AMAZING LORD
僕等を乗せた光は、加速を続ける。
過ぎ去る景色の中、この人は話を続けた。
「じゃあ、夢を見たのはいつ?」
辺り一面は、宇宙の様な星空に覆われていた。
それはまるで、無限に広がるプラネタリウムの中にいる様だった。
「夢...いつだろう、考えた事ないな」
そう言って困る僕に、この人は微笑んだ。
「そうだろうね。でも、そんなもんさ。結局、夢だって、なんだって曖昧な物なんだから」
この人は僕の肩に手を置いた。
凄まじいスピードで進むこの光る乗り物は、まるでジェットコースターに乗っている様な感覚だ。僕は飛ばされない様に、必死にこの光る乗り物にしがみ付いた。風で髪が泳ぐ。
辺りをよく見ると、子供の頃に遊んだおもちゃや、ぬいぐるみ、テニスのラケット、その他にも見覚えのある物たちが、目まぐるしく通り過ぎていた。
事の速さについて行けず戸惑う僕とは違い、この人の瞳は、真っ直ぐ行先を見つめていた。その瞳には、光る幾千もの星が反射していた。
僕は聞いた
「君は夢を見ているの?」
するとこの人は、僕の肩をぎゅっと掴んで、にっこりと笑いながら答えた。
「ああ、夢を見ているんだよ、ずっと、長い夢を。でもそれは、決して考えた訳じゃないし、考えようとする物じゃ無い。今の君と違ってね。この景色と一緒だよ。ただ通り過ぎた身に覚えのあるいくつもの星が、僕たちの想いを形作って、それが夢になる。いつかの君と一緒さ。いつだったかなんて、きっとどうだっていいんだと思う。」
そう言うと、この人は、辺りを指差した。
僕がこの人の指す先を見つめると、そこにはバスケットボールやギター等、僕の知らない物が目まぐるしく通り過ぎていた。
「ほら、通り過ぎて行く物が全然違う。だから、これは僕の場合だ。そして、それは同じ様にここに居る君の場合だったかもしれない...だからそう言う事さ。ただ、僕たちはここに生まれて、ここで生きて、夢を見る。それだけなんだから。」
夢は、それだけなんだ。
たったそれだけで、でも、かけがえの無いそれ。人生の一生を費やしたり、何にも費やさずただ飾っていたり、何度も道を変えたり。
きっと僕も、僕以外も、様々に想いを馳せて行くんだ。
ああ、良い夢を見た。叶うなら覚めないでくれてもいい程だ。
風が気持ち良い。素晴らしい道だ。
起きたら、こんな風に名付けて、歌おう。