第15話 戸惑う心
ナイフを突き立てる……
ことは出来なかった。
まあ、いつでも殺せるし、今日じゃなくてもいいかな。そう思い、ナイフをしまい、レェーネとは逆向きに眠るのだった。レェーネの目が静かに開く。
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翌朝、王子は再び追っ手のいる場所へと向かう。そこで戦闘を行うのだった。
ウィルとレェーネはあっという間に追ってを切り刻む。
「ウィル後ろ任せた!」
「了解っ!」
そうして全ての追っ手を倒す。
「うむ!皆ご苦労!」
「まあ、ボクは天才だから当然だけどねー」
「王子にお怪我がなくてなによりです。」
「ウィル、よくやったな!」
「え……う、うん。まぁね。」
唐突に褒められて戸惑うウィルだが直ぐにいつもの調子にもどった。
数日が経ち、再びウィルの見張りの時が来る。無防備にすぅすぅと寝息を立てて寝ている彼女を見る。
「今日、こそ……」
ウィルは短剣を懐から出そうとする。
「すぅ……すぅ……」
ここで、死んでもらっ……。
そう思った時、戦闘について彼女に褒められた事が頭を過ぎる。
「………………。」
今度、今度こそは、だから今日は、今日は眠ろう。
ウィルはそうして暗殺の機会がありながら、先延ばしにする。静かに、彼女の隣で眠るのだった。そんな日が続いたある日、遂に事が動く。いつも隠れて受け取っていた伝書鳩の手紙が来た。
定期報告か……。そして中身を開ける。そこには、早く王子を殺して首を持ってくるようにと書いてあった。
「はぁ……。やるしかないか。」
遂にウィルは決意する。その夜の事、再びウィルが中の見張りの日になった。
「ねー。レェーネ。」
「ん?なんだ?」
機嫌を伺うようにウィルはレェーネに抱きついて声をかける。
「1つお願いがあるんだけど……。」
「うむ。」
「明日、”武器を持たず”に森の近くで”2人”で会いたいんだけど、どうかな?たまには戦いを忘れて2人で遊びに行きたいなぁなんて……へへ。」
「ほう、そうか。わかった。」
「必ず1人できてね!」
笑顔でにこにこしてそう言うウィル。そんなウィルの言う事に頷くレェーネ。そして、明日が来る。待ち合わせの場所にいち早くいたのはウィルだった。
……あれだけ怪しく言ったら来るわけないよね。来ないでほしい。来るわけがない。
ウィルは、少し、レェーネとの日々を楽しいと感じてしまっていた。そんなレェーネを殺す事に躊躇いを感じてしまっていたのだ。
来るわけ……。
振り返る。そこには…………。




