第11話 後輩
栗色の髪をなびかせる胸の大きなスーツの女性はレェーネに問う。
「すみません、あなたは先輩とどう言う関係なんですか?」
「いや、おれ……私はただ道を聞かれてそのお礼にカフェに誘われただけです。」
顔を隠しながらそう答えるレェーネ。すると女性は納得したようにうんうんと頷く。
「そうですよね。先輩に彼女がいるなんて聞いた事ありませんし。わかりました。ありがとうございます。では……」
そうして女性はウィルが向かった方へと建物を伝って走っていった。
「ふぅ、バレなかったのは幸いだな。」
そうしてレェーネは建物の2階から飛び降り、隠れ家の宿を目指すのだった。
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ギィー、重い戸を開けて部屋へと戻る。
「レェーネちゃん……あの、さっきは、その…」
「よい、分かっている。」
「レェーネちゃん、ごめん。レェーネちゃんがウィルを誘惑なんてする訳ないって分かってたのに……」
「よい、気にするな。」
「それより王子、どうして女装なのですか?」
フィルシュは不思議そうにそう問う。
「ああ、これは、貰い物で変装をだな…」
「なるほど!さすがは王子!!」
フィルシュの尊敬の眼差しを受けながらレェーネはウィリの頬に手を当てる。
「レェーネちゃん?」
「ところでウィリ、どこまで向こうへ情報を流した?」
「場所は、ちょっとずらして報告してるから、大丈夫だとは思う。」
「そうか…少し着替える。」
そう言って2人がいるのにも関わらずにレェーネは服を脱ごうとした。
「あわわっ!?レェーネちゃん?!」
「お、王子?!」
「む?なんだ?」
「む、向こうの脱衣場で着替えてきてよ!もー!」
ウィリに促されて背中を押されて脱衣場へと向かうことになった。
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「先輩ー!」
「げ、」
王城にて戻ったウィルを待ち受けていたのは後輩である栗色のウェーブした髪の長い女性である。
「ナナ…」
「先輩!探しましたよ!どこに行ってたんですか?!」
「ボクは休日だから遊びに行ってただけだよ。てか、ストーキングやめてよね。」
そうして抱きつこうとするナナの頭を抑えて距離をとる。
「やだ先輩の意地悪ー!」
「はい、はい。」
「それより、王子が見つからないって血眼になって探してますよー。」
「へー、あっそ。」
興味のなさそうな返事とは裏腹に、その言葉には感情がこもっていた。
そう。王子の首を取るのは、このボクなんだ。それまでは死なないでもらわなきゃね。
そう思いながら、彼の顔には薄ら笑みが浮かんでいた。
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