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誰が為の勇者  作者: 空良明苓呼(旧めだか)
第2章 果ての砂漠の金色幻想都市
53/601

第53話 死なない疫病の謎


 明日は密林で頼んだポテチが大量に届くはずです。


※2021/10/28より改行修正入れております。内容には変更ございません。



 アリオは城の訓練場で練習の列に並びながら、先ほどのやり取りを思い出していた。




・~・~・~・~・~・~・~




「駆け落ちって言うか、出入りしてる行商人に色男が居て、押し掛けてついて行っちゃったのよね…」


 サラマーラはどうしようもないという顔で、明後日の方向を遠い目で見ている。ソフィアは存外楽しそうに言った。


「そう?ロマンチックじゃなーい?」


「まあ、サラマーロは昔から面食いだったしね」


 サイードも諦めた様子でため息をつき、言葉を続けた。


「でもマーロは凄いよ。『俺について来たいなら、聖遺物の1つでも盗って来い』って言われて、本当に盗ってきちゃうんだもん。俺、ちょっと感動しちゃった」


 ハンスがそれを聞いて、思い出した様子で手を打った。


「そう言えば半年くらい前にそんな事件あったね! あれがサラマーラの弟さんだったのか〜…ていうか、彼が男の人に、その…ぞっこんだったり、ご両親は大丈夫だったのかい?」


 その問い掛けに、特に何も思うところはないらしく、サラマーラは淡々と答える。


「ああー。なんかうちの家族、その辺割とどうでも良くてさ。宝物殿に侵入したことは、めちゃくちゃ怒ってたけど、みんな小さい頃からマーロは女だと思ってたし。さすがに出て行った日は、父さんが『見ず知らずのよく分からない男について行くなんて!』って怒鳴ってたけどねー」


「そういう感じかー。でも確かに心配するよね」


 ハンスは父親の苦労を想像しつつ相槌を打った。一方のエリアーデは、事件の内容にはあまり興味がない様子で、口に手を当てて俯く。


「そうなると、外でサラマーロさんを探さなくてはいけませんね……ん?」


 彼女は皿を片付け始めたソフィアが腕まくりしたのを見て、不思議そうに問い掛けた。


「…ソフィアさんは、例の湿疹が出ていないのですね」


 ソフィアは自分の真っ白な腕を眺めながら、やはり不思議そうに答える。


「そうそう。うちの家族はいつも出ないの。姉夫婦の旦那の方はかかるみたいだけどね。死んだおじいちゃんと、おばあちゃんも大丈夫だったわ…あ、父方のおばあちゃんは出てたかも」


 そのやり取りを聞いて、ハンスが自分の腕を見つめた。


「僕は大人になってから、全然出なくなったなあ」


「湿疹が出る人間と、出ない人間がいる…? よく考えると、私とアリオ、ゴージャ王も感染していなかったような……」


 エリアーデの呟きに、サイードが笑う。


「外の世界の人は罹らないみたいだからね。リーシャさんの両親は外から来たわけだし、俺はちゃんと湿疹が出てるよ」


「では、グアパさんとハンスさんは…?」


 全員が黙り込む。


 サイードが「俺、手伝うよ」と言って、食べ終わった皿を重ねてソフィアへ持って行く。彼は洗い物をしながら、難しい表情で考え込むエリアーデへ声を掛けた。


「俺たちのこと心配してくれてありがとう。でも、実を言うとそんなに心配してないんだ。昔から7〜8の月に入ると、この疫病は消えてしまうからね。君たち、良いタイミングだったよ」


 ハンスは「そうそう」と言いながら壁の時計に目をやる。


「わあ! もうこんな時間じゃないか! 今日の網、洗うの僕なんだよ、もう行かなきゃ! ソフィア、洗い物任せちゃってごめんね。ご飯美味しかったよ、ありがとう!」


 彼は慌ただしく店を出て行く。片付けが終わると、それぞれ仕事へ戻り始めた。


 エリアーデは何か考えながら表通りまで出ると「私は『科学屋』へ行って来ます」と言って、アリオたちと別れた。


 結局何も言って貰えなかったアリオは、恨めしそうにその後ろ姿を見つめた。




・~・~・~・~・~・~・~




「………あの頭でっかち」


「誰が頭でっかちだって?」


 木剣で肩を叩かれて、アリオは我に帰った。目の前に居るダミアンが、にっこりと笑いかける。


「どうせエリーのことだろう? アリオ、城の周り10周走ってこい!」


 アリオが「げっ…」と呟く。それを聞いて、後ろに並んでいた少年が「こいつ女のこと考えてたのかよ?」と思わず吹き出した。その様子を目敏(めざと)くみていたダミアンが高らかに叫ぶ。


「マックスも一緒に10周!」


 マックスと呼ばれた少年は、思わぬとばっちりに、あからさまに嫌そうな顔をした。


「ええっ!? なんで俺まで…」


「余計なこと言ってる暇があれば、集中しろ、集中」


 ダミアンがそう言う前にアリオが走り出したので、マックスは慌てて追いかける。


「待てよ! お前のせいで、俺も走らされる羽目になったんだぞ」


「はあ? お前が勝手に喋ったんだろ?」


 アリオは、後ろで文句を垂れるマックスの方へ目をやった。マックスは今年の4の月に入った新兵の中では1番若く、アリオより1つ年上の13歳だった。


 小太りで、お世辞にも今まで運動をして来たようには見えない。まだ城の裏手に入っただけなのに、もう息を切らしている。


「お前大丈夫かよ?」


 アリオは走るスピードを落として、マックスへ話し掛けた。


「は…話し掛けるな…先……行ってろ…」


 息も絶え絶えだが、そう言われると、それもそうだと思い、彼に構わず走り始めた。


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