第20話「西へ」
「ウィル……」
レェーネは動かない身体を無理に動かそうとする。そこにフィルシュが現れる。
「王子っ!まだ安静にっ!」
「ウィルは?どこに?」
「さっき見回りに……!?」
「そうか、ヤツめ。裏切ったか!ぅう」
「許さん!王子、私があの者をっ!」
「否、今の俺の状況を見ればどちらにつくかなど明白だろう。俺はアイツを責めない。ただ、アイツの首はこの俺がとる!けじめはつけさせっ!ぐっ」
「王子、休んでください!」
「うっ!くそっ!」
☆☆☆☆
その頃王城はざわめいていた。
「おい、アイツ!」
「なんで?!」
「寝返ったんじゃ?」
「よくもぬけぬけと顔を見せれたな!ウィル!」
大臣の叱責を受けたのはウィルだった。
「いやだなぁ、アレは王子を油断させる演技ですよ。」
「ほう?こちらの兵が数人減ったが?」
「騙すなら味方からって言うじゃないですかー。」
「まあ、いい。ただで戻って来たわけではあるまいな。」
「はい。」
笑顔でウィルは答える。
「王子の秘密、お教えします!」
ウィルはニタリと笑みを浮かべた。
☆☆☆☆☆
王子はいつもの軍服に着替え剣を携えていた。
「フィルシュ、ここから離れるぞ!」
「え?」
「俺の予想が正しければもうすぐっ!」
ザッザッザッ
「ん?なんの音だ!?」
「きたか…」
フィルシュが窓の外を見ると外には旅館へと向かってくる兵達がいた。
「ウィルが大臣側に戻るにはそれなりの対価が必要となるっ!うっ!つまりあいつは……」
☆☆☆☆☆
時は戻って昨日の王城にて、
「王子の秘密だと?なんだ?」
「はい、王子の兵力はフィルシュ大佐のみ、そして、王子は怪我をしている。今なら王子を捕まえる事もできる。」
「ほう、そうだな。ウィリの報告はいつも空振りが多かったが……」
「ボクについてきてください。王子の居場所をお教えしますよ。」
ウィルは王子の居場所を話した。
☆☆☆☆☆☆☆
「くっ!」
「王子!無理をされては!」
「うるさい!ここで死ぬ訳には、っ!」
「そーそ、早く逃げた方がいーよ!」
「「なっ?!」」
窓に逆さにぶら下がったウィルがそう言う。
「貴様っ!」
王子はウィルに斬りかかった。
「おっと、危ない危ない!」
そう言いながら起き上がってかわした。
「貴様だけは俺が殺す!!」
「おぉーこわっ!」
「王子、それより早く撤退をっ!」
「くっ!」
王子は仕方なく、フィルシュの言うとおりに避難する。それをウィルが追ってくる。
「今度こそ、その首、もらうからね♡」
追撃をフィルシュが殿を務めてなんとかする。
「大佐君、邪魔だなぁ!」
「裏切りものがっ!」
「だって、ボクだって死にたくないしぃ?」
旅館からでると森の方へと逃げてゆく。ウィルの追撃をなんとか退けて森に敵をさそいこみ、迷わせた。
「王子、これからどうします?このままでは……」
「西を目指す!」
「西?」
「そこにツテがある!」
王子達は兵となるべく会わないように西へと向かうのだった。
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