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背水の桜  作者: 青黒緑
2/8

翌日の朝


--------雀の鳴き声、カーテンの隙間から差し込まれる朝日。

誰もいないリビングでただ一人また同じ朝をむかえる。


「--------んんん……--------------」


さすがにもう背中の痛みもひいている。別に鍛えているわけではないが、上半身裸の状態で体をねじらせて全身鏡の前で直立する。そこに立っている高校生にもうすぐなる予定の男の姿をまじまじと見つめる。


「ああ………」


夢じゃなかったのか。本当に僕は昨日背中に入れたのか。改めて自らの目で鏡越しに自分の背中を確認する。カーテンの隙間から差し込む朝日が、丁度よく鏡の前に立っている自分を照らす。まるでスッポトライトのように。


満開の桜は相変わらず咲き誇っている。

ついでに寝ぐせもひどいことになっている。


なんて、回想に浸っている時間もない。なんせ、今日は僕がこれから通う予定の高校の入学式である。もちろん、今後学校指定のカッターシャツを着て登校する。生憎というか、何というか、カッターシャツの色はもはやどこの高校でも同じなのかもしれないが、白である。


--------満開の桜が透けてしまう。


まあ、こんな問題誰でも考えれば思いつくだろう。もちろん、当の本人の僕も、しっかりと厚手のシャツを買っておいた。おそらく透けないだろう、そう願う。


別に昨日の朝、二日前の朝、今まで過ごしてきた朝と何も変わらない朝の行動をとる。顔を洗う、歯を磨く、ひどい寝癖を直す。しかし、今までと異なっている部分があるとしたら、『挨拶』がなくなっている、そして『温かい朝ごはん』が出なくなっている。その程度だ。もう一か月経った。慣れた。


かれこれ、そんなモーニングルーティーンを過ごしていたら、もうそろそろ出発の時間である。ここで一つ運がよかったというか、僕の確認不足というか、まだ四月時点なので僕の通う予定の高校は、カッターシャツと一緒に買ったブレザーを着なければならない。透けそう問題は、もう少し暑くなってから考えよう。


僕のこれから通う予定の高校は、家から徒歩で行ける距離である。特にこの学校にどうしても行きたい、などという思いも無かった。なのでこの高校を選んだ。理由も家から近いからである。偏差値も五十より少し上程度。進学校というわけでもない、本当に全国に何万個もあるような、いわゆる普通の高校である。


学校の近くまで来ると、二年生、三年生の先輩方たちが、部活の勧誘をしている。もちろん、僕は何の部活にも入る気はない。どちらかというと僕は、アルバイトをしたいと思ってる。確か学校の許可がいるとかいないとか。そんなことを考えながら、校門をくぐる。『新入生はこっち!!』と書いたプラカードをご丁寧に持った先輩についていく。


ここから先は、まあ想像のとうり、普通の高校の普通の入学式である。その後、クラス発表を見たり、そのクラスで自己紹介をしたりと、もう特に覚えていない。何やらクラスのグループラインを作ろうなどと皆がラインを交換し始めたが、それをしり目にそそくさと教室を後にし、校門を抜けた。


別に楽しい高校生活を送ろうなどとも思わない。なんとなくだが、そう思ってしまった。もしかしたら僕は大切なものを失ってしまったのかもしれない。心は冷めきっている。


「あーーーーーーーーー」


めんどくさい。面倒くさい。思わず今な声が出る。何のために高校に通うのかと言われれば、皆通ってるからだ。別に大学に進学したいからなどとも思わない。そもそも、高校一年生で背中一面にタトゥーを入れたやつが、今後の事を考えているなんて貫かすな、と言われてもしょうがない。


まあ後悔はしてないんだけどね。


ともあれ、今日からもう僕は、本物の高校生となってしまった。何とか退学にならないように行動していこう。背中一面タトゥー男でも高卒資格ぐらいは、欲しいのである。


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