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 放課後、生徒会室へ向かおうとするテオジェンナの元へ、セシリアが訪ねてきた。

 驚くテオジェンナに白い封筒を差し出してにっこりと微笑むセシリアは、まさに花の妖精のごとき愛らしさだった。


「くっ……私の一番は小石ちゃんの可愛さ……けど、これはこれでっ」

「どうかなさいましたか? テオジェンナ様」


 胸を押さえて顔を背けるテオジェンナに、セシリアが首を傾げる。


「い、いや、なんでもない……それより、何の用かな」

「はい。実は、テオジェンナ様をお茶会にお誘いしたくて」


 入学したばかりの一年生の女子には、お茶会のルールを学ぶために友人や知り合いを招いてお茶会を開くことが推奨されており、学園内にはそのためのスペースも設けられている。

 だから、セシリアがお茶会を開こうとするのはおかしいことではない。

 しかし、テオジェンナは自分が招待されたことには驚いた。


「お恥ずかしながら、私お友達が少なくて……知り合ったばかりで無礼かもしれませんが、ぜひテオジェンナ様とお友達になりたいのです」


 恥ずかしそうに頬を染めてもじもじと見上げられて、断れる人間がいるだろうか。

 ルクリュス一筋のテオジェンナではあるが、セシリアの可愛さはこれはこれで別腹だった。


「私でよければ!」

「わあ、うれしい。ありがとうございます」


 セシリアがぱあっと笑顔を輝かせた。

 テオジェンナはあまりのまぶしさに目を押さえた。


「ジャイアントゴーリランにそんな可愛い笑顔を向けてはいけない! ウサギの楽園に帰れ!」

「ジャイアント……? ええと、それでテオジェンナ様にお願いがあるのですが」


 セシリアはテオジェンナに渡したのとは別の封筒を取り出した。


「お茶会にはルクリュス様とロミオ様もお呼びしたいのです。それで、この招待状をロミオ様に渡していただけないでしょうか」

「ロミオに……?」


 テオジェンナは呆然としながら封筒を受け取った。


 セシリアのお茶会。


 ルクリュスならば、招かれても違和感がない。

 二人が仲良くお茶を飲んで語らう光景はまさにおとぎ話さながらだろう。妖精のお茶会だ。


 だが、そこにテオジェンナとロミオが加わったら。


(さながら、妖精のお茶会に乱入する二匹のゴブリン……!)


 テオジェンナはそこに潜む危険性に気づいて青ざめた。




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