたのか、セシリアがクスクス笑いながらからかってくる。


「相変わらず回りくどいやり方をなさるのね。男らしくないわ」

「どこぞの蜘蛛女と違って、薬を盛ったりする卑怯なやり方は好きじゃないものでね」


 腹黒同士がにっこりと微笑み合う。

 教室の温度が下がった。寒い。

 入学してひと月ほど経つが、この教室だけ他のクラスより明らかに平均気温が低いとクラスメイト達は確信していた。


「まあ! 正攻法で行かず外堀を埋めるような真似をなさる方に卑怯だなんて言われたくないわ」


 セシリアは頰に指を当てて小首を傾げる。テオジェンナがこの場にいたら鼻血を流しそうな愛らしさだ。


「既成事実さえ作りゃあいいと思っている節足動物は、卑怯よりも俗物と呼んだ方がいいかな?」


 ルクリュスは思案するように口を尖らせた。テオジェンナがこの場にいたら奇声をあげて窓ガラスを突き破って飛び降りそうな可愛さだ。


「うふふふ。ルクリュス様ったら。その外面ひっぺがしてテオジェンナ様に見せてさしあげたいわ」

「あははは。こっちこそ、セシリア嬢のお腹をかっさばいて真っ黒な中身を兄さんに見せてあげたいよ」


 気温がまた下がった。

 この教室、腹黒どもが会話すると温度が下がるようになっている。

 何故、このクラスに腹黒を二人も入れたんだ。一クラスに一腹黒までにしてくれ。

 クラスメイト達は切実にそう思った。



 セシリアを適当にあしらい、ルクリュスはふん、と鼻を鳴らした。

 回りくどいと言われようが知ったことか。目的のためには手段は選んでいられないのだ。

 テオジェンナはルクリュスを好いている。それはわかりきったことだ。


 だけど、本人にはルクリュスと結ばれる気がまったくない。


「一筋縄ではいかない相手なんだよ……」


 誰にも聞こえないように、ルクリュスは小さくぼやいた。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