第4話 友の死
こんにちは(。・ω・)ノ
今回はイラスト多めです。
クーデターにより城を追われた王子、そんな王子達は拠点となる宿を手に入れる。しかし、王子は反乱軍に命を狙われているにも関わらずやりたい放題。森で迷った挙げ句追手と遭遇、そして何とか撃破したのだが……?!
「はははははっ!今日も探索にでるぞ!」
朝、機嫌よく笑う笑い声が室内に響き渡る。二人は深いため息をついた後、息を揃えてこう言った。
「「却下!」です!」
「何故だ?!」
「昨日どれだけ苦労して帰ったか、忘れたの?!」
「王子、私は王子の忠実なる臣下ですが、王子が過ちを冒そうと言うならば止める権利があります。」
二人の反論の猛攻に王子は少し腕を組み、考えた。そう、昨日は森で迷い、苦労して暗い森の中通った足跡を追い、拠点たる宿に帰るのにやっとの思いで深夜帰宅したのだった。
「だが、ここにいるだけでは何の情報も手に入らん、ただ待つつもりはない。」
その答えにフィルシュの顔は曇った。
「確かに、そうですが……」
「だが、そうだな、闇雲に動いて奴らに居場所を知られる訳にもいくまい、少し考える。」
「はっ!」
「ん?あれ…?大佐その髪…」
ウィリがふとフィルシュの方を見て気づいた。ポニーテールになっているのだ。フィルシュは黒髪のロングヘヤーの姿が似合う綺麗な顔立ちをしている。昨日まではロングヘヤーだったフィルシュが何故ポニーテールにしたのか気になったのだ。
「あ、ああ、これは……」
照れくさそうにフィルシュは自分の黒髪に触れる。するとベットの上に座っている王子が笑いながら機嫌よさげに言った。
「俺が結んだんだ!」
「え?!レェーネちゃんが?!」
「俺とお揃いにしてみたんだ!なかなか似合っているだろ?」
そう、王子レェーネはその蒼い長い髪をポニーテールにしているのだ。そしてフィルシュとお揃いにしたと言う言葉に、ウィリは怪訝そうな表情をする。
「ありがとうございます。王子。」
「うむ、うむ。」
ウィリはフィルシュと王子が仲よくしているのが気にくわないようでその顔は曇り、眼は冷ややかになっていた。ウィリは痛む胸を押さえながらどうすれば彼女を振り向かせられるかと考えた刹那、
「ウィリ。」
ぐいっ
「!?!?」
王子に手を引かれ、王子にのし掛かるように膝の上に招かれる。
「レ、レェーネちゃん?!?!」
突然の事に頭が追いつかずに赤面し、口をパクパク言わせているウィリの耳元で王子は囁くのだった。それはウィリが期待する甘い言葉ではなかった。それを聞いたウィリは血の気が引き、青ざめる。
「レ、レェーネちゃん…」
王子は言い終えるとそっと手をほどいた。ウィリは青ざめたまま部屋の外へとふらふらと出ていってしまった。それを見たフィルシュはその後を追おうとする。が、その前に王子が立ちはだかった。
「フィルシュ、その殺気を押さえてはくれないか?」
フィルシュの手は剣の柄に置かれていた。
「…そこを退いては頂けませんか?王子?」
「生憎だが、それは出来ない。しかし、驚いた、口読術が出来るのだな。」
「王子、失礼とわかっていたのですが、癖で読んでしまいました。王子、先程のお言葉はやはり…」
「何故気づいた?」
「ウィリを昨日森で追っていた時、鳥が翔んでいるのが見えました。そして、それは王子の命ではなかった、つまり……」
フィルシュがいい淀むと王子は真剣な眼差しでフィルシュを見つめた。
「ウィリを信じてやってはくれないか?」
王子はそっと、刀の柄にあるフィルシュの手に触れる。
「頼む。」
「………しかし、」
ガチャ
扉が開き、ふいにウィリが戻ってきた。
「あれ?二人ともどうしたの?」
「お前こそ、どこにいっていた?」
「え、ちょっと、外の空気吸うついでに見回りに……それより、昨日の森に行ってみない?」
「「っ?!」」
昨日散々迷った森、行きたくないと先程言っていた。
「何を企んでいるっ?!」
フィルシュの鋭い視線がウィリに突き刺さる。
「え?!」
「フィルシュ」
