第8話 帰還
こんにちは、今回は王子帰還です。双子に振り回される王子です。よろしくおねがいします。
「ついっ…むぐ?!」
「しっ!」
急に王子はウィルに抱き寄せられ、何故か口を塞がれた。
「おい、いたか?」
「いや、そっちは?」
「いないみたいだ。」
かと思うとやっとたどり着いた事で安堵する二人の耳に王子を追う追手の声が聞こえたのだ。
「こっち!」
「なっ?!」
ウィルに手を引かれながら船着き場の貿易倉庫へと入る。ウィルは何やら倉庫内を漁り始めた。
「おい、何してる?」
「借りるの!」
「は?王子たる俺が盗みなど…」
「だから借りるの!」
「いや、しかし勝手に……」
「はい!これ着て!」
「なっ?!」
ウィルから手渡されたのは女物の服だった。
「王子たる俺が、こんな女物着れるわけ…」
「いいから!着て!」
「む……。」
仕方なく王子が着替え始めるとウィルは外の様子を伺いながら王子が着替えるのを待った。
★★★★★★
「もういいぞ。」
「……!?」
「どうした?」
「いや、似合ってるなぁ…て。かわいいよ。」
「かわっ?!」
その言葉に王子はショックを受けててその場に項垂れて四つん這いになってしまった。
「え?せっかく誉めたのに…」
「この俺にかわいいだと?!ふざけるなっ!!かっこいいの間違いだろ!!」
「しぃ~!声が大きいよ!静かにして!バレたいの?」
「むむぅ…」
ウィルの注意で渋々王子は静かになった。
「服は鞄に入れとくから。あと、この剣は足につけとくね。」
そう言うとウィルはスカートに潜り込み、王子の足に剣を括りつけた。
「何故庇う…?」
「君の首はボクが取りたいから。」
「なるほど。」
ウィルは倉庫の外を伺う。
「いなくなった!いくよ!」
「は?!」
ウィルに手を再び引かれて外へと出る。だが、
「おい!ウィルじゃねぇか!それ彼女か?」
「は?彼女じゃないよ?」
「俺達が仕事で必死こいて王子を探してるってのにお前はナンパかよ!」
「だから、……」
「にしても美人だな。もっと顔よく見せてくれよ!」
ウィルの同僚がレェーネの顔をよく見ようと帽子を払い退けようとした。
「!!」
ぎゅっ
「?!?!」
突然の危機にレェーネは思わずウィルの腕にしがみついていた。驚きながらも、ウィルは機転を効かせる。
「嫌だって!彼女人見知りが激しいみたい。」
「なんだよ!やっぱり彼女なんじゃねぇか!けっ!」
「ほらほら、早く王子を探しに戻った方がいいよぉ?君達もさっさと仕事終わらせて遊べばいいじゃん?」
「へいへい、わかってますよぉ!」
「じゃあねぇ!」
ウィルに促され、ふてくされながらも追手は王子捜索へと戻っていった。二人の姿が見えなくなる。
「おい!お前俺を売るつもりだっただろう!!何がいなくなっただ!!」
「やだなぁ~、ボク達敵通しぃ。売るなんて人聞きの悪い事言わないでよねぇ~?」
と、言いながらも、実はウィルも去ったと思ったら戻ってきたのでウィルに非はない。
「それよりさっさと追手のいないとこにいこ!」
「うわぁ!?」
王子はウィルに引っ張り回されてばかりである。追手がいない街中まで来た時、ふいに王子が手を放した。。
「ここでいい!」
「そ?じゃあ……今度会うときは…」
ウィルがそこまでいっただけで王子はその先を察した。
「ふっ!よかろう!今度会うときは貴様と決着をつけてやる!!覚悟しておけ!!」
「了解、じゃ、またね。」
そう言うとウィルは建物の影に消えていった。王子はドレス姿で馴れない格好で街中を練り歩く。しかし、いつの間にかまた道に迷ってしまったらしい。
「しまった…どうすれば…」
「……ん!……」
気付くと遠くの方から何やら聞き覚えのある声が聞こえてきた。
「む?」
「レ………ネ…ん!」
「この声は?!」
声の方へと走っていく。すると、そこには先程まで一緒にいた少年と同じ顔があった。思わず王子は少年へと飛びついた。帽子は勢いで地面へと落ちる。
「ウィリ!!」
「レェーネちゃん!!」
幸運なことにレェーネを探すウィリと偶然にも出会えたのだ。
「レェーネちゃん!良かった!!」
ウィリはレェーネが戻って来た安堵から涙を溢しながらレェーネを抱き締める。
「ウィリ…」
自分を迎えに来てくれたウィリの優しさがレェーネに伝えわり、温かい気持ちになった。レェーネもウィリを優しく抱き締め返していた。
「レェーネちゃん、心配したんだよ?」
「すまん…」
泣き止まないウィリの背中を王子は擦る。
「もう、絶対放さないから…」
そう言ったウィリは強く王子を抱き締めた。
「ウィリ?」
いつもと様子の違う幼馴染みにレェーネは戸惑いを感じた。
ウィリのもう絶対放さないからを挿し絵ではもう放さないからになってます。たぶんウィリのセリフで王子にとって印象に残ったのが挿し絵のセリフで実際に言ったのは絶対に放さないからと、ちょっとミスを言い訳します。( ̄▽ ̄;)気が向いたら訂正するかもです。これはこれで意味があって良きな気もしますので、できれば直さない方向性でいきたいです。