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背水の桜  作者: 青黒緑
4/8

突然の雨


----------あの後結局、先生に後日にまた、提出をすると伝え教室に戻ってきた。教室では、体育終わりの男子が着替えている。僕が教室に入ると、おそらくクラスメイトであろう男子に話しかけられた。


「ねえねえ、もしかして里山さんと仲いいの?」


………まさか見られていたのか、あの現場を。不意打ちではあったが、僕は動揺をしない。


「いや、違うよ」


「あーそうなんだwwww」


そういうと、彼は男子生徒が数人集まっているところに行き、笑いながら話し始めた。

『別に仲良くないだってwww』『やっぱそうだろwwあんな奴が里山さんと仲いいわけねえだろwww』


『あんな奴』呼ばわりされたことは一度置いておいて、どうやら里山さんは、このクラスでは人気者のようだ。少なくとも男子には。


その後、着替え終わった女子が入ってきてまた別の授業が始まった。国語だっけな。



-----------------------------------------ホームルームが終わった。


クラスの人気者の里山さんが号令をしていた。終わった瞬間に教室を後にする。放課後にクラスの人気者里山さんとラインを交換する約束?そんな約束していったっけ。忘れた。


校門まで数メートルまでの距離まで来た、あと数メートルで学校という呪縛から解放される。それがただひたすらに、嬉しいのだ。


……だがしかし、後ろから走っている音が聞こえてきた。そして話しかけられた。嫌な予感しかしない。そしてその予想は的中する。


「大津くーん!!待ってーー!!」


………里山さんがわざわざ追いかけてきた。自分で言うのもなんだが、こんな約束をすぐに破る奴なんて放っておけばよいのに、追いかけてくるあたり、彼女が人気な理由がわかる。


「はあ…はあ………」


息切れまでして追いかけてきたのか。申し訳ない、とは決して思わないが案外彼女は、良い委員長になるのかもしれない。よく忘れ物をするみたいだが。


さて、ここで一つ問題があるとするならば、僕は彼女に何と話しかければよいのかだ。彼女は今、僕をわざわざ追いかけてくれたわけで、息切れを起こしている。そのため今は完全に、僕が話すターンとなっている。彼女との約束を破った僕はいったい何と話しかければ良いのだろうか。しかし、僕がこうして思考している間に、どうやら彼女の息が整ったようだ。


「………ウウウ……大津君ミーッケ…----------------------ゲッホゲッホゲホ!?」


まだ彼女の呼吸は整っていなかったらしい。今度こそ整え、彼女は話始める。


「大津君ひどくなーい!今帰ろうとしてたよね!約束は!!!」


「あー。ごめんごめん。いやーわすれていたよー」


活気のない声で、そして棒読みである。


「うっわー、絶対わざとじゃん!だから友達一人もいないんだよ」


相変わらず彼女はさらっとひどいことを言ってくる。全く否定はできないけど。


「てゆーかー、もういいからさっさとライン交換するよ」


そいえばそういう約束だったな。見つかったことだし、おとなしく交換するかな、とスマホをズボンのポケットから取り出した時だった。彼女に僕のスマートフォンを、ひょいと取り上げられたのだ。


「あ、ちょっ…」


やはり、高価なものともあってか他人に取り上げられるとなると、心配になってしまう。彼女に返すように言うも、『あと少しだから』となかなか返してくれない。だがしかし、ものの数分で『オッケーもういいよ』と言わんばかりに、すんなりと返してくれたのだ。


「ンフフフフ……。大津君じゃあ、スマホのラインのアプリ開いてみな~」


何やら得意げに、ニンマリと笑う彼女を横目に僕はラインのアプリを開く。するとそこには…というか、もし違っていたらさっきの時間なにやっていたんだよ、とツッコみたくなるがどうやら僕はそんなことはしなくて良いようだ。普通に、僕のラインに新しく里山さんのラインが追加されていた。これで、ラインの友達が人数が三人になった(正確に連絡を取れるという意味では()()だが)。


「じゃあ、僕はそろそろ帰らせてもらうね」


これで用もなくなったと思い、家に帰れると胸をなでおろしていたのも束の間。彼女はまだ話しかけてくる。いやでも、僕の足は進み続けているわけなので、彼女はわざわざ僕に付いてきながら話しかけているのだ。もう早くひとりにしてほしい。


「大津君はさー、どの辺に住んでいるのー」


なぜこうも彼女は語尾を伸ばすのだろう。仕方がない、このくらいの質問ぐらいは答えてあげよう。


「槻高駅の近くだよ」


「槻高駅の近くってことは、東二中学?」


「あーうん、そうだけど」


「あーやっぱり!私隣の瀬田中学だよ。」


「へー」


最初は質問を返すだけだと思っていたが、案外話し込んでしまったようだ。これも彼女の人気の秘訣なのだろうか。

あと一つ分かったことがあるとすれば、彼女は最初、僕にわざわざ遠回りをして付いてきているのだと思っていたが、どうやら、彼女も学校から歩いて通えるほどの距離に自宅があるらしい。(しかも、瀬田中学ともなればおそらく、僕よりも家と学校の距離が近いだろう)


ともあれ僕は今、里山さんと一緒に帰宅している。あまり彼女と帰宅していると思われたくないのだが(また、変に勘違いされる。ほかの人に)帰り道が同じともあれば仕方がない。


帰り始めて十分ほどだろうか、何やら雲行きがおかしくなり始めた。いやな予感がする。天気予報なんてもちろん見ていない。


「忘れてた!今日午後過ぎから大雨が降るんだった!!やばいよ、大津君」


彼女の言い方から、どうやらなかなかの大雨が降ると予想される……なんて考える必要もなかった。

まずは肩に一滴。次に頭に大粒が二滴。やばい、降り始めた。


「やばいよ、大津君!走ろう!!」


里山さんの掛け声と共に僕たちは走り始める。ただひたすらに。服が濡れることも気にならないぐらいに。いや正確には少し気にはなっていたが(透けていないかどうか)、今は走って大雨から逃れることが先だった。


「あそこに公園があるよ!行こ!」


と言い彼女と僕はよくある公園の屋根がついているベンチへと向かったのであった。



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