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月に虹がかかるまで

作者: 白告 枢

「声劇台本」兼「会話小説」です。


【台本の利用について】

収益化(後述)及び【禁足事項】に抵触しない限りはご自由にお使いください。

また、上演時には台本URLの記載を必ずお願いします。


【禁則事項】

・内容の過度な変更

・世界観を崩壊させるようなアドリブ

・この台本を利用しての誹謗中傷・他者への迷惑行為

・飲酒上演

・自作発言及び無断転載


また、上演時の台本使用連絡はどちらでも構いませんが、収益化(広告、投げ銭、換金可能な課金アイテム含む)、動画の作成、教材での使用、ツイキャスなどの放送録画(アーカイブ)を残す場合は、お手数ですがTwitterアカウント【@kkk_night】までご一報下さい。



私個人の規約は以上です。では、ごゆっくりお楽しみください。


上演目安時間

~30分


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荘野(ショウノ)

性別:男

エンストして立ち往生中


東雲(シノノメ)

性別:女

小説家。

自動車の普通免許持ち


配役表

荘野:

東雲:



東雲「月が綺麗ですね」


荘野「……星の見えない夜ですよ」


東雲「ありゃ」


荘野「生憎の曇りですからね。残念です」


東雲「きっと晴れますよ」


荘野「だといいですね」


東雲「ここまでは車で?」


荘野「えっ?えぇ、まあ、そうですね。サービスエリアですし」


東雲「そっか。そうですよね。あはは…」


荘野「野暮用の帰りだったんですけど、エンストしちゃって」


東雲「それはまた災難でしたね」


荘野「まあ、ボロですから。慣れたものですよ」


東雲「新しいのにしないんですか?」


荘野「まあ、お金もないっていうのもありますけど、長い間のってるとやっぱり愛着が湧いちゃってどうにも…ね?」


東雲「あー、わかります!私も初めて買った車は長かったなあ」


荘野「おねーさんはなにしにここへ?」


東雲「おねーさんって柄じゃないですよ。私、東雲っていいます」


荘野「東雲…。珍しいですね」


東雲「でしょ?よく言われます。おにーさんは?」


荘野「僕は荘野です」


東雲「お互い珍しい苗字ですね。仲良くしましょ」


荘野「そうですね。ところで、東雲さんはなぜここへ?」


東雲「ちょっとドライブに」


荘野「こんな時間にですか?……うわっ、もう午前二時…」


東雲「この時間、天気がうまくいけばここから眺める星空が綺麗なんですよ」


荘野「ああ、それで」


東雲「この時間、いつも私一人なんで今日はちょっと驚いちゃいました」


荘野「驚いてあの文句が出るのはどうかと思いますけど。なにか文学系のお仕事でも?」


東雲「あー、まあそんな感じです。そういう荘野さんはどうなんですか?」


荘野「僕は、何て言えばいいんでしょうか…」


東雲「そんなに難しい仕事なんですか?」


荘野「いやあ、これを仕事と言っていいのか悩んでいるところです」


東雲「えー、なんかそう言われると余計気になる~」


荘野「なんかこう、遊び人みたいなことやってます」


東雲「そんな仕事あるんですね」


荘野「そうですね、仕事ということにしておきましょう」


東雲「さっき言ってた野暮用っていうのもそれですか?」


荘野「ええ、まさにその通りですよ」


東雲「遅くまでお疲れ様です」


荘野「いや、大したことないですよ」


東雲「あっ、そうだ!」


荘野「どうしました?」


東雲「タバコ、吸ってもいいですか?」


荘野「構いませんよ」


東雲「ありがとうございます。じゃあ早速」


SE:ライター音


東雲「ふぅー、生き返るー」


荘野「車で吸わないんですか?」


東雲「あー、車に臭いつくのが嫌で…」


荘野「わかります、それ。車についたタバコの臭いってなんか嫌ですよね」


東雲「吸ってたんですか?」


荘野「昔に少しだけ。今はまったくですけど」


東雲「何吸ってたんですか?」


荘野「いろいろですよ。最後はたしか、メビウスでしたね」


東雲「今吸ってるのちょうど同じやつだ!」


荘野「割と居ますからね」


東雲「一本どうですか?」


荘野「いや、遠慮しておきます。またしばらくしたら別の仕事が来そうなので」


東雲「ありゃ。ていうか、お仕事はフリーランスなんですね。いいなあ」


荘野「実入りは少ないですけどね」


東雲「でも、好きなように働けるの羨ましいですよ」


荘野「そういうものですかね?」


東雲「そうですよ!私なんていっつも小言ばっかり隣でネチネチ囁かれてもうウンザリしちゃって……」


荘野「今日の星見はもしかして気分転換ですか?」


東雲「えへへ、実はそうなんですよ。寝てる隙にこっそり抜け出してきたんですよ」


荘野「それ大丈夫なんですか?」


東雲「起きる前に帰らないと大騒ぎされるんで、大丈夫じゃないですね」


荘野「気を付けて帰ってくださいよ」


東雲「そうします」


荘野「……なかなか晴れませんね」


東雲「そうですねー」


荘野「晴れ乞いとかしてみます?」


東雲「それ面白そうですね!やりましょうか!」


荘野「まあ、やり方知らないですけど」


東雲「ズコー」


荘野「わあ、すごい勢いで転んだ」


東雲「まさかこんなことで転ぶことがあるなんて思ってなかった…」


荘野「立てますか?」


東雲「どうだろう…?仕事柄座ってばかりなもので……よいしょっ!!!」


荘野「立った!シノノが立った!」


東雲「そんな人を金髪車いすお嬢様みたいに…」


荘野「おじいさーん!って叫んだほうがいいですか?」


東雲「やまびこになるだけだと思いますけど」


荘野「じゃあやめておきましょうか」


東雲「そうしましょう」


荘野「それにしたって、座りっぱなしは良くないですよ」


東雲「あー、わかっちゃいるんですけど、長時間向かい合わないとダメでして…」


荘野「あー、なるほど。たしかに、今時ペンで原稿書く人も珍しいですけどね」


東雲「えっ、どうして…」


荘野「ペンだこですよ」


東雲「……もしかしたら論文かもしれませんよ?」


荘野「その説も考えましたけどね。それにしては持って回ったような言い回しや、文的表現をするなーと。あと、漫画とも小説とも言及する前に”論文”と言ったのは答え合わせをしているのと変わらないですよ」


