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誰が為の勇者  作者: 空良明苓呼(旧めだか)
第6章 ヒト創りし人外都市
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第589話 マ・セラセラ


 次回更新、元旦なのマジかあ。



「何から話そうかな。あ、そうそう。私の不肖の弟子が、君たちに迷惑掛けたみたいで。本当にごめんね」


 マ・セラセラと名乗る魔法使いは、空を見上げながら指で頰をつつき、こくりと首を傾げた。


「分からないって顔してるね、シャンハーだよ。あの子、相変わらず頑固なんだよね」


 困った困ったと、大きなため息をつく。彼女が身体を動かす度に、純白の羽毛がはらはらと落ちる。


「ああごめん。最近、抜け毛が酷くてね」


 掴みどころの無い人物だ。目の前の人物への興味で、アリオの眠気は不思議と吹き飛んでいた。中へ入るよう促され、見覚えのあるカウンター席へと腰掛ける。


「えーとね。ああ、ありがとう」


 保温ポットから、すでに淹れられていた茶が注がれると、白い魔法使いは嬉しそうにそれを受け取った。


「アリオは食事にする?」


 カナハにそう尋ねられると同時に、ぐうと腹の虫が鳴いた。


「その方が良さそうね。ちょっと待ってて」


 食材を調理しに、奥の厨房へと人魚が消える。湯気を立てる3つのカップが残された。


「そうそう、それでね。全くナターシャときたら。あ、ナターシャというのは大陸の北に住む魔女で」


「えーと、"変質"? の魔女でしたっけ?」


 この調子では長くなりそうだ。


「そうそう。生死意外のことは、物質をなんでも変えることが出来る。彼女の魔法には、大きな代償が伴うけどね」


「代償……」


「メリアルの母親はね、メリアルを授かるために寿命を売ったんだ」


「病気だったんですか?」


「いいや。メリアルの父親、ルノー・ジュペゼリー伯爵というのは、救いようの無い男でね。年端の行かない子供としか、性行為しなかったんだよ」


 がちゃんとカップを取り落とし、中の黒い液体がソーサーへ少し溢れてしまった。嫌悪感を覚えながら、心配で隣に視線を移すが、エリアーデの表情は冷ややかだ。飲み物を溢したことではなく、伯爵に対してだろう。


「それで、奥方は子供に若返って、それでも妊娠することを望んだわけだ」


「どうしてそんなこと」


 全く理解ができない。


「さあね、私にも分からないよ。愛情って難しい。そんなもの理解してたら、とうの昔に魔法使いなんてやめてるよ。未だに持ってるの、シャンハーとアンテローゼぐらいじゃないか?」


 少し懐かしい名前だ。アンテローゼというのは、砂漠に暮らす"未来視"の魔女で、いつもは怪しい占い屋を営んでいる。


「とにかく、メリアルは魔女が創り出したとも言える存在だ。ナターシャったら、その子が魔法使いになる可能性を分かっていて、精霊の宿った盾を奥方に渡して、我々の目を欺いた。メリアルを魔法使いたちから隠したんだ」


「一体どうして?」


「危険だろう。なりたての魔法使いって、危ないんだよ。色々と分かってない。だから、魔法使いになった者は、年寄りが弟子に取ることになってるんだ」


 なるほど、と小さく頷いて見せる。


「それで、ジュペゼリー伯爵がノルンから出て来たので、弟子に取ると?」


「そう! そういうこと。君、話が早いなぁ。マックスって子に説明するのは、結構骨が折れたよ。豚っ鼻の彼女が、いちいち相槌打たないと、話が進まなくて」


「はあ、それでその、一体なぜ、武闘大会に?」


 そんなに変なことを言っただろうか。きょとんと自分を見つめた彼女は、ニヤリと笑った。


「獣人たちは引き続き、奴隷制を望んだ。そりゃ、そうでない人もいるけどね。長く続いた慣習って、そう簡単には変えられない。けど、今回の一件で放たれた奴隷たちは、一斉蜂起を辞さない覚悟でね」


 そのまま前へ向き直ると、細く細く目を細める。


「このままでは大勢、死人が出る」


 鉄板が焼ける音と共に、鼻をくすぐる香り。腹の虫がこれでもかと騒いでいた。


「この一件は、我々魔法使いの落ち度でもある。メリアルに、人々との関わり方をきちんと教えられなかった。だからね、私が特例で取り持つことにしたんだ。ちゃんとアンテローゼに許可も取ったし」


「それが武闘大会なんですか?」


「うん。砂漠の大会を参考にしてね。死人が出ないやつさ。優勝者が治政する。方法は問わない、以上。これを魔法使いが保証するのさ」


 空腹のせいか、少し身体が冷えてきた。エリアーデがずっと黙っている理由が分かる気がした。


「それって」


「もし非道な者が優勝したら、どうなるのかって? 知らないよ、私は魔法使いだからね」


 ぐらりと目眩がする。


「納得行かないって顔だ。そうなんだよ、奴隷や混じり者たちの一部が怒ってね。大会の妨害運動をしてる。さっきの爆発音とかがそう」


 湯気立つモーニングプレートを持って、カナハが戻ってきた。


「あらやだ、アリオ。溢しちゃったの? いま布巾出すわ。どうしたの、飲んで良いのよ?」


 気を紛らわせようと口元へカップを運び、ぬるい液体を無理やり喉へと流し込む。その瞬間、全てが頭から吹き飛んだ。


「にっっっっっっっが!!! 苦いよ、カナハさん! これなに!?」



【お知らせ】

※更新頻度は今後の仕事予定と相談中です。

・次回更新日: 2024/1/1(水)

・更新時刻: 20時台予定


※予定の変更がございましたら、Twitterアカウント(@medaka74388178)にてご報告させて頂きます。


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