第21話「西の城」
敵兵に追われるレェーネとフィルシュは森の西側へと向かっていた。
「王子!この辺りは?!」
「ここはレファルト伯爵領!アイツならこの状況でも力をかす!」
森の西へ向かうとレファルト公爵の居城が見えてきた。レェーネとフィルシュは城壁をこえた。
「おーい!レファルト!」
ばんっ!王子は扉を蹴飛ばして城内へと入る。
「あ、あ!?お、王子?」
使用人が顔を真っ青にした。
「レファルトに会いたい!呼んでくれますか?レディ?」
「は、はい!もちろんでございます!」
使用人は慌てて城の奥へと入ってゆく。しばらくして気だるげな長髪の男が現れた。
「ちょっと、王子、今回もやりすぎでしょ?扉直すのただじゃないんだよ?」
「レファルト!事情は分かっているな?!」
「とりあえず、奥へ。」
レファルトに促されて城の奥へと行く。
応接間に案内された。
「要件は1つだ!俺をかくまえ!」
「事情は把握してますよ?大臣から王子討伐命令がでてますからね。」
「王子討伐命令?!」
「やはりか」
「ええ、王印での勅書です。これに逆らう事は死を意味する。」
「レファルト、お前俺を売ろうと言うのか?お前この俺に恩があるのを忘れたか?お前の父、ファレス公爵が伯爵から公爵になれたのは誰のお陰だったか、忘れたとは言わせんぞ?」
「うーん、でもですね。王子ー、勅書は絶対です。」
「ほう?なら俺が勝ったあかつきにはお前の公爵の地位、剥奪してもいいと言うのだな?」
「そ、それは……」
「お前、王城に住みたがっていたな。俺につけば、王城での生活を許してやらなくもないぞ?」
「っ!!それは!!」
「どうする?」
「はあ、王子には負けますね。わかりました。王子に付きます。」
そう言うとレファルトは勅書を暖炉でもやした。
「では、早速、作戦かいっ…ぐっ!?」
「王子、無理は良くないです。すぐに王子が休める場所を手配してくれ!レファルト公爵!」
「ほー、なるほど、そう言う事情ですか。わかりました。すぐに用意します。君、空いている部屋へ王子を案内しなさい。」
「はい。」
使用人に案内されて部屋へとゆく。そこで王子は横になった。幸い、傷口は開かなかったが、それでも激痛が走る。王子は安堵して眠りにつくのだった。
☆☆☆☆☆
王城にて、
「王子捕獲に失敗とは、貴様達、今度失敗したらどうなるか分かっているのだろうな?」
大臣は部下達を叱責していた。
「西の城のレファルト公爵からは連絡の返事はない。王子側に付いたと考えるべきだろう。よって、明日、城への攻撃を開始する!皆、尽力をつくすように!」
大臣の話しがおわると周りはざわめいた。
「にーさん。」
「?!」
ウィルはウィリへと声をかけていた。
「な、なに?!」
「兄さんは正しかったね!あんな王子に付いたって勝ち目なんてないもんね!」
「……。」
「で、なんで裏切ったの?」
「……ウィルには関係ないよ。」
ウィリはウィルを避けるようにそそくさと行ってしまった。ウィルも完全に許された訳ではなく、王子のねぐらを襲撃したが、結果をだせなかった事で監視がつくようになっていた。夜、皆が寝静まったあと、少年はあるものを探す為、大臣の部屋へと急ぐ。監視も今は寝ていた。
「さて、とっ!」
少年が暗闇の中大臣の部屋へと辿りつく。そこらじゅうを物色し始めた。
「ここも、そっちもない……どこ」
「へっへっへっ!やっぱりな、お前はまた裏切ると思っていた。」
「っ!?誰?」
月明かりが相手を照らす。
「誰?だと?!いつもお前と1、2を争っているヤンだよ!」
「……へ?誰?」
「なんで覚えてねえんだ!?」
「ボク興味ない人とかすぐ忘れるから……」
「ちっ、ふざけやがって!」
ヤンは剣を構える。ウィルへと斬りかかった。ウィルは避ける。
「へへ、この狭い部屋じゃ、お得意の大鎌はつかえねーだろー!」
相手の言う通り鎌が使えない。ウィルは手持ちの剣で相手に応戦する。
「慣れねえ武器で死んじまえよ!!」
相手の猛攻が襲い来る。
「王子側になんでつくんだ?」
「さぁ?」
「あの王子、女だって噂があるんだが?まさか、情にほだされたか?」
「へー?そんなウソっぱち…」
相手の猛攻を避けながらウィルも攻撃の機会を待つ。
「もし、女だったら俺が勝ったあかつきには抱いてみてぇーなぁ。けっけっ。」
「は?」
ウィルはブチ切れた。
がっ。ウィルへとふり落とされた剣をウィルは受け止める。
「へっ!このマグレが!」
「君は分かってないよ!」
ウィルが相手へと切りかかる。だが、避けられて、ウィルは腹部を蹴り飛ばされ、棚にぶつかった。
「ぐっ!」
「へへっ!ここで死ね!!」
ザシュッ。
「ボクって天才だから!」
切られたのはヤンのほうだった。
「な、なん、で……」
「大体の武器は使えるように練習してるし。」
ヤンはその場に倒れた。
「王子は君なんかが触れていいものじゃないんだよ。」
棚から身を起こそうとした、その時、
「さてと、早く探して戻っ」
ウィルの頭上から何かが落ちる。
「とっ、あった!これで!」
それをウィルはポケットにいれる。そして死体を片付けた。
読了ありがとうございます。
少しでも面白いと思っていただけたら『ブックマーク』と、評価の【☆☆☆☆☆】を【★★★★★】にしていただけると嬉しいです。
今後ともよろしくお願いします。