東雲「んー、言い逃れできないか…」


荘野「もしかして守秘義務があるとか?」


東雲「そうじゃないんですけどね。出版しても全く売れないから恥ずかしいなって…。重版どころか古本屋にも並んでないぐらいですし…」


荘野「……大丈夫ですよ。あなたは来月大成しますから」


東雲「…気休めですか?」


荘野「いいえ。趣味ですよ」


東雲「…人を煽るのがですか?」


荘野「いや、そっちじゃなくて」


東雲「自覚あるんだ…」


荘野「なんというか、なんて言えばいいんだこれ…」


東雲「それって、さっき言ってた仕事と何か関係が?」


荘野「そうとも言えるし、そうじゃないとも…」


東雲「めんどくさっ」


荘野「とりあえず話しますけど、嘘とかじゃないですからね」


東雲「そう前置きされると途端に胡散臭くなるのはなぜでしょうね」


荘野「半分以上趣味なんですけど、”見届け人”って仕事やらせてもらってます」


東雲「見届け人?」


荘野「名刺もありますよ。どうぞ」


東雲「どうも」


荘野「シンプルな名刺でいいでしょ」


東雲「シンプルというか、名前と見届け人ってこと以外書いてない…。あと裏に電話番号か」


荘野「いやー、流行らないんですよ。なかなか」


東雲「でしょうね」


荘野「おかげで商売あがったりなんですよ。また確定申告で困る…」


東雲「それで、見届け人っていうのはなんなんですか?」


荘野「見届けるだけですよ」


東雲「監視とか?」


荘野「そういうものではなく、なんでしょう。例えば、宿題が終わるのを見届けてほしいとか?」


東雲「ただの家庭教師では…?」


荘野「いや、何も教えないんですよ。ただ終わるまで見てるだけで」


東雲「……気持ち悪っ!」


荘野「そんな人を変態みたいに!」


東雲「想像したら背中に鳥肌が…」


荘野「鳥肌はともかく、そんな仕事です。終わるまで見てるんですよ」


東雲「見るだけでお金もらえるって楽そうでいいなあ。羨ましい」


荘野「楽ではないですよ」


東雲「だって、見てるだけなんでしょ?」


荘野「見届けてほしいものに該当する行動はすべて見ているんですよ」


東雲「は?」


荘野「例えば、”食事をするのを見届けてほしい”なら、食事が終わるまで見てるんです」


東雲「食べ辛そう…」


荘野「今日のとかなら……。その、あんまり喋ると個人情報的なあれがそれしてダメなんですが…」


東雲「なんか聞きたくなくなってきたからストップで」


荘野「よかったような残念なような…」


東雲「とりあえず、見届け人って言うのはなんとなくわかったけど、それと私が大成するのとどこに関係があるの?」


荘野「僕が見届ければいいんですよ」


東雲「…そういう詐欺とか?それか宗教?」


荘野「いや、そうじゃなくて…」


東雲「先に言っておきますけど、私、お金とか全然ないですからね」


荘野「お金も取りませんし、そういうのでもないですって」


東雲「じゃあなんですか?」


荘野「既に言った通り趣味なんです。他意はありません」


東雲「でも仕事って…」


荘野「趣味です。断じて百パーセント趣味です」


東雲「……(ため息)」


荘野「どうですか?」


東雲「……正直、一ミリも信用してません。なんなら、さっきまで好印象だったのが今や地の底に落ちたぐらいです」


荘野「嘘お……」


東雲「いきなり胡散臭い話を始めれば誰だってそうなると思いますよ」


荘野「それ今日二度目…」


東雲「すでに同じ手口を……。まあいいや。今そこは重要じゃないか」