恐怖で怯えるウィリの前に王子は立ち、右腕を横に広げてウィリを庇う仕草をする。
「王子、そこを退いてください!今すぐ私がっ!」
「私がなんだ?」
「私がその者をっ!」
「待てと言っているだろう!!俺の“友”だ!」
そう、ウィリは王子にとっての唯一無二の友達なのである。その友を失うわけにはいかないと王子は引き下がらない。
「しかしっ!」
「頼むっ!!」
王子のウィリを擁護する懸命な姿に負けたフィルシュ、
「……承知しました。」
渋々引き下がるフィルシュはまだ納得がいっていない。
「ありがとう」
そんなフィルシュに王子は優しく微笑んだ。そしてウィリに眼を移す。もちろん、フィルシュを警戒しながらだ。
「ウィリ、先程は行きたくないと言っていたのに急にどうしたのだ?」
「え、ええと、なんか行ってみたくなっちゃって…ははっ」
「では行くか!」
「王子?!?!」
その決定にフィルシュは全く賛同出来ずに仰天する。
「フィルシュ、黙ってついてこい。問題ない。何とかする。」
(さて、何が待っているのやら……)
王子はむしろこれから興るのことに心踊らせていた。そう、進まずには何の変化も得られない。ならばいっそ……。
★★★★★★★★★
昼間だと言うのに木々が生い茂る森の中は薄暗く不気味な雰囲気を醸し出していた。
「ここは昨日追手と出会った当たりではないか…ここに一体…っ?!」
刹那、王子は剣をウィリの方へと振るう。
カキンッ
クナイが地面に叩き落とされた。
かと思うと王子の背後に影が迫る。
「しまっ?!!?」
迫る斬撃を何とか間一髪で受け流すもその攻撃の主の狙いは別だったのだ。
「うわっ!?」
「ウィリ!!」
ウィリは黒いローブを纏った大鎌を持つソレに引っ張られ、あっという間に木の上へと連れ去られる。
「待て!!降りて来ぬかっ!卑怯者めがっ!」
樹の下では王子がブンブンと剣を振り回し怒りに震えていた。そんな王子には眼もくれずに、仮面をつけたローブの刺客はウィリを連れ去り、そのまま木々の枝を枝から枝へ点々と移動し去っていく。
「待てっ!ウィリをどうするつもりだ!!??」
「王子!」
見ているしかできなかったフィルシュがウィリ達が去って行くのをみて王子へ指示を仰ぐ。
「くっ、追うぞっ!」
「はっ!」
★★★★★★★★
「いたかっ?!」
「いえ、どこにも……」
ざわっ
生ぬるい風が森の中を通り抜ける。微かに鉄の匂いがした。
「こっちだ!」
「はいっ!」
その方角へと歩みを進めると、そこにあったのは……
「ウィ、リ……?」
カー、カー、と烏の鳴き声が森中に響き渡る。
そこにあったのは幾つもの杭が突き刺さっている“モノ”だった。
辺りは一面深紅のカーペットと化している。杭は顔の原形すらわからなくなる程に多く突き刺さり、美しい金髪は赤黒く光っている。王子は“ソレ”に近づき、そして、静かに笑みを浮かべるのだった。
★★★★★★★
「王子、ここにいらしたのですね?!探しました!」
「ああ、すまんな、少々考えごとをしていた。」
王子は刺客にウィリが連れ去られた場所まで一人で戻っていた。フィルシュはそんな王子を一度見失い、再び発見したのだ。
「王子、この度は誠に残念でした。お悔やみ申しあげ……」
「ははははっ」
「王子?」
突然笑い出す王子にフィルシュは、友の死によって気を病まれたのかと心配になった。
「はははははっ!いや、フィルシュ、すまんな!」
「王子!どうか、しっかりしてください!ウィリの事はどうかお気を病まないでください!!」
「フィルシュ!俺は気を病んでなどいない!」
「?!?!」
フィルシュはその王子の発言に驚くと共に突然、笑い出した事が理解できない。
「騙されるなっ!忠犬!」
「だま、される…?」
「ウィリは、」
風が吹き、雲を散らす。月明かりが森を照らす。王子達と離れた場所の木々の影にて一人のローブの少年が仮面を外す。
「“生きている”!!」
ニタリと笑う少年の顔、“ソレ”は王子達の前から消えた筈の少年の“モノ”である。
おまけ
評価、感想お待ちしてます。