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悪者を捕らえてほっと安堵の息を漏らしたルクリュスだったが、次の瞬間、闇の中から伸びてきた腕がテオジェンナを捕らえた。
「ガキどもが……舐めた真似しやがって……」
怒りの形相を浮かべて闇の中から現れたのは、テオジェンナが気絶させたはずの男達だった。
(しまった! もう目が覚めたのか!?)
テオジェンナは男の腕を振りほどこうともがくが、逆に力を込められて苦しげに呻いた。
「テオ! テオを放せ!」
「うるせえ! 売り物の分際で!」
「チビ共はその部屋に戻って大人しくしてろ。こっちの勇ましいお嬢ちゃんには、さっきの礼をしなくちゃいけねえからな!」
男達がニヤリと笑った。
一転して絶体絶命のピンチに陥ったテオジェンナは「くっ……」と呻いて顔を歪ませた。
その時だった。
どどどどどど……
地響きのような音が近づいてきて、屋敷が揺れた。
「なんだ?」
「地震か?」
男達が怪訝な顔で辺りを見回す。
揺れが収まったと思ったら、今度はどこからともなく『どがっ』『めきめきめきっ』『がたんっばきんっ』と、何かを叩き壊すような音がして、さらにその音がどんどん近づいてくる。
「な、なんだ!?」
うろたえる男達の目の前で、壁が吹き飛んだ。
「む! みつけたぞルクリュス!!」
派手な音と共に壁を突き破って現れたのは筋骨隆々の大男だった。
「ジークバルド兄様!」
ルクリュスが叫ぶ。
そう。壁を破壊したのは岩石その1。
「本当だ! おい皆! ルクリュスがいたぞ!」
「ガイウス兄様!」
窓に打ち付けられていた木の板と思しき木材を真っ二つに叩き割る岩石その2。
「ルクリュス、ここか!?」
「デュオバルド兄様!」
蝶番ごと扉を吹っ飛ばして登場する岩石その3。
「無事でよかった!」
「オーガスト兄様!」
どこで叩き折ってきたのか、柱のような木材を担いで歩いてくる岩石その4。
「怪我はないのか!?」
「ダミアン兄様!」
天井を踏み抜いて、上から降ってくる岩石その5。
「かわいそうに、怖かったろ!」
「ギリアム兄様!」
下から床を粉砕して登ってくる岩石その6。
「な……な……」
突如現れた岩石兄弟に、テオジェンナを捕らえていた男達は顔を青くして後ずさった。予期せず六つの岩石に取り囲まれたら、人間は恐怖するしかない。
「てめぇら、よくも……」
「俺たちの可愛い弟を……」
「お前達、下がっていろ」
ずん、と、足音と共に床が——いや、家全体が揺れた。