荘野「なんにせよ、あくまで決定権はそちらにあるので、僕にはどうしようもないんですけど。あっ、警察だけは勘弁してください…」


東雲「警察沙汰にするのも面倒なのでそこは大丈夫ですよ」


荘野「よかった…」


東雲「仮に。仮にですよ?」


荘野「はいはい」


東雲「さっきの話。あなたが見届ければって話を信じたとして、それを依頼すれば…」


荘野「保証します。必ず」


東雲「いや、そっちじゃなくて」


荘野「違うんだ」


東雲「依頼したらずっとそばで原稿してるところ見られるってわけでしょ?それはちょっと嫌だなーって…。私一人暮らしだし、部屋散らかってるし…」


荘野「見ませんけど?」


東雲「は?」


荘野「いや、原稿やってるのずっと見てたらさすがにまずいでしょ」


東雲「じゃあ一体何を見届けるつもりだったの!?」


荘野「そこは守秘義務なんで」


東雲「どこに守秘義務設けてるのよ!」


荘野「そこはほら、個人情報に関わってくるので」


東雲「えぇ…」


荘野「僕から言えることはただ一つだけ。僕と出会えるのは、総じて何かを成し遂げる可能性のある人だということです」


東雲「なんかますます宗教じみてきた…。まさかとは思うけど、荘野さんって妖精とかそういう類い?」


荘野「そこは安心してください。ちゃんと人間ですよ。あと宗教じゃないです」


東雲「なんか頭痛くなってきた……。この話はまた後日でもいいですか?」


荘野「いやあ、後日はちょっと…」


東雲「都合が悪いとか?あっ、もしかしてまだ警察に行くと思ってます?行きませんよ」


荘野「そういうのではなくて…。いや、警察に行かないのはありがたいんですけど、タイミング的なあれで…」


東雲「だから、都合が悪いってことですよね?時間決めてその時間に電話するとかじゃダメですか?さっき名刺ももらったし」


荘野「チャンスの神様って話、ご存じですか?」


東雲「あー、あれですか。根性論みたいな、諦めなければ叶うっていう…」


荘野「違います」


東雲「スキー用品のCMで流れてた歌の…」


荘野「それでもないです。そもそも神様違いだし」


東雲「じゃあ知らないです」


荘野「ボケるだけボケたなこの人…」


東雲「それで、その神様はどんな話なんですか?」


荘野「”チャンスの神様は前髪しかない”という話ですよ。聞いたことありません?」


東雲「神様ってふさふさのイメージあったけど、やっぱり禿げてたんだ…」


荘野「そんなこと言って、バチ当たっても知りませんからね」


東雲「バチが当たるなら、逆に掴んで太鼓でも叩いてやりますよ。私達人級ですから」


荘野「ゲームですよね?」


東雲「なんでわかったんですか!」


荘野「いや、まあ……。とにかく、チャンスの神様の話でしたよね」


東雲「そうだった。もったいぶらないで早く話してくださいよ」


荘野「理不尽な…」


東雲「ほら、はーやーくー」


荘野「この神様はギリシャ神話に出てくるカイロスという名の男神。その描かれている風貌が全て後頭部に髪がないことから、同じチャンスは二度無いという話ですよ」


東雲「へー」


荘野「興味なさそうですね」


東雲「私のチャンスがいつ来るか。それは私が決めることだからね」


荘野「これ僕が見届ける必要ない気がしてきた…」


東雲「さっきと言ってること逆じゃないですか?」


荘野「こんな強気な人、僕がいなくてもそのうち成功しますよ」


東雲「……強気に見えますか?」


荘野「どちらかと言うと空元気ですね」


東雲「よくわかってらっしゃる」


荘野「まあ、なんにせよ選ぶのは東雲さんです。僕は押し売りとかじゃないですから」


