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蒼騎士王子と囚われの国  作者: ユキア
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第12話 運命の決戦



次の日、王子は1人、森へと向かう。何故かと言えばこれしかない。


「さぁ、決着の時だ!出てくるがいい!どうせいるのだろ!?」



「はいはい、そんな大声出さなくてもきこえてまーすよ。」


茂みからひょっこり顔を出したのは待ち望んだ彼である。


「ウィル」


「よく来たね、王子様ひとり……?」


「レェーネちゃん!!はあ、はあ、やっと追いついた…」


「あーら、ら。兄さんまで……あと、余計なおじゃま虫1人かな?」


「王子!ここは私がっ!」


「いや、ここは俺に任せてくれ。こいつとの決戦を俺は待ち望んでいたのだからな!」



「…はっ!承知しました!」


「レェーネちゃん……」


ウィリは複雑な心境だった。この勝負どちらかが勝っても、片方は死んでしまう。大切な恋人か、たった1人の弟か、どちらかが消えるのだ。


2人が武器を構える。


「じゃ、そーゆー事で、」


「うむ。」


2人が同時に相手に向かって動きだす。ウィルは大鎌を右に振りかざし、王子は剣を1本振りかざす。2人の軌道が重なってガキンッガキンッと音をたててぶつかり合う。大鎌に気を取られている王子にクナイをウィルが左手でなげる。それを避ける王子。


「ねぇ、本気じゃないでしょ?それ。」


「ふっ、抜かせるかこの俺に2本目をっ!!」


王子が2本目を抜く、さっきとは違い殺気がまして周りにいた者は全てその殺気に身震いをした。


「へー、面白そうだね。それ。」


「笑ってられるのも今のうちだぞ!」



2人は再び鎌と剣を振りかざす。ウィルはクナイをみぎに投げ、さらにナイフも上になげる。そして王子に上と右のクナイ、左手の鎌が遅いかかる。しかし、間一髪で後ろへ飛んだ。しかし、後ろからもナイフが飛んでくる。二刀の剣でそれ等を薙ぎ払う。その剣技は速すぎてウィリには見えない。


「レェーネちゃん!」


「王子……」


両者の力はほぼ互角。しかし、僅かにウィルが勝る。


「ふんっ!やはり俺の眼は節穴ではなかったか…」


「本当に強いね。でも、ボクは天才だからね。その首、ボクが貰うっ!!」


大鎌に気を取られるとクナイとナイフに襲いかかられる。二刀の剣でそれをなぎ払い避ける。



「ボクは兄さんとは違う!甘くみないでよね!」


「ほう?」


上をクナイ、下から大鎌で攻められる。それを王子は回転しながら鎌に剣を反らせて飛び越えて避ける。


「ウィリとは違う、か。」


「当然だよ!ボクは天才(・・)だからね!」


天才、確かにその通りである。天才的な武器使い、そして身のこなし、全てがそれを証明していた。ウィルは天才であると。



「顔はそっくりでも中身は別なんだな。」


2つの剣を駆使してなんとか攻撃を避ける王子。


「君なんかにはわからないよ!表側にいる人間なんかに影にいるボクの気持ちは!!」


激戦が続く中、ウィルは王子にウィリと比べられ、気持ちが熱くなる。


「ああ、わからんな。」


「ふんっ!ボクは天才なんだ!」


「惜しいな。これ程の実力を持っていながら裏方とは……」


2人の剣戟は速さをどんどん増してゆく。王子も逃げるだけではないがあまり攻めてはいかない。


「そう、ボクは︎︎ ︎︎ ︎︎︎︎ ︎︎ ︎︎"︎︎兄さんなんか”とは違う!」


「俺にお前の気持ちはわからぬ。だが……」


そうして王子はニヤリと笑った。刹那、ウィルの大鎌が天を舞う。慌てて鎌を後ろにジャンプして取りに行こうとするが、王子の剣に阻まれた。王子は一瞬のすきをみてたたみかけたのだ。


「はは、ボクの、負け、か。」


ウィルはその場に崩れ落ちた。


「いいよ。斬りなよ。覚悟は出来てる。」


「ああ、お前の命は俺のものだ!!」


ガキンッ



「ウィル!!」


ウィリの叫びは届く事なく、剣は鈍い音をたてて鞘に収まった。


「「「?!」」」


その場にいる王子以外の全員が戦慄する。


「お前はここで死んだ。お前の命は俺のものだ!故に、」


差し伸べられる温かな手を彼は仰ぎ見る。


挿絵(By みてみん)


「俺と共にこい!!お前を光にしてやろう!!」


「なっ……」


驚きを隠せない一同、しかし、その手をウィルはとった。


「……いいよ。ボクの命は君のものだ。君の臣下になる!」


こうして、ウィルは王子達と行動を共にすることになった。


「よろしく、王子様。」


そう和やかに笑い立って手を握るウィルをフィルシュが制した。


「王子、しかし、こいつは敵……」」


「フィルシュ、これは俺の決定だ。意見は許さぬ。」


「レェーネちゃん……ありがとう。」


フィルシュはその瞬間悟った。たった1人の友の弟を殺さないでおくのはウィリの為なのだと。


「では、帰るぞ!犬共!!」


そして、ウィリを泣かせない為、泣いたウィリをみない為、つまり、自分(レェーネ)の為でもあると。

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