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誰が為の勇者  作者: 空良明苓呼(旧めだか)
第6章 ヒト創りし人外都市
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第552話 敵の驕り


 油断している隙を突くのは基本〜。



 海底の洞窟でも大地の精霊(フォンクリエ)とは一度やり合っている。アリオがぎりぎりまで自分に注意を引き付け、ひらりと巨大な片手を(かわ)すと、賢者の少女は念話を続けてきた。


『アリオ、大地の精霊(フォンクリエ)の攻撃は斬っても大丈夫! あの子は臆病だから、核を地上に出すことはほぼ無い』


 そういうことなら遠慮無しだ。相手は大精霊の一体で、大地そのもの。いくら地面の力が弱い閉鎖都市でも、手加減出来るような相手ではない。


『足元は任せる!』


『言われなくとも、やるさ』


 旅を経るごとにコントロールの上がるつむじ風の精霊(フランシス)も頼もしい限りであった。空中が足場になることは、小回りの利く自分にとっては大きい。大振りにも程がある巨大な手を避けることは、そう難しいことではない。


――問題はつむじ風の精霊(フランシス)が操られないかだな。


 するりと地面へ繋がる手首へと降り立ち、横方向へ魔物ごと一刀両断する。ぐるんと相手の首が一回転。


「あー! やられちゃう!」


 すんでの所で、魔物を後ろから巨大な片手がつまみ上げ、宙へと道化師を逃がしていた。斬った方の片手はざらりと崩れ落ちている。敵本体はすぐ目の前だというのに。遠距離攻撃でもなんでも良い。核を破壊さえすれば。


 相手の急所が判明せず焦っていたが、もう見当は付いている。その時、念話、というよりエリアーデの思考整理のようなものがどっと頭に流れ込んできた。


『やっぱり、さっきまでと違って大地の精霊(フォンクリエ)しか操れてない。その気になれば全身出てくるはずなのに、片手しか出て来ない……操れる魔力量に限界が……』


 エリアーデの考えは分かった。


 自分の持つ魔力を聖剣に流し込めるだけ流し込むと、通りが真昼のような明るさになる。これは魔力視で見ても同じことだ。うっと顔を背ける魔物に一足飛びで舞い上がった。


「うわあ、眩しい!」


 その言葉を裏返すように、弱い闇の精霊たちが聖剣に(まと)わり付くが、気にはしない。


大地の精霊(フォンクリエ)以外を使ったな」


「何!?」


 ほんの一瞬、大地の精霊への制御が弱まったことをエリアーデは見逃さないだろう。喉に土が詰まった住人の何人かは、自力で土を吐き出すことに成功していた。


 彼女はトンと地面に大賢者の大杖(ソウル・スフィア)を突くと、良く通る声で高らかに告げる。


「ここに座す全ての精霊たちよ! かの魔物は(ことわり)を冒涜する者! かの者に相応しい報復を与えんことを!」


 不思議だ。この杖の能力は解明されていないが、紫の宝玉が淡い光を放つと、先ほど湧いた殺気にも似た、しかし、どちらかといえば縄張りを主張する動物のような敵意が、熱気を帯びて空間に溢れかえった。精霊の何体かが賢者の肩にすり寄るところを見ると、杖そのものの能力というより、エリアーデが精霊に好かれやすいことに起因しているのかもしれない。


 聖剣を防がんと、地面から巨大な手が自分を叩き落としに掛かるが、わっと湧いた小さな精霊たちの怒りの矛先は魔物へ向いていた。


「なんだよお前ら。僕やられちゃうじゃないか!」


 イライラした様子の魔物は、ぐるんと再び顔を回す。すると大地の精霊(フォンクリエ)の巨大な手が枝分かれし、襲い掛かる小精霊たちに掴み掛かる。


大地の精霊(フォンクリエ)! 目を覚まして!!! 精霊たちを潰してはいけません!!!」


 少女の叫び声に、大地から伸びる腕たちがぴくりと一斉に停止する。完全に逆上した様子で、魔物は命令すら忘れていた。


「なんだなんだ、なんなんだお前ら!」


「自分では手を下さない、卑怯者らしいやられ方だな」


 そう言い捨てる自分に顔を歪める笑い面。そう、この魔物は(おご)っている。絶対安全圏に居ると思って、()()()()()()()()()()()



【お知らせ】

※更新頻度は今後の仕事予定と相談中です。

・次回更新日: 2023/4/17(水)予定

・更新時刻: 20時台予定


※予定の変更がございましたら、Twitterアカウント(@medaka74388178)にてご報告させて頂きます。


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