東雲「選べと言われてもなあ。正直話がうますぎる気がするんだよね」


荘野「なかなか一筋縄じゃいかないな…」


東雲「ここまでの話なら何か対価があってもおかしくない。でしょ?」


荘野「だから、ただの趣味に企みも対価もないですよ」


東雲「趣味で他人の成功が左右されてたまるかって話なのよ」


荘野「まー、なんでもいいですけど。時間は大丈夫ですか?」


東雲「交渉に時間を持ち出すのは焦っている証拠よ」


荘野「いや、僕はどうせ暇なんでいいですけど。抜け出してきたんでしょ?」


東雲「しまった…。さてはそういう作戦だったのか!」


荘野「だから、そんなつもりないですって」


東雲「こうなれば……。女は度胸!いいでしょう。私の見届け依頼します!」


荘野「なぜこうも偉そうな……」


東雲「私の見届け依頼、お願いします」


荘野「より一層圧が…。はあ、わかりました。お受けします」


東雲「それで、何を見届けるんですか?」


荘野「そこは守秘義務なんで」


東雲「依頼したんだから教えてくれてもいいでしょ」


荘野「やだなー、ただのお茶目じゃないですか」


東雲「次はないですよ」


荘野「おっかない…」


東雲「早く教えてもらっても?」


荘野「車に乗ってそこを右折するだけです」


東雲「は?」


荘野「車に乗ってそこを右折するだけです」


東雲「いや、聞こえてはいるのよ。たったそれだけでいいの?」


荘野「それだけですよ。簡単でしょう?」


東雲「でも右折すると帰り道と逆…」


荘野「ちなみに、左折すると一生後悔することになります」


東雲「後悔!?」


荘野「はい。後悔します」


東雲「どんな?内容と度合いによるけど、できれば左折したいんだよね」


荘野「さあ?」


東雲「さあ?って、とぼけても……。この反応、本当に知らないな」


荘野「おっ、よくわかりましたね」


東雲「これだけやり取りしてたら嫌でもわかるようになるって…」


荘野「さっ、善は急げと言いますし、そろそろ出発されてはどうですか?」


東雲「………決めました」


荘野「そうですか。って、そっちは左ですよー?」


東雲「そりゃ、左折するんで」


荘野「本当にそっちでいいんですか?後悔しますよ?」


東雲「例え後悔しても、これでいいんです。私、レッドカーペットが敷かれた道より、獣道の方が好きですから。あと、後悔だって私だけの経験ですし、ほら、経験するのが仕事みたいなところもありますし。……なんだかんだ言いましたけど、私は小説家ですから」


荘野「…そうですか。いってらっしゃい」


東雲「それじゃあ、またどこかで」


荘野「……あーあ。また失敗したなあ。やっぱり向いてないのかなあ、この仕事。転職考えようかな…。ん?電話?」


東雲「もしもし?荘野さん?東雲です」


荘野「さっきの今でどうしたんですか?」


東雲「空見てください」


荘野「空?おお!雲が晴れてる」


東雲「月が綺麗ですね」


荘野「……虹のかかる夜ですよ」


どうも、新年が開けて2月になりましたね。どうもです。

でもって、初めましての人は初めまして。作者です。


さて、今年最初の作品なんですけど、今年も4本だせたらなーとか漠然と考えてます。

今年こそは男性演者を増やしたい(希望的観測)

最近は寒くなってきましたが、僕は利き手が霜焼けになって腫れました。手袋は大事ですね。

まだまだ暖かくしていきましょう。


ではまた次作でお会いしましょう。ノシ

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