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蘇我氏の歴史です

蘇我氏は大和朝廷の実力者である。蘇我氏は大伴氏や物部氏、葛城氏ら有力豪族と比べると新興氏族であったが、財力を背景にして、政権中枢に入り込み、権力を握った。渡来人との結びつきを強め、朝廷の財政権を掌握し、外国に倣って政治機構を整える動きを積極的に進めた。


蘇我氏の祖は武内宿禰たけうちのすくねとされる。武内宿禰は神功皇后の新羅出兵などに尽力した功臣であったが、冤罪被害者であった。大王(応神天皇)は武内宿禰を百姓の監察に筑紫に派遣した。武内宿禰の不在時に弟の甘美内宿禰うましうちのすくねが兄を廃そうとして大王に虚偽告訴した。

「兄が筑紫と三韓を率いて天下を奪おうとしています」

大王は虚偽告訴を真に受けて武内宿禰を誅殺するため使いを出した。驚き嘆いた武内宿禰であったが、壱岐真根子という者が自ら進み出て身代わりとなって死んだ。武内宿禰は悲しみながらも大和に戻り、大王の前で甘美内宿禰と抗弁して争った。

判断がつかなかった大王は磯城川のほとりに出て盟神探湯くかたちで二人を戦わせることにした。これは熱湯に手を入れて火傷したら有罪という呪術裁判である。武内宿禰と甘美内宿禰は探湯瓮くかへという釜の前に立つ。大勢の人々が見守る中、釜には火がつけられ、熱湯が煮立つ。

斎戒沐浴さいかいもくよくを終えたなら、今が盟神探湯の時だ。火傷を負わぬ者が真実の言葉を持ち、名誉を取り戻す」

大王が宣言した。武内宿禰と甘美内宿禰が探湯瓮の前に立ち、手を熱湯に入れようとする。甘美内宿禰の顔には恐怖と焦りが見え、熱湯に手を入れる勇気を失いかけていた。武内宿禰は静かに熱湯に手を入れ、驚くべきことに火傷を負うことなく手を引き出した。一方、甘美内宿禰は恐れおののき、ためらいながら手を熱湯に入れようとするが、ついに躊躇し、後ずさりする。見守る群衆は息を飲み、武内宿禰の清廉さと真実の勝利を感じ取った。

「この探湯の結果により、武内宿禰の冤罪は晴れ、名誉が回復された」

大王の言葉に群衆からは拍手喝采が沸き起こり、武内宿禰の勝利が讃えられた。甘美内宿禰は恥ずかしげに頭を垂れ、虚偽告訴の罪で奴隷になった。


武内宿禰には多くの子がおり、その子ども達が大和朝廷を担う豪族の祖となった。

許勢小柄宿禰:巨勢氏

平群木菟宿禰:平群氏

紀角宿禰:紀氏

葛城襲津彦:葛城氏

蘇我石川宿禰:蘇我氏

しかし、武内宿禰は伝承上の人物であり、実在が疑われる。むしろ蘇我氏が後から系図を伝承上の人物に結び付けた可能性がある。武内宿禰は最初の大臣おおおみであった。大臣はかばねの一つであるおみの最有力者が就任する大和朝廷の重臣である。大臣を目指す氏族が権威付けのために自己の祖先を武内宿禰につなげる傾向があった。

武内宿禰の子孫を否定する立場では蘇我氏を葛城氏の傍流とする説と渡来人とする説がある。葛城氏傍流説は後に蘇我馬子が葛城を一族の土地として推古天皇に要求したり、蘇我葛城臣を自称したりしたことが根拠となる。この説では蘇我氏の出身地を大和の葛城とする。


渡来人説の根拠は以下である。

蘇我氏は東漢やまとのあや氏ら渡来人を組織化し、自身も海外の文物に親しんでいた。

蘇我氏には韓子や高麗という明らかに朝鮮半島を意味する名前がある。

蘇我氏は渡来人であるため、在地豪族のような先祖の祭祀がなく、仏教を受け入れた。


渡来人は中国大陸や朝鮮半島から渡来してきた人々を指す。かつては渡来人を帰化人という用語が使われている。しかし帰化人は王の徳を慕って来た人々という意味が込められている。渡来人には本国での戦争や政変を逃れてきた難民も少なくないが、倭国王の徳を慕ってきたわけではない。逆に先進技術を有する渡来人は後進の倭国では重宝された。帰化人という用語は実態にそぐわない。


系図では武内宿禰の子の蘇我石川宿禰そがのいしかわのすくねが蘇我氏の初代となる。この石川宿禰は実在を否定する説と肯定する説がある。

肯定説では河内の石川が蘇我氏の出身地となる。肯定説の渡来人説は百済の王族の昆支王こんきおうを石川宿禰とする。蘇我氏は東漢やまとのあや氏ら渡来人の主君のようにふるまったが、それは王族だから可能だったと説明がつく。

否定説は後の蘇我宗本家滅亡後に蘇我氏の中心となった蘇我倉山田石川麻呂らが自分達を最初から本流であると示すための作出とする。



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