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聖徳太子の聡明さを横取りしました

一日の中で一番幸せを感じる時間は睡眠中である。だからできるだけ寝ていたい。人生の三分の一は布団の中とも言う。眠りにはこだわりたいものである。完全に寝ている時は意識がないために幸せを感じようもない。夢はあまり見ない。見るとしても日常生活の夢を見る。半分寝て半分起きている状態、ウトウトしている状態がとても幸せである。


目が覚めて、それでも布団にくるまったまま動かず、何時の間にか意識が遠のき眠ってしまう。そのようなサイクルを繰り返したい。布団の温もりの中に全身を深々と沈めていたい。寝ている時間は何もしない時間だから勿体ないという意見がある。しかし、それを味わうことが快楽であり、快楽は長く味わいたい。


眠ることは好きならば早寝と思われがちだが、それは異なる。確かに昔は早寝だった。しかし一日の仕事から疲れて帰り、その状態で寝てしまうことが嫌だった。仕事だけで一日が終わってしまう感じがしたためである。元々、寝つきはいい方ではない。そのため、眠りに落ちる前に布団の中であれこれ考えてしまう。その空想の時間が楽しいこともある。


その一方で暗闇から日々の悩みや心配事が押し寄せ、押し潰されそうになることがある。追い詰められた手負いの獣のように、見えない影に脅えていた。あれこれ考えているうちに悔しくて全身の血が燃え上がり、焦る気持ちが空回りを始めることもあった。


肉体的には帰宅するとまずお風呂に入り、俗世の塵を洗い落とした。そうしなければ不潔感を拭い去ることができなかった。精神的にも同じような処理が必要だった。私にとって、それは音楽や小説、漫画、テレビ、ビデオ、ラジオだった。


現実逃避かもしれないが、数時間でも日々の生活以外のものに没頭する必要があった。それによって初めて暗闇を受け入れることができた。そのために夜更かしすることも多く、一層早起きできなくなる悪循環に陥っている。


そのような生活を送る中で、ある日、目覚めたら、真っ白な空間にいた。見渡す限り、真っ白である。頭の中で声が響いた。「あなたの二一世紀の人生は終わりました。これから飛鳥時代の蘇我善徳ぜんとこに転生してもらいます」


「ラノベなどでよくある転生ですか」

「そうです」

「ファンタジー世界ではなく、過去の歴史への転生ですか」

「はい」

「蘇我善徳は誰ですか」

「蘇我馬子と物部鎌姫大刀自連公の長男です。敏達九年(五八〇年)生まれです」

「蘇我馬子の息子。蝦夷ではないのですか」

「蝦夷は弟です」


善徳は何をした人だろうか。日本史の授業では登場しなかった。早世してしまった人物なのだろうか。

「善徳の幼児の時に転生してもらいます」

その声を最後に真っ白な空間は真っ黒になり、気が付いたら、幼児になっていた。


幼児に転生したため、体は子ども、頭脳は大人状態で善徳は早熟な天才児と受け止められた。この時代の早熟な天才と言えば厩戸皇子(聖徳太子)がいる。この世界にも用明天皇と穴穂部間人皇女との間に厩戸皇子がいる。敏達三年(五七四年)生まれであり、善徳よりも年長である。多数存在する皇子の一人であり、聡明であるという話はない。この世界では早熟や聡明は善徳の評になっていた。


●参考文献

川勝守『聖徳太子と東アジア世界』吉川弘文館、2002年

上原和『斑鳩の白い道のうえに』朝日新聞社、1978年

梅原猛『聖徳太子(上)(下)』小学館、1989年

門脇禎二『蘇我蝦夷・入鹿』吉川弘文館、1977年

門脇禎二「聖徳太子は大王ではなかったか」中央公論・歴史と人物1979年12月号

坂本太郎『聖徳太子』吉川弘文館、1979年

関裕二『聖徳太子は蘇我入鹿である』フットワーク出版社、1991年

関祐二『聖徳太子はだれに殺されたのか』学習研究社、1993年

高野勉『聖徳太子暗殺論-農耕民族と騎馬民族の相克-』光風社出版、1985年

田村圓澄『聖徳太子-斑鳩宮の争い-』中公新書、1964年

吉村武彦『古代天皇の誕生』角川書店、1998年

吉留路樹『倭国ここに在り』葦書房、1991年


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